表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
J/53  作者: 池金啓太
十七話「追い追われる先に」
649/1032

凍てつく思考

そこまで考えを進めると静希はまた思考を進め始める


今度は原因ではなく、これからどのように動くかである


もし相手が静希を犯人だと仕立てあげようとしている場合、警察が敵に回ると考えていいだろう


全てが敵というわけではないが、少なくとも司法に関わる部分は完全に抑えられていると考えていい


証拠や証言を集めるという段階ですでに動きがおかしい時点で、静希を犯人にするための証拠しか集められていない可能性だってある


今の状態では自分で証拠を集めるなどと言うことはできそうにもない、やはりここは何とかして外部へと連絡するしかない


あるいは、相手の出方によってはもっと強引な方法をとらざるを得なくなる


城島を経由して竹中が動いてくれているが、その内容も警察内部の話になる、そうなるとそこから先の情報を得るにはもっと情報通な人物を頼らなくてはならない


とりあえず今できることはない、夕食代わりのコンビニ弁当を食べ終えた静希は持ってきてもらった衣服を整理し、歯を磨いてから椅子に体を預けて瞼を落とす


座りながら眠ることになるとは思っていなかったため、少しだけ寝苦しいが、背もたれがあるだけましだろう


結果の分かっている沙汰を待つ、これほど腹立たしいものはない


問題はその沙汰の先、相手がどのように動くかである


心を冷やすように、ゆっくりと感情を抑え、自らの奥の奥の方へとしまっていく


外からの熱に晒されないように、周りに乱されないように、自らの思考と一緒に凍てつかせていく、体を休め、心を押さえ、体力を温存するために


周りにいる警察たちもこんなことに巻き込まれて気の毒だ、今は静希は動くつもりがないとはいえ、ずっと見張っていなければいけないのだから


今自分の友人たちはどうしているだろうか


静希が捕まるとは思っていなかっただろうから、きっと心配しているだろう

だがもっと心配させることになる、きっともっと心配することになる


それでも乱されるわけにはいかない、自分が動かなければ、自分は破滅の道を歩かされるだけ、そうなってしまうのならばまだ見ぬ誰かを地獄に叩き落としてみせる


瞼を落としてからどれほど経っただろうか、静希が思い返すのは高校になるより前のことだった


あの頃は日常に何の不満も問題もなく、自分たちの能力や成績に一喜一憂できるような、今となってはもう戻らないような日々、それこそ昔の自分が今の自分を見たら驚くことだろう、そしてこんな風にはなりたくないと思うだろう


それほどのことを静希は抱えてきた


主に面倒ばかりなところが玉に瑕だが、その分得た物も少しはある


その代償がこれだと言われると、少しだけ不愉快だったが、もはや数々の面倒事に直面してきた静希にとって、これくらいならまだ音をあげる程ではない


なにせ体は動くし思考もできる、これから何をするべきか順序立てて考えられるだけの時間もある


面倒事への対処をしてきたせいで、こういった局面への耐性が非常に高くなっているのはまた何とも不思議な気分だった


どれほど時間が経ったかもわからない頃、取調室がゆっくり開く


瞼を開いて入ってきた人を確認すると、どうやら交代の時間のようで中で静希を見張っていた警官が欠伸交じりに外へと出て行く


その瞬間、扉の向こうに一瞬竹中の姿が見えた


「・・・あの、トイレ行っていいですか?」


時刻を見るとすでに深夜を通り過ぎて明け方に近くなっていた


どうやら静希はかなり長い間眠っていたらしい、眠り心地は最悪だったが、これほど時間が経っているところを見るとかなり疲れていたようだ


学校での訓練が響いたのだろう、少しでも体力回復できたのは僥倖だ


先程のようにトイレに向かうと、そこにはすでに竹中が用を足していた


隣に立って静希も用を足し始めると、竹中はため息をついて見せる


「発見された毛髪の結果が出た、三種類のうち一つは間違いなく君の物だったらしい、向こうはすでに君が犯人だと断定している、明け方になったら、君を本庁まで連行する動きまで出ているよ」


竹中の言葉に静希はやはりこうなったかと小さくため息をつく


他の証拠が発見されるより早く静希を捕えたいのだろうか、なんにせよ気の早い話である


証言一つと毛髪だけで犯人断定、ここまでおざなりな捜査があるだろうか、やる気のないテレビドラマでももう少しこったシナリオを書くだろう


現場にいる人間、それを統括する人間、誰もがおかしいと思わないのだろうか


今回容疑者になったのが無能力者だったのならこうも話は早く進まなかっただろう、全ては静希が能力者であるが故だ、能力を正しく理解していない人間からすれば、能力者なら何でもできるという認識なのだから


「こちらもなんとか情報を集めていくつもりだが、向こうの連中の強引さは類を見ない・・・あまり期待はしないでくれ」


「・・・長い独り言ありがとうございます・・・こっちも一言だけ呟いておきますよ」


静希は用を足し終え、手を洗い、鏡に映る自分を冷ややかな目で見据えていた


すでに十分休んだ、心は奥底へとしまい込んだ、覚悟も決めた、やることも決めた


後は動くだけである


「こちらはこちらで勝手に動きます、そちらもどうぞご勝手に」


そういってトイレから出ていく静希を横目に竹中はため息をつく


静希が連行されるまで、あと一時間


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