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J/53  作者: 池金啓太
十七話「追い追われる先に」
650/1032

連行

竹中の情報通り、日が昇りかけようという頃に、彼らはやってきた


何人ものスーツ姿の人間、ずかずかと取調室の中に入って来るや否や静希の周りを取り囲んで見せた


周りの何人かの警官たちが抗議の言葉を向けているがそんなものはまったく聞こえていないとでもいうかのように完全に無視している


「五十嵐静希、議員殺害の容疑でお前を逮捕する、無駄な抵抗はするなよ?」


「その行動自体が無駄だってわかってない奴が何言ってるんだか・・・」


静希は特に抵抗もせず、皮肉を一言言って両手を差し出すと、何の躊躇もなくその手には音を立てて手錠がはめられた


「あ、そのカバンの中着替えが入ってるんで、それくらいは持ってかせてくださいよ?」


「・・・いいだろう、こちらで預かっておく」


静希本人には持たせないという徹底ぶり、そのくらいは予想済みだ、すでに必要最低限の衣服などは能力で収納してある


重量制限のせいで大したものは入れられなかったが、ないよりはましだろう


警察署から出るとそこには以前静希が護衛した護送車が待っていた、まさか以前自分が守ったものに今度は自分が乗ることになるとは思っていなかった、人生何が起こるかわからないものである


車両後部にある扉から中に乗ると、一人軍人らしい人物がいるのが目に入る、能力者の護送というだけあってさすがに同じ能力者を用意してきているようだった、これも予想済み


「あの、一つ聞いていいですか?」


「・・・なんだ?」


静希と会話するのもいやそうにしている警察官が収容スペースの向かい側に座り込んでこちらを睨む、明らかな敵意というのもむけられるのはそう悪くないものである


「あんたら、どこまで抱き込まれてるんだ?」


「・・・何のことだ」


本心からの返事かどうかはわからないが、少なくともまともな答えが返ってくるはずもない、だがこの言葉が少しでも意味を持てばいいのだ、今ここでではない、これから先でだ


車が発進するのを確認して静希は目を閉じる


ここから先、少し集中する必要がある、なにせ今自分がどこにいるかほとんどわからないのだ


だがそれは静希に見えないというだけだ


静希はすでに仕込みを済ませている、護送車の上部に人外の入ったトランプを顕現させ周囲を見渡せるようにしておいた


情報収集しているのはもっとも現代に対応しているオルビア、漢字も読める彼女ならばそこまで苦労するということもない


トランプをしまっている状態では、トランプの中にいる人外たちは静希を中心とした風景しか見ることはできないが、トランプを顕現している状態では、トランプを中心とした風景を見ることができる、これによりトランプの操作範囲内であれば別の光景を確認することができるようになるわけである


『マスター、これより高速道路に入ります、行先は東京ですね』


オルビアの言葉に静希はゆっくりと思考を加速させていく


東京で起こった事件だ、容疑者を東京の本庁に連行して正しく事情聴取するというのは理解できる、だが仮にも能力者をこんなに簡単に移すべきだろうかと、警察の行動の迂闊さに半ば呆れていた


だがその行動が今はありがたい


『了解・・・そろそろ準備頼むぞ二人とも』


『はいはい、手加減が難しそうだけどね』


『今回はうまくやって見せよう』


静希のトランプの中にいる人外たちに指示を送りながら、静希は深呼吸する

なにせ結構危ない橋を渡ろうとしているのだ、多少緊張もする


焦りはない、だが心臓は大きく脈打っていた


車が走るときの独特の音と揺れを感じながら静希はゆっくりと呼吸する


護送車の前後には以前のように護衛車両、あの中には以前の静希達同様、能力者か警官がいるだろう


万が一にも失敗は許されない


高速道路に入り、周囲が高い壁に囲まれ始め、移動速度も速くなり始めたころ、静希は心の中でカウントをしていた


常に周囲の状況を報告し続けるオルビアとタイミングを合わせながら、メフィと邪薙も意識を集中していく


そして高速道路全体が大きくカーブを始めた時、静希のカウントがゼロになる


瞬間、静希達の乗っている車体が大きく傾いた


唐突に車体が傾いたことでハンドルを取られたのか、護送車はタイヤを滑らせながらスリップを始める


車両後部に乗っていた静希達はその揺れをダイレクトに体感し、強い衝撃と共に体が一瞬宙に浮く


スリップしたのは護送車だけではなかった、前方、そして後方に位置していた護衛車両も唐突な車体の変化に驚き、ガードレールや護送車と衝突しながら停止しようともがいている、そんな中、止まりきれなかった護送車が前方の護衛車両と衝突し、後輪を宙に浮かせながら回転し始める


金属音があたりに響き渡る中、宙に浮いている静希の体は唐突に物理法則とはまた違う何かの力で、吸い寄せられるように吹き飛ぶ方向を変えた


後方にあるドアに体が叩き付けられるその数瞬前に、その扉は歪みひしゃげて吹き飛び、静希の体は上空高くへと投げ出される


はたから見れば事故を起こした車両から振り落とされたとしか見えない状況だった


静希の体は不思議な力の影響を受け続け、高速道路の周りを囲っている高い壁を飛び越え、町の中へと落ちて行った


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