イスラエル軍、ヨルダン川西岸で10歳パレスチナ少年を射殺

クリーム色のパーカーを着た少年がカメラの方を向いている

画像提供, WAFA

イスラエル占領下のパレスチナ・ヨルダン川西岸で16日、学校でサッカーをしていたパレスチナ人の少年(10)が、イスラエル兵に射殺された。イスラエル軍は、兵士たちが「石を投げつける」地元住民と「対峙(たいじ)」する中で発砲したと説明している。

射殺されたのは、10歳のムハンマド・アル・ハラクさん。

ヨルダン川西岸ヘブロン南部にあるアル・リヒヤ村の複数住民によると、ムハンマドさんは当時、友人たちと地元の校庭でサッカーをしていた。イスラエル軍の車両がやって来たのに気がつき、ムハンマドさんたちは走り出したという。

「いつものことです。彼らは怖がって、村の方へ戻っていったんです」と、この様子を目撃した別の少年の保護者はBBCに話した。「(イスラエル軍に対する)脅威や挑発はありませんでした。何もありませんでした」。

この保護者によると、兵士の1人が車の後部から「無差別に発砲し始めた」。ムハンマドさんは骨盤を撃たれ、車で近くの病院に搬送されたが、死亡が確認されたという。

ソーシャルメディアで共有された動画では、日没後にムハンマドさんの遺体を乗せて村に戻ってきた救急車を、大勢が取り囲んでいるのがわかる。担架に横たわる息子の顔に両親がキスをする様子も確認できる。

ムハンマドさんの遺体はその後、埋葬のために運び出された。

パレスチナのマアン通信が公開した動画では、ムハンマドさんの母親が、息子はあの日ずっと学校にいたことや、出かける前に新しいバックパックを自慢げに見せていたことなどを語っている。

「息子は鳥が大好きでした。心臓の専門医になりたいと、いつも言っていました」と、母親は涙ながらに語り、学校の成績は常に「優秀」だったと付け加えた。

イスラエル兵に投石した人物に発砲と

イスラエル軍は、「IDF(イスラエル国防軍)の兵士は投石の容疑者に対して発砲した。命中したことが確認された。IDF側に負傷者はいない。現在この事案について調査している」と説明した。

イスラエルの公共放送KANは、IDFの大隊指揮官による予備調査では、兵士の行動に問題があったことが指摘されていると報じている。報道によると、指揮官は「発砲は交戦規定から逸脱しており、武器の不適切な使用があった。特に群衆制御手段において不適切な点があった」と指摘している。

「同部隊で交戦規定に従わない発砲が起きたのは、今回で2度目だ」と、指揮官は述べたとされる。

BBCはKANの報道内容についてIDFに問い合わせたが、回答を断られた。

こうした中、イスラエル軍は16日、ヨルダン川西岸北部ジェニン近郊のカバティヤで、男性1人を殺害したと発表した。兵士に爆発物を投げつけたためだとしている。負傷した兵士はいないという。

パレスチナの通信社WAFAは、殺害された男性はマフディ・クメイルさん(20)と特定。イスラエル軍による襲撃で射殺されたと報じた。

国連の人道問題調整事務所(OCHA)のデータによると、今年に入ってからヨルダン川西岸では約200人のパレスチナ人が殺害されており、うち約40人は子どもだった。