主を失った狼、透き通る世界に行き着く   作:けんどーさん

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こんにちはけんどーです

最近2日に一回投稿になってる…バイトも始まったから忙しい…

以下に感謝を

yomida様!評価9ありがとうございます!

白灰利独様!誤字報告ありがとうございます!

それではどうぞ!


帰り道、そして夢

コツ、コツ、スタ、スタと2つの足音が響く

 

片方は革靴でも履いているのだろうか、コツコツ小気味良い音が鳴る。

 

もう片方は音をなるべく殺しており、なんとかスタスタと草履が擦れるような音が聞こえる。

 

片方はただの一般人のよう音を立ててに歩き、もう片方はまるで己は影だと言わんばかりに音を消して歩く

 

人通りが少なく、時折車が通る道に2人の大人が歩みを進めていた

 

“あれ?狼ってワカモに斬られてなかった?”「……あれぐらい放っておいても治る傷だ…大事ない」

 

“へぇ〜狼って傷治るの早いね!”「……ああ」

 

葦名でも鬼仏の近くで休んでいたらどんなに酷い傷でも気づけば治っていた

 

…竜胤の力故か、それとも仏様が助けてくれていたのか、今となっては知る由もない

 

“うどん美味しかったね!”「……ああ、あのてんぷらとやら、とても美味かった…」

 

“いや〜肉うどんも美味しかったよ…でも途中で失敗した、と思ったよ”

 

「……何故失敗したと?その肉うどんとやらもうまそうだったが…」

 

狼が質問する

 

“あいや狼があの機械に押し潰さウエップ”「…飲め、楽になる」

 

先生が口を押さえ始め、それを見た狼がスッとまだら紫の曲がり瓢箪を渡す*1

 

“あ、ありがとう…”

 

先生がグイと瓢箪を飲む

 

“……これ…なんだろう、スッキリしたけど…なんの薬?電車でも飲んでたし酔い止め的な?”

 

「……怖気消しだ」”怖気消し?”

 

「…飲めばまるで身体中を這巡るような恐怖や得体の知れぬ者への怯えを消してくれるものだ」”ちょいまちそれ大丈夫??”

 

「…俺は何度も世話になったが…」”…よほどでもない限り飲むのはやめておこう…”

 

そう言って2人の大人はまた歩を進めた

 

〜シャーレオフィス〜

 

ガチャ、とドアが開き2人の大人がシャーレへと入る

 

“ただいま〜”「……誰もおらぬな」

 

“とりあえずあとはシャワー済ませて寝”「るにはまだ早いですよ先生」”え?”

 

どこからともなく声が聞こえ、聞こえた方向を見ると…

 

「……随分とお楽しみだったようで」”リリリリリンちゃん!?目が、目がァァア!”

 

そこにいたのは死にそうな目をして仕事を捌いている七神リンがいた

 

「……誰もいないと思いきや…お主…」「…少し意識が飛んでいたみたいです。先生が帰ってきた時の音で目が覚めました」

 

「……お主…早く寝た方が良い…」「……それができれば今すぐベットダイブ決めてますよ」

 

…心無しかリンのヘイローが明滅している。眠気に抗っているのか、それとも死にかけているのか

 

「…先生殿…」“…………”「………先生殿?」

 

ふと狼が先生へ声をかけるが、反応が無い

 

「…先生ど………これは」

 

そこにあったのは天井に届きそうな量の書類であった

 

「……一体…何が…」”おおかみ”

 

「…!先生殿…目を覚ましたか…」”……おおかみ”

 

先生がぎゅ、と狼の手を握る

 

“…助けてくれ…お願いだ…”「…許せ…俺にその「しょるい」とやらの仕事はできぬ」

 

狼は先生の拘束から逃れる

 

“待ってくれ!お願いだ!頼む!”「ふふふ…さあ先生…これを…」”ぎゃああああああ!”

 

「……」

 

狼は無言で手を合わせ、部屋へと戻った

 

〜狼の自室〜

 

「……」

 

シャワーを済ませて寝巻きへ着替えた狼は義手が壊れていないか確認し、不死斬りをベットの下へ隠し楔丸を枕元へ置いて眠りに…

 

”あはははは!”「あはは、ふふふ!」「”お仕事楽しい!”」

 

…眠りに落ちる直前、狼は頭の中でせめて2人の仕事が終わるようにと願った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……?」

 

パチ、と目を覚ます

 

その時、狼の目に映ったのは…

 

「……荒れ寺…か?」

 

そこかしこに木で掘られた仏が山と置かれ、中央には作業場があるが、掘りかけの仏が置いてあるだけだった

 

かつての仏師はそこで仏を掘り、狼の義手忍具を仕込んだり改造したりしていた

 

今はもういない

 

 

はて、なぜ目が覚めたところがシャーレの自室ではなく荒れ寺なのか、そう考えていると…

 

 

 

 

 

 

 

 

ギシ、と木を踏む音が聞こえた

 

「!?」

 

癖で左手を楔丸の鞘に添えようとする。しかし…

 

「…楔丸が…何!?」

 

そこでまたハッと気づく

 

「……なぜ、左腕がある…」

 

そこにはかつて切り落とされたはずの左腕がしっかりとくっついていた

 

なんだ、何が起こっている、なぜ荒れ寺にいる?なぜ左腕がある?

 

その時、ギシと音を立てた何者かが作業場へ座り込んだ

 

そしてその誰かを見て、狼は目を見開く

 

「……………俺…だと」

 

そこには、一心不乱で仏を掘る自分自身がいた

*1
トラウマみたいなもんには怖気消しかな?と思い…




まるで、己のことは見えてい無いかのように、仏を掘っていた
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