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J/53  作者: 池金啓太
十七話「追い追われる先に」
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繋がる点と点

頭に血の上ったよそ者の警官に代わり、この署の職員が大まかな取り調べを行うことになった、よそから来た人間よりもこの方がありがたい


まさかあそこまで過剰に反応すると思わなかったが考え事をするにはこの方が何倍もましだ


第一取り調べと言っても事件当時の自分の行動を何度も話すだけ、どうやらこの署の人間も事件の詳しい話を聞かされていないのだろう


本庁との連携がうまくとれていないことがありありとわかる場面だ、本来こんなことはあり得てはならない事態である


少なくとも今は情報が少なすぎて行動を起こせない、城島が上手く立ち回ってくれればよいのだが


「あの、食事とかはどうすればいいんですかね?」


「あぁ・・・そうだな、とりあえず用意するよ、着替えは・・・ご家族がいないなら友人にとりに行ってもらえるかな?」


とりあえず少し面倒をかけることになるかもしれないと思いながら、静希は警察官の見ている前で携帯で明利と雪奈に着替えを持ってきてもらえるように連絡しておいた


明利は静希の家の合鍵を持っているからすぐに持ってきてくれるだろう、心配はするだろうが、そこは申し訳ないというほかない


同じことを話しているだけあって思考も少しだけ減退しかけている中、取調室の扉が開いてカバンを持った警官が入ってきた


どうやら明利と雪奈が着替えを持ってきてくれたらしい、とりあえずこれで着るものに困ることはなさそうだった


携帯を見てみると何件か着信とメールが来ている、一応警官に内容を確認させながら返信していくことにする


立場が立場なだけに仕方のないことだが面倒でしょうがない、何が悲しくてこんなことになっているのかもさっぱりわからなかった


「すいません、トイレ行っていいですか?」


「わかった、見張りをつけるが構わないね?」


どうぞお自由にと、もはやあきらめの境地で静希は同行を許可する


さすがに中に入ってまで見張るつもりはないのか、トイレの入り口で待つ警官をよそに静希はトイレの中に入っていく


そして静希が用を足し始めてすぐに一人、トイレの中に入ってきた


その人物は静希の見覚えのある人物でもある、城島の特殊部隊時代の後輩の竹中だった


「なんだかややこしいことになってるね」


「お話しするのはまずいんじゃないですか?俺容疑者ですよ?」


独り言だから構うことはないさと竹中は自分も用を足しながら少しだけ目を鋭くする


「城島先輩から頼まれてね、本庁にいろいろと探りを入れてるんだが・・・少し妙だね」


独り言だと言ってくれているので静希はあえて返事はしなかった、そして城島が自分のために誰かに頼み事をしてくれていることが少し嬉しかった、本当にあの人には頭が上がらない


そして今回の件がおかしいことは静希も感じ取っていた


警察の対応が明らかに異常なように思えるのだ


静希は今の警察の形態や、その動き方などは詳しく知らない、だが明らかに聞くべきことを聞かなかったり、話すべきことを話さなかったり、何より今回の件に静希が巻き込まれることになった原因ともいうべき証言に違和感を覚える


「調べた結果、議員の死因は銃であることが分かった、心臓を一発、ほぼ即死、使用された銃はS&WのM39、日本警察でも使用されている銃だ、現場に残っていたが指紋などは検出されなかった」


静希の銃の知識の中にその種類のものがあった、以前銃を装備するのであればどれがいいだろうかなどと調べた時、日本でも取り扱っている銃のページで見たことがあった


五百グラムを超えていた時点で使う気がしなかったのを覚えている


「現場からは犯人のものと思われる指紋や痕跡などはほとんどなかった、数本の毛髪を除いてね」


毛髪、警察が今静希の物だと考えて鑑定している証拠の一つだ


毛髪を残すなどというミスを静希がするはずがない、実際に静希と行動した人間ならそういうだろうが、そんなもの証拠にはなりえない、客観的に見れば毛髪が残っているというのは確固たる証拠だ


「だが問題はここから、犯人のものと思われる、その場の職員以外の毛髪は三種類見つかっているんだ」


竹中の言葉に静希は一瞬瞳を鋭くした


目撃者がいて、その人が静希を見たと言った、そしてそこから採取された職員以外の毛髪が見つかったから自分のものだと、そういう話であれば何の不思議もない


だがその見つかった毛髪が三つだったという時点で話は大きく変わる


一種類だけなら目撃者の言う通り静希の物だと思うべきだ、だが三種類あったなら他にも人間がいたと思うのが自然である


「一つは黒髪の直毛、一つは少し長めの茶髪、一つは少し癖のある茶髪・・・職場にいた人間の物ではないのは確定、なのになぜか見つかった毛髪は『君の物である』という決めつけのような形で捜査がされている、俺の知り合いも頭を抱えていたよ」


