主を失った狼、透き通る世界に行き着く   作:けんどーさん

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どうもけんどーです

曇らせは後半にやると言ったな。あれは嘘だ

うち、曇らせタグあるくせに全然曇らせやってない…と思うんですよ

この話を書いた理由がソレです(でも1人しか曇らせてない…)

ホシノ曇らせは…次の幕間予定です。お楽しみに

以下に感謝を
銃槍のk様!評価9ありがとうございます!

それではどうぞ!


回生、しかし…

〜狼視点〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

DEATH

 

 

おお……かみ?

 

 

 

衝撃を感じた瞬間に死んだ

 

押しつぶされて死ぬのは初めての経験だった

 

葦名ではせいぜい地面に叩きつけられたりなどがほとんどだったからな…と狼は何も見えない中そんなことを考えていた

 

狼はいつも通りに回生を使い、蘇る

 

そしていつも通りに桜色の光と桜花びらが散る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はずだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜先生視点〜

 

目の前で狼が潰されて、最初に考えたのは狼の心配より生徒達の心配だった

 

私自身もその事に驚いた。目の前で人が死んでいると言うのに

 

そして目の前のロボットが狼であった肉片と血を撒き散らし、動き始めていた

 

“みんな!物陰に隠れて!”

 

「ミドリ!落ち着いて!ミドリ!?」「い、いま…いま…」

 

私がそう叫んだ時、モモイはミドリを連れてビルの影へ隠れようとしていたが、ミドリは機械の脚にこびりついた真っ赤な血を見て動けなくなっている

 

顔は真っ青で口を押さえている。きっと嘔吐しかけているのだろう

 

アリスは、何が起きたか理解できないのか、まだ固まっている

 

「み、ミドリちゃん!行くよ!」「ああもう、ミドリ!ちょっと痛いよ!我慢してね!」

 

ユズとモモイがなんとかミドリを引きずっていく

 

しかし、ロボットは逃すまいとガトリングを展開し、砲塔が回転を始める

 

「ちょ、まずい!」「ミ、ミドリ!動いて!」「…うそ…うそ…」

 

“くそっ!アロナ!バッテリーは!”「残り25%です!ガトリングなら合計3分の間銃弾は防げますが…危険です!」

 

“それだけあるんなら十分だ!モモイ!”

 

私はモモイ達に向けて走りだした

 

「え!先生!?危ないよ!」”ミドリは任せて、二人は早く遮蔽に!”

 

私はミドリを拾い、走り出す

 

ババババババババ!

 

ガトリングが火を吹き、私を殺そうと銃弾が飛ぶ

 

だけど、私の事はアロナが守ってくれる。生徒達はアレぐらい石を投げられたぐらいの痛みなんだろうけど

 

……私は脆弱だな

 

“うおおお!滑り込めぇ!”「…え?ええ!?」

 

銃弾が逸れて近くを飛んでいく中、思いっきりジャンプして遮蔽へ転がりこむ

 

もちろんミドリを抱き抱え怪我させないように庇う

 

“危なかった…ミドリ、大丈夫?”「ひゃ、ひゃい…(せせせ、先生に抱きしめられてた!?)」

 

ミドリを放し、ちらりと機械を見る

 

“あれは…武装はガトリングだけか?まさしく戦闘用兵器って見た目…え?”

 

そこで2()()()違和感に気づいた

 

一つはそのロボットには()()()()があった事。形はゲームで出て来る照準に似ている

 

もう一つは…

 

“……狼…なんで…回生しないんだ?”

 

ロボットの脚に未だこびりついている肉片があったことだった

 

 

 

 

 

 

 

 

〜狼視点〜

 

 

 

違和感。なぜか回生ができない

 

一度蘇った後の力が枯渇している時とは違う、竜胤の回生の力は問題なく蘇れるほど満ち溢れていたはずだ

 

何も見えず、何も聞こえぬなか、狼はついに理解した

 

(…俺は…死ぬ時は叩きつけられるか爆破されるか…切り刻まれたことぐらいだ…恐らく俺の体は…押し潰されたはずだ…)

 

そう、竜胤の力は確かに不死であり、死んでもいつもすぐ蘇れた

 

しかし、狼が今まで回生を使った時は確かに体は原型を留めていた

 

今は違う。残っているところがほとんど無いほど潰されていた

 

竜胤は死人を蘇らせる、蟲憑きや赤目などの紛い物とは別の領域の力である

 

それでも、潰された状態からの復活は恐らく時間がかかるのだろう

 

不意に思い出す。シャドウファングと不死斬りは無事だろうか

 

楔丸は手に持っていて忍び義手も恐らく潰されてはいないはずだ

 

そう思った時、桜色の光と桜花びらが舞い散った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無事に回生できた事に安堵し、立ち上がったあと楔丸を拾う

 

幸い、義手は繋がっていて背中の不死斬りも無事だった

 

シャドウファングは持ち手とレバーが壊れて使い物にならなさそうだ

 

「………これは」

 

義手忍具の一つ、仕込み短銃が壊れていた

 

散弾式は壊れていなかったが、もう片方の仕込み短銃は修理できないほど壊れていた

 

「……捨てる手間が省けたな」

 

狼が仕込み短銃を投げ捨てた

 

「……狼ですか?」「…む?」

 

声が聞こえた方を見るとそこには…

 

「……アリス殿か…」「…狼、自己蘇生とは、すごいです!」

 

アリスがいた。そして手には()()()()があった

 

「…さっき、顔に何かがかかって触ってみたら、赤くてドロドロしたナニカがかかっていたのですが、狼が生き返ったのと()()()花びらに変わりました!さっきの赤いドロドロはなんでしょうか?」

 

「……それを知る必要は…ないだろう」

 

知らぬが仏とはよく言ったものよ…

 

 

〜先生視点〜

 

“あれは…よし!みんな!撤退するぞ!”

