表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
J/53  作者: 池金啓太
十七話「追い追われる先に」
644/1032

自宅の一時

「で?結局警察ではあんまり手がかりは得られなかったんだ」


「あぁ、まぁ気を付けたほうがいいっていうのはわかっただけましだけどな」


いつものように静希の部屋に入り浸る雪奈は静希の足を枕にしながらメフィとゲームに興じている


メフィがゲームというものを知り、その深みにはまりだしてからというもの、頻繁に見られる光景だ


何の苦労もなくメフィの操縦するキャラクターが粉砕されていくのがまた何とも言い難い


夜ということもあって、明利は来ておらず静希の家には人外たちと雪奈だけがいる状態だ


最近はメフィのゲームの相手をするためにやってきているような感もある


「でも本当になんだったんだろうね、この部屋ほとんどとるようなものなんてないでしょ」


「そう言われるとちょっとあれだけど・・・まぁ貴重品はこれの中だし・・・」


トランプを飛翔させながら静希は二人がゲームをしているのを眺めている、ほぼ毎日のようにオルビアが掃除をし、埃一つない状態になっているこの部屋、貴重品はすでに静希のトランプの中にある状態で盗むものと言ったら静希の父和仁が時折送ってくる海外の妙な形の置物や布などくらいのものである


だが引き出しやゴミ箱をあさっているというところからその線も薄い、どちらかというとへそくりでも探しているのではないかという感じだ


「変に気を使うと静が疲れちゃうよ、そういうのはさっさと忘れるに限るって」


「・・・そうできればいいんだけどな」


そんなことを話しながらもすでにメフィのキャラを数回倒しながら雪奈は軽く笑っている


こういう風に気にしないということができればどんなに楽だっただろうかと静希はため息をつく


だが雪奈のいう事ももっともだ、考えすぎてそれで疲れてしまっては相手の思うつぼかもしれない


ここは何か動きがあるまでは静観に徹したほうが良い、そう思えてきた


「・・・あれだな、たまにはいいこと言うな、雪姉は」


「む?私はいつだっていいこと言うさ、お姉さんだからね」


「はいはい、すごいすごい」


自分の膝の上に乗っている頭をなでながら静希は少し笑みを作る


幾分か楽になった気持ちを抱えながらゆっくりと息をつくとようやく少しだけ休めた気がする


先程までずっと考えが頭の中をぐるぐるとめぐっていてろくに休めていなかったのだ


雪奈が自分より年上で、人間的に頼りになるかはおいておいてこういう時に一緒に居てくれる人がいるとありがたい


雪奈はこの扱いにあまり満足していないようだったが、頭をなでられているのは嫌いでは無いようで撫でられるままになっている


「それでさ、一応雪姉とかも気を付けといて欲しいんだよ」


「気を付けてって・・・襲われるとかそういうの?」


雪奈の返しに静希は頷いて答える


静希自身は人外たちがついているからこそ特に問題はないが、その周りはそうはいかない


静希の周りにいる人間が人質などにとられたとき、静希の苦労が乗数的に増えることにもなる


「それって私より明ちゃんに言ったほうがいいんじゃないの?明ちゃんの方がよっぽど危ないよ」


「もう明利には電話で伝えたよ、もしなんかあったらまずいから連絡手段は考えておかなきゃいけないけど」


緊急時に陥った際、携帯電話などでは連絡手段としては役に立たない場合が多い


相手に見つからないようにだとか、すでに動きを封じられているだとか、そういった場面はいくらでも考えられる


明利の場合、力づくで押さえつけられたらまず間違いなく反撃や抵抗ができないのだ、緊急時の連絡手段は用意しておいて損はない


だがそれだけものを考えてもどうしても不安は残ってしまう


「まぁ、静なら私たちが危なくても助けにきてくれるでしょ?そんなに心配しなくても大丈夫だよ」


静希の不安そうな顔を察したのか、雪奈はゲームから目を離して静希の頬を撫でる