現職の警察官である竹中からしても明らかに異常な捜査状況、恐らく本庁の方の今回の事件の担当者である知り合いにこの話を聞いたのだろう


そうなると、本庁の方でもある意味派閥にも似た状況が出来上がっているのだろう


今回のこの状況を創り出している側と、この状況に振り回されている側


「っと・・・独り言が過ぎたな・・・それじゃ、またわかったことが増えたら独り言をしに来るかもしれないよ」


竹中はそういって手を洗ってトイレを後にした


静希は数秒後に同じように手を洗ってトイレを後にすることになる


竹中の話を聞いた後、静希は思考を加速させていた


話がどんどん妙な方向へと向かっている、明らかに異常な状況に加えて、何らかの作為的なものまで見え隠れしてきている


誰かに恨みを買うような生き方はそれほどしてきてはいないという気持ちではあるが、少なくとも静希の立場と性格上それは難しい


『メフィ、邪薙、オルビア、お前達から見て今回のことどう思う?』


思考が煮詰まってきたことにしびれを切らしてトランプの中にいる人外たちに話しかけると、彼らは唸りだしながら思考を始める


『私としてはその目撃者が怪しいと思うわよ?第一発見者が実は犯人だったってよくありそうじゃない?』


ドラマなども積極的に見て見聞を広めていたニート悪魔の発言に静希は妙な納得感を得る


確かに現状明らかに不自然な点の一つである目撃情報の出所、まだ誰がこの証言をしたのかまではわかっていないが、誰がこの証言をしたのかは明らかにしておいた方がいいだろう


『私は殺された議員とやらの関係者ではないかと思う、議員というからには敵は多いだろう、反対派などの犯行で殺されたのではないかと思うのだが・・・』


邪薙の至極真っ当な言葉に静希は唸りだしてしまう


そこまで政治などには詳しくないため、殺された議員がどんな人だったか、そして誰がその人の敵だったのかなどわかりようがない


だがその考えは十分に考えられる、政界というのはかなりどろどろとしているところだと言われているのだ、足の引っ張り合いや暗躍の一つや二つあってもおかしくない


『マスター・・・先程竹中様がおっしゃっていた毛髪のことなのですが』


『ん?三種類の毛髪ってやつか?』


その通りですとオルビアが答える中、静希の頭の中では先程竹中が言っていた言葉が再生されていた


黒髪直毛、長めの茶髪に、癖のある茶髪


この三種類の髪が現場からは見つかり、なぜかそれらのうちの一つが静希の物であると決めつけられ捜査が進んでいると


『件の三つの毛髪・・・一つがマスターの物であると仮定して、残り二つは、明利様と雪奈様の物ではないでしょうか?』


『何言って・・・』


そこまで言いかけて、静希の頭の中に一つの可能性が思いついた


先日、静希の家をピンポイントで狙った空き巣、何も盗まずに部屋を荒らしていったあの空き巣


現場から見つかった三つの毛髪、あの日、空き巣はゴミ箱も漁っていたのを覚えている


『・・・オルビア・・・確認したいんだが、お前毎朝掃除するとき掃除機使ってるか?』


『いいえ、マスターの眠りを妨げないように機械の類は使いません、モップやクイックルなどを』


モップなどはベランダから埃を吐き出すが、クイックルワイパーなどは使用したらゴミ箱の中に捨ててしまう


そして静希の家にはここ数日、明利と雪奈が入り浸っていたこともある、あの二人の毛髪が落ちていても何の不思議もない


もし、あの場で荒らされたゴミ箱に入っていた毛髪が、件の事件の現場に落ちている毛髪だったとしたら?


何も関係ないと思っていた点と点が線で繋がり始めた


今回の件がいったい誰の作為であり、何が目的であるかはまだ不明だが、明らかに静希に対して喧嘩を売っていると思っていいだろう


わざわざ毛髪を入手してから殺人を犯し、罪を擦り付けようなどと


『くっそ、そういう事か・・・てことは警察は裏から圧力とかかけられてるのかな』


『可能性は十分ありえるかと』


オルビアのたった一言の懸念から、静希は二転三転と思考を進めてある可能性まで行き着いていた


自分は、政治的な喧騒に巻き込まれたのではないかと


そう思った根拠は二つ、殺されたのが議員だったという事、もう一つは明らかに警察の動きがおかしいこと


もしこの件が政治的な陰謀で、その計画の中に静希が巻き込まれたのだとしたら、いい迷惑も甚だしい


何故自分がと言いたいが、このことに関しては心当たりがあるからこそどうしようもない


今年に入ってから静希は良くも悪くも名が売れすぎた


非公開ではあるが悪魔の契約者、そしてここ最近では非公式ではあるものの外交にまで関わりつつある人間だ、それなりに立場のある人間は静希の詳細を知っていても何ら不思議はない


今回の被害者を殺すうえで、スケープゴート役としてついでに排除しておきたい不確定要素として静希は選ばれてしまったのだろう


静希の考えた流れはこうだ


今回の黒幕は先程邪薙が言っていたように、被害者と対立関係にあった政府関係者である可能性が高く、そして被害者を殺害する計画の中に静希は組み込まれた、先日の空き巣はその計画の条件を整える上で必要不可欠なものだったのだろう


そしてさらに言えば、排除したい不確定要素である静希が犯人であると決めつけるように警察の方に圧力をかける、目撃証言などをどうでっち上げたのかは知らないが、少なくとも証言の違和感も強要したものか、あるいは作り話である可能性もある


こうすれば現在の明らかにおかしい状態はほとんど説明がつく、未だ仮定の域を出ないが、十分現実的なところまで思考が行きついた


問題はその黒幕がいったいどこまで警察を抱き込んでいるかだ


先程の竹中の話から全ての警察官を掌握しているというわけでもなさそうだ、だが圧力をかけられるということはそれなり以上の関係を持っていると思ってまず間違いない


厄介なことに巻き込まれたものだと静希は大きくため息をつく


お気に入り登録件数が2200件突破したのでお祝いで二回分投稿


先日エイプリルフールだったのに嘘つき忘れました、もったいないことをした・・・


これからもお楽しみいただければ幸いです

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