「古墳型」集合墓が人気 継承者いらず 背景に「イエ意識」の変化?
古墳の形をした集合墓が各地につくられ、人気が高まっているという。樹木葬や海洋散骨など、弔いのかたちは近年多様化しているが、なぜ、いま古墳なのか。背景にある、墓への考え方の変化とは――。
記者が向かったのは、福岡県新宮町。玄界灘を望む高台の芝生に、全長53メートルの真新しい前方後円墳が横たわっていた。周囲をはにわが取り囲む。宮崎県や群馬県の職人が作ったという。
「新宮霊園」が2022年に造った永代供養の合葬墓。前方後円墳の側面と円墳部分の上部に計3100人分を納骨できる。1人分の区画は30センチ四方で、費用は永久管理料込みで35万7千円。区画の番号で識別が可能で、墳の傍らにある石の銘板に名前が刻まれる。
新宮霊園によると、墓の継承者がいない人や、子や孫に墓守の負担をかけたくない人が多く申し込む。自分が眠る場所を自ら決めたいという40~50代からの申し込みも少なくない。
継承を前提としない墓、求める声
本田宏之・経営室長(49)によると、少子化などを背景に、10年ほど前から子孫への継承を前提としない墓を求める声が増えた。6年前に「みなが眠れる場所を」と議論を開始。古墳は全国各地にあって多くの人に「墓」としてなじみがあること、有名な大山古墳(伝仁徳天皇陵)が前方後円墳であることなどを理由に、古墳型の合葬墓づくりに至ったという。
文化庁によると、現存する古墳は全国に14万基近く。福岡県八女市の八女古墳群などを視察し、構想を温めた。22年4月に販売を始めると、1年で予想の3倍となる約900人分が売れ、現在約2100人分が契約済み。いま、隣接地に2基目を造成中だ。
「何百年後も手を合わせてくれそう」
福岡県内に住む男性(64)は9月末、妻(58)とともに訪れていた。自身の両親のお墓に、と前日に仮予約したばかり。「見晴らしも良く、自然と一体感がある。隣り合って空いている区画がちょうどあり、いずれ両親を並んで納められると考えた」
広島県で生まれ育った。7年前に父が亡くなると、実家近くの納骨堂に納めた。90歳になる母は7月、広島を離れ、福岡県内の高齢者施設で暮らす。「広島には頻繁に帰れない。受け継ぐ人もおらず、福岡であっても墓を建てたくなかった」
古墳型の集合墓には、骨つぼでも、綿製の納骨袋でも納骨できる。納骨室は樹脂製だが下部は土で、年月をかけて土にかえる。「人間も自然の一部。土にかえっていくのが自然だし、私もそうありたい」と男性は話す。
古墳という形は「大きな決め手ではない」と言うが、「古墳好きな人はたまらないでしょうね。この形であれば、何百年後でも日本列島に住む人は『墓』と認識してくれ、手を合わせてくれそう」。
八角墳も 「神道の源流と重なってくる」
東京都あきる野市の稲足(いなたり)神社霊園にも今年、古墳型の合葬墓ができた。埼玉県の稲荷山古墳を参考にして形を決め、島根県出雲地方で作った勾玉(まがたま)や三重県伊勢市の鏡も納める。隣接して、平面が八角形の「八角墳」も造った。
周囲に巡らせた高さ85センチの石棺に納骨する。1人15万円で、約1万人の納骨が可能。すでに10人近くが眠る。下は土になっており、麻袋で納骨すれば土にかえる。霊園内で祭祀(さいし)を行う場合は神式だが、埋葬される人の宗教は問わない。
小川修太禰宜(ねぎ)(45)によると、子孫の継承を前提としない墓の要望が増え、かなり以前から古墳形の集合墓を造る構想があったという。「6世紀に日本に仏教が伝来する前からの墓の形。古墳で行われた祭祀を想像すると、神道の源流と重なってくると思う」
古墳ブームも影響?
日本葬送文化学会副会長の福田充さんによると、1990年代に入った頃から「イエ単位」の墓や葬送文化を考え直す動きが市民に広がったという。古墳型の合葬墓について福田さんは「多様化する葬送文化が行き着いた一つの形。2015年前後からの古墳ブームの影響もあり、庶民にも手が届く前方後円墳が人気を集めているのでは」と話す。
環境問題への関心の高まりなどから、「自然にかえる」埋葬を求める人も近年増えているとし、「私たちが墓と聞いてイメージする家族墓は戦後に主流化した形に過ぎず、墓や葬送のあり方は時代によって様々。今後も多様化が進むだろう」と話す。
終活関連会社の鎌倉新書(東京)が25年1月に行った調査によると、同社のサイトを通じて墓の購入があった1475件のうち48・5%が樹木葬を選び、重視する点(複数回答)では36・7%が「継承者不要」を選んでいる。
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