比類なき才能と挑戦的な姿勢を持ち、日本の音楽業界で圧倒的な存在感を誇る歌手・米津玄師。シンガー・ソングライターとして自身の世界観を歌に落とし込んできた米津のインスピレーションの源には、音楽だけではなく、実は多くの映画が存在する。そんな米津の作品を理解する際に欠かせない、米津が影響を公言する映画を5つご紹介する。(文・ミシマンディアス)[5/5ページ]
菅田将暉との出会いの瞬間
『ディストラクション・ベイビーズ』(2016)
監督:真利子哲也
脚本:真利子哲也、喜安浩平
キャスト:柳楽優弥、菅田将暉、小松菜奈
【作品内容】
愛媛の港町で、理由もなく喧嘩を繰り返す青年・泰良(柳楽優弥)。暴力に取り憑かれたように街をさまよう彼は、やがて都会へと流れ着く。
刺激を求めて集まる若者たちとの関わりの中で、泰良の破壊衝動はさらに加速していく。
【注目ポイント】
真利子哲也監督による2016年公開の映画『ディストラクション・ベイビーズ』は、柳楽優弥が主演の作品である。米津玄師はこの映画をとても高く評価し、X(旧Twitter)上でも映画に対する思いを語っている。
「映画『ディストラクション・ベイビーズ』をみてきた。すばらしかった。二時間弱のうちにあんなに人を殴ってる映画をみたのは初めて。ぼくが10代のころに出会いたかった。」(2016年2月24日米津本人によるX投稿)
米津は、自身がまだ10代の頃、つまりミュージシャンとしてメジャーデビューする前にこの作品に出会いたかったと語る。もしこの作品に10代の米津玄師が出会っていたら、いまの米津玄師とはまた別の道を歩んでいたのかもしれない。
また、米津はこの作品を見た際に、作品自体はさることながら、出演者の1人である菅田将暉にも強い興味を示していたと後に語っている。
「彼は自分にとってすごく気になる存在だったんです。初めて観たのは『そこのみにて光輝く』で、『ディストラクション・ベイビーズ』(中略)人生のタイムラインにたびたび顔を出す、無視できない存在で。どこかで『同じような何かを持ってるんじゃないか』って、勝手に思っていて。」(2017年10月27日、音楽ナタリー「米津玄師 オリジナルってなんだ?“海賊盤”に詰め込んだ美と本質」)
ご存知の通り、この菅田への興味は映画公開翌年の2017年に「灰色と青(+菅田将暉)」というデュエットの形で結実した。本作は米津と菅田を結びつけ、音楽界にとって欠かせない一作を生み出すのを手伝ったと言っても差し支えないだろう。
【著者プロフィール:ミシマンディアス】
大学生。文学部で舞台や映画について勉強中。早稲田大学のお笑いサークル「早稲田大学お笑い工房LUDO」所属。好きな映画は『レゴバットマン ザ・ムービー』、『交渉人 真下正義』、『マペッツ2/ワールドツアー』など。Xアカウント:@Mishiman_Diaz。
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