 

狼が蘇れたのだろうか、機械の脚の肉片と血が()()()()()になって消えた

 

狼は蘇ると桜花びらとピンクの光が溢れると聞いている

 

“ユズ!モモイ!ミドリ!3人とも出口まで走って!”「せ、先生は来ないのですか!?」

 

“狼とアリスにも撤退を伝えないと!あの機械はやばい!”

 

「先生、気をつけて!」「わ、わかりました!」「先生!死なないでね!」

 

3人が走るが、機械が逃がすまいとガトリングで狙う

 

“鉄屑!こっちを見ろ!”

 

私が叫ぶと、ガトリングの狙いの先は私になる

 

それを確認した私は斜線を切るために左にある横転している車の方へと走る

 

 

ババババババババ!

 

自分の後方から弾丸の雨が徐々に近づいているのを感じる

 

…最初から進行方向を狙わず後ろから徐々に追い詰めるようにガトリングを撃つとは趣味が悪いな…

 

“残念!それなりの身体能力はあるんだよっ!”

 

弾幕が当たる直前、思いっきり前へ飛び着地しながら前の方に前転し、勢いを殺しながら車の後ろへ滑り込む

 

“ふぅ…囮は専門外なんだけどな”

 

そしていざと言う時のために使おうと持っていたスモークグレネードのピンを抜く

 

“生徒を傷つけないこれなら、私が持っても許される…よね?”

 

そう言って私はスモークを適当に投げる

 

プシュゥゥゥと赤色の煙が溢れる

 

“これだけ目立てば…うわぁ!”

 

ガシャン!車が吹き飛ばされる

 

“……なるほど、ワイヤーねぇ…狼の鉤縄みたいなもんか”

 

ガトリングの銃身が見えるほど近くに機械がいる

 

アロナがいるとしても普通なら死を覚悟する場面だろう

 

くるくるとコマのように銃身が回る

 

“ははは…ゲームオーバー…とでも言いたいのか?”

 

さっきよりも多く,そして早く銃身が回る

 

“けれど…けれどね”

 

目の前のこいつ(機械)は、1つある事を忘れている

 

“一体のお前と違って、私には仲間がいるのだよ…忘れたのかい?”

 

その時、私の耳は何かを捉えた

 

「光よ!」

 

 

光がズガァァン!と大きな音を立て、ガトリングを破壊する

 

機械が撃たれた方を見るが、そこには誰もいない

 

機械が混乱したかのようにガトリングを破壊した敵を探す

 

“おや、君はもう一つ忘れているね…”

 

ヒュパリ

 

機械がこっちを見る

 

“忍びは一回負けても、必ず復讐に来る物だよ”

 

そう言い終わると同時に、何かが機械の頭部みたいなとこの真ん中当たりにスタ、と着地する

 

「……影落とし(不意打ち)…御返しいたす」

 

そう言って()は真っ赤な刀身の刀を機械に突き刺した

 

 

〜狼視点〜

 

狼は考える。己は一度、平田屋敷で義父の不意打ちを受け、死んだ

 

しかし天守閣で再度義父と会い、掟を破り戦った

 

その時、トドメを刺すのに、義父から教わった技を使った

 

それが影落としであり、影落としは忍びを殺す事でもある*1

 

なにより見せたかったのかもしれない

 

成長した己自身を

 

「影落とし…御返しいたす」「見事…なり…」

 

この言葉は、きっとその心の現れでもあったのだろう

 

不死斬りを深く刺し、抜きながら地面へ着地し納刀

 

機械が悶えているうちに先生を抱えて鉤縄をヒュパリと飛ばす

 

“うわぁっ!?鉤縄ってこんな早いの…”「……普通はこれよりも早いぞ」

 

その時、機械ガトリングを撃とうと狙う…が、ガトリングが動かない

 

刀を刺された時に配線が切れ、撃てなくなった

 

“おお…刺した時にいいところ入ったのかな、撃ってこない”「…好都合ではないか…アリス殿は撃った後出口へ向かった…同じ場所へ行くぞ」

 

“ああ、お願いするよ。狼”「…承知」

 

狼はまたヒュパリと鉤縄を飛ばした

*1
忍び=影 落とし=殺しと訳し考えると、平田屋敷の不意打ちをお返しします。と言ってるとも捉えれる。少なくとも筆者はそう考えた




影落とし(未修得)

相手の突きに対して見切った時に使える大忍びである梟の秘奥義

敵の武器を踏みつけながら腕を斬りつけ武器を踏み台に敵の背後へ飛び、そして敵の足を斬りつけ心臓を刀で貫く

突きに対する究極の反撃であり、義父はこれを使い熟し、義父はこれを狼に叩き込んだ

それでも、義父と違いトドメにしか使えなかった

しかしなぜこれを狼に教えたか、昔は分からなかった

今は少しだけ、わかった気がした
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