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J/53  作者: 池金啓太
十七話「追い追われる先に」
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移動と反応

実月から件の店の住所を聞き、とりあえず静希は移動を開始することにした

包囲網が作られるよりも早く目的地に着かなくては面倒になりかねない


フィアのおかげで事故現場からはかなり遠ざかっているものの、十キロ範囲を包囲網の中に入れられてしまってはその距離もないに等しい


『で、どうやってその店まで行くの?電車とか?』


『電車を使いたいところだけど、やめておこう、ばれるかもしれないからな、今回は歩きだ』


包囲網を作られているとしたら先程の事故現場から周囲数キロ、そして殺人事件の起こった場所周囲数キロだろう


電車、バス、タクシーなど移動する手段はいくつもあるが、とりあえず何も使わずに移動することにする


『時間の無駄ではないのか?歩きより何倍も早く到着できる気がするが』


『何の警戒もされてないならそれでもいいんだけどな、今回は派手にやらかしてるし、能力者を警戒して歩く』


理由としてまず間違いなく公共の移動機関には能力者が配置されるからである、今静希は変装することで外見を変えているが、もし視覚的ではない何かでその対象の本質を見ることのできる能力者が配置されていた場合、ばれてしまう可能性がある


配置するとしたらまず間違いなく公共機関、他の一般道などにはただの警官などを配置するはずだ、索敵の可能な能力者は限られている故に、最も怪しい場所に配置する、以前イギリスに行った時も地下鉄などにしか索敵のできる能力者は配置されていなかった


能力者の総数を考えると、索敵系の能力者を配置できる場所にも限りがあるのだ、そういう意味では絶対数が少ないというのは相手の動きがわかりやすくて助かる


これで捜査をしている人間の中に静希の性格を理解している人間がいたなら常識の裏をかいて一般道などに能力者を配置することだろう


事故が起きてから一時間ほどしかたっていないことを考えればまだ配置されていないかもしれないが、万が一のことを考えると時間をかけてでも安全策を取るべきだと判断したのだ


『見つかればそれだけ行動がしにくくなる、万が一の不安要素も排除する・・・マスターの判断は正しいものであると思います』


『少ししたらオルビアにも出てもらって一人じゃなくてカップルみたいに見せかけるからな、頼むぞ』


『かしこまりました、明利様と雪奈様に少し申し訳なく思いますが・・・致し方ありませんね』


オルビアの言葉に少し苦笑してしまう、普通の道を歩いている人間を見た時に、怪しいと思えるのは複数より一人でいる人間である


複数でいた場合、それだけで怪しさというものは幾分か削がれる、不思議なもので一定の場所に留まっていたり、うろついてさえいなければ警戒されないというのがほとんどである


今までのように暗闇や障害物に紛れるのであれば単独行動の方が良いことが多いが、今回は日常的な街に溶け込まなくてはならない、そうなるとせめてもう一人連れが欲しいのだ


オルビアの剣を入れておけるだけのケースを購入したら、オルビアにも変装を施して一緒に店まで移動することになる、そうすればただのカップルに見えるだろう


静希はこれからの予定を頭の中で構築しながら先程教えてもらった住所を反芻する


目指すは水ノ香リ、情報を手に入れるためにもまずはその店に行く必要がある


『歩きかぁ・・・さっさと飛んでいければいいのにね』


『深夜になったらその移動法もありだな、人目につかなければそれでいいわけだし』


フィアの力を借りての移動は見た目が見た目なだけにかなり人目につく


先程は可能な限り建物を経由して移動したからほとんど人の目にはついていないと思うが、これから都心に移るにつれて人の目は嫌でも多くなる、そうなるとどんなに移動ルートを熟考しても必ず人の目に晒されてしまうだろう

だが深夜であれば、ほとんどの人は眠りにつき、動いているのはごく一部のみ、しかも暗闇に紛れることでしっかりと視認されることは少なくなる

そうなれば移動はし放題だが、その分できることも限られる


そこまで考えて静希は小さく首を振る、先のことを考えすぎてもあまり良くない、まずは目的地へと向かうことに全力を注ぐべきだ、一つ一つできることとやるべきことを解決していけば自然とできることも考えることも増えていく、本格的に思考を進めるのならそこからだ


現在地点から東京まで、少し急いで歩いて四時間ほどだろうか、迷ったりしなければ午後には到着できるということになる


途中で軽食や飲み物を購入しておくことも視野に入れながら、静希は目的地に向かって歩き出した


『一応周りの警戒はしておくけど、数時間は暇になりそうね』


『そういうなよ、まぁあんまり気張らずに頼む、まだスタート地点に立ったばっかなんだから』


思えば静希が完全な単独行動をとることは実に久しぶりだったかもしれない

一度イギリスにいた時に数時間だけ単独行動をとったが、そのあとすぐにエドモンドと接触したり、また大野と小岩の元に戻ったりしたために、完全に一人で行動するというのは、本当に久しぶりだ


普段なら明利や陽太、鏡花が一緒にいることが多いからそこまで意識することはなかった、そして今も人外たちがいるからそこまで強く孤独は感じない

だが思い返せば自分の隣には誰もいないのだ、そう実感しながら静希は小さく深呼吸する


先は長いのだ、あまり体力は使わないように、それでいて急ぎながら静希は足を進める







静希が単独行動を始めてから数時間、学校で授業を受けている明利達は一時的に城島に声をかけられ職員室にやってきていた


時間は昼時、昼食をもって職員室にやってきた三人は城島に連れられ多目的室に移動させられた


呼び出した内容は言わずもがな、静希のことである


先日静希が連行されたということを知る人間は意外と少ない、職員室にいた教師と、偶然居合わせた生徒だけ、だがそれでも少しずつ五十嵐静希がどこかに行ったといううわさは広がり始めている


城島は携帯を片手に弁当を口に運びながらとりあえずと口火を切った


「まずお前たちに伝えるべきことから・・・五十嵐を乗せた車が事故に遭ったそうだ」


その言葉に、城島と同じように食事をとっていた三人の息が止まる


陽太は食べ物をのどに詰まらせ、鏡花は米を吹き出し、明利に至っては顔が青ざめ、箸まで落としてしまっていた


無理もないかもしれないが、城島はそれらの反応を無視してさらに話を続ける


「事故が発生してから数時間、周囲を捜索したが五十嵐の死体は見つかっていない、そして意識の戻った警官が言うには、五十嵐は車から投げ出されたそうだ」


「・・・それってもしかして」


鏡花の言葉を待たずに城島は小さくうなずく


「間違いなく、逃げただろうな」


その言葉に明利は安心したのか小さく息を吐く、陽太も茶を口に含んでようやく平静を保てたようだった


その場で静希が車から投げ出されたという証言が無ければただの事故として扱われていたかもしれないが、静希の思考と行動の奇抜さをよく知っているこの四人からすれば、この事件が明らかに作為的に起こされたものであることがわかる


「で、静希が捕まったのはメールで知ってますけど、何で逃げてるんすか?誤解なら解けばいいんじゃ」


「・・・どうやら、この事件に関してある種の圧力がかけられている可能性が上がっていてな、警察の中に不可解な動きがみられる、すでに五十嵐を犯人だと断定して動いている節もある・・・恐らくそれが理由だろう」


「なるほど、黙って大人しくしていたらそのまま豚箱行き・・・なら自分でってことですか」


そういう事だろうなと城島はため息をついて見せる


他人に任せるくらいなら自分で行動するというのは何とも静希らしい行動だが、周りの目を欺くためとはいえ事故まで起こすとは思わなかった、どうやったのかまではわからないが随分と無茶苦茶をする


「あ、あの、その事故で死者は・・・?」


「いや、軽症者が何名かいるくらいだ、死者も重症者もゼロ、かなり派手な事故だったにしては、不自然に負傷者が少ないな」


その事実にさらに可能性は確信へと変わっていく、どれほどの事故だったのかは実際に見ていない明利達だが、城島がそこまで言うのに負傷者が少ないのであれば、明らかになんらかの介入があったのだろう


静希は無事で、自分に降りかかった面倒事への解決のために動き出した、そう考えるのが妥当だ


「で、それを俺らに教えるために呼び出したんすか?」


「・・・いや、本題は別だ」


城島は少し気が重そうにしながらいくつかの資料を三人に見せる


そこには今まで実習を受けてきたときに渡された資料のようにまとめられた情報があり、中に一つある文字が記されていた


依頼『五十嵐静希の捕獲』


それを見て三人は目を疑った


「そういう事だ、向こうから直々にお前たちに依頼してきたよ・・・仲間のことならよくわかるだろうということでな」


「そ、そんな!私たちまだ学生ですよ!?実習ならまだしも依頼なんて・・・」


「五十嵐はすでに二度超法規的に依頼をこなしている・・・しかも今回の依頼は警察からのものだ、断るわけにもいかんだろう」


身内の面倒は身内で片付けろという事だろう、そして警察も静希が生きていて、すでに逃げたということを把握しているようだ


死体が上がっていないのだからそう考えるのが自然なのはわかるが、まさか友人であり仲間でもある一班に仕事を手伝わせるとは思っていなかった


城島としても心苦しいようで、その表情はお世辞にも良いものとは言えなかった


「依頼ってのはいいっすけど、俺らが静希に手を貸すっていう風には考えなかったんすかね?」


「見張りを何人もつけるだろうし、お前たちにさせるのは五十嵐の能力についての情報提供と、その行動に対しての予測、後は見回り程度だろう、手を貸せるような状況にはならないだろうな」


静希のことをよく知らない人間からすれば行動を共にした人間の証言というのは非常に有力だ、捜査に不明瞭な点があれど、今や一般の人間とは完全に無関係な事案、鏡花たちから口を出してもまともに取り合ってくれるとは思えない


警察も一班の人間が静希に手を貸すことくらいは簡単に予想できる、そしてそれを阻止するくらい簡単だろう


「となると、今回はあまり協力できそうにないな・・・静希が何とかするしかないのか・・・」


「ううん・・・私たちが手を貸せないなら、他のところから手伝ってもらえばいいんだよ」


明利の言葉に、そこにいた全員がその方向を向く


その手には携帯が握られ、いつもにもまして力強い瞳をした明利が全員を見返していた


明利の携帯の中にある一つの連絡先に彼女の考え付くある手段があった


日曜日なので二回分投稿


もし物語の先がわかっても感想などにも書きこまずに心にしまっておいていただけると有難いです、もしズバリ当ててしまった場合、自分の豆腐メンタルが爆散します


これからもお楽しみいただければ幸いです

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