根拠など全くない、理屈も証拠もないようなそんな内容の言葉だが、長年彼女と一緒に居た静希にとってこれほど安心する言葉もない


条件付けされているなと実感しながら、静希はため息をつく


「危なくならないように尽くすよ、万が一の時は何とかする」


「うんうん、頑張りたまえ男の子、女の子を守るのは大事な役目だよ」


男女差別するつもりはないが、女としては男に守られるというのはやはり憧れのようなものがあるのだろうか、雪奈の目は少し輝いているように見える

こう見えて地味に純情なところがある故に、雪奈は変に幻想というか願望が強いところがある


もう少しバランスと常識が備わっていればよいのだがと弟分として少しだけ心配になる


「ほらメフィ、そろそろゲーム切り上げろ、ニュースが見たいんだ」


「ま、ちょっと待って!もう一回!ワンモア!」


「あはは、それじゃこれで最後にするよ、すぐにやっつけてあげる!」


往生際の悪いメフィに対し、雪奈は見事有言実行、物の数分も経たずにメフィのキャラを粉砕し静希にニュースを見せるべくテレビを明け渡す


メフィにゲームをさせたのは失敗だったかもしれないなと割と本気で後悔しながら静希はニュースに目と耳を傾け始めた



結局、ニュースを見ても最近はろくなことが無いということくらいしかわからなかった


明日はずっと晴れ、どこかで火事があったとか、窃盗犯が出たとか、政治家が殺されたとかそんな話が流れているばかり、静希に関わってくるような内容のものは全く入ってこない


これで能力者の犯罪が多発しているだとか、特定の能力者の情報でも入ればよいのだがそんな都合のよい展開などあるはずもなく、ただこの国のどこかで何か事件が起こっているというだけのものが流れるだけ


いつものニュースと言えばその通りで、まったく何も変わらないいつも通りの番組構成だ


「じゃあなに?結局泣き寝入りってこと?」


「そういう事になるな・・・警察がここまで頼りないとは思ってなかったよ」


翌日、徐々に冷える気温の中体育と称して行われる訓練をこなしながら静希は大まかな流れを班員に話していた


行っている訓練は走行訓練、しかもただ走るのではなく荷物を背負った状態での訓練だ


全員に重さ五キロから十キロ程度の荷物を背負わせてその状態でいくつかの演習場を走り続けるという苦行極まりない内容である


現在静希達は森林演習場を通過し、岩石地帯の演習場を走行している最中だった


「まぁ被害ゼロじゃやる気も起きないでしょうよ、犬にかまれたと思って忘れなさい」


「しかも証拠ほとんどなしだからな、残念でしたってこった」


「で・・・でも・・・あの・・・家の・・・セキュリティは・・・」


「明利、無理にしゃべらなくたっていいって」


体力に自信のある陽太と日々訓練を欠かさない鏡花と静希はまだ問題ないが、基礎体力の低い明利はどうしてもこういった訓練では毎回きつそうにしている


毎日朝に静希と一緒にランニングしているとはいえ、こういった荷重をかけた状態で走るような訓練はしてきていない


いつも通り走るのと、自分の体重をより重くした状態で走るのとでは疲労の仕方が段違いなのだ


「最近体力ついたと思ってたけど、やっぱりこういうのになるとダメね」


「元の筋力が少ないからな、重いもの持つとかそういうのには不向きなんだろ?」


「・・・俺が荷物持つか?」


明利は首を横に振って頑なに荷物を離そうとせず、ふらふらになりながらも足を前へと運び続ける


陽太の言うように向き不向きがあるとはいっても、自分の不向きな場所と条件で行動しなくてはいけないことが必ず一度はあるものだ


今のうちに自分が何に向いているのか、何が苦手なのかを把握しておくのは重要だ


だからこそ授業などの訓練の内容は多岐にわたる


以前やったような対人戦、格上能力者への対応、能力を使わない対人格闘や今回のような走行訓練もそのうちの一つである


こういう荷物は本来であれば収納系統や転移系統が必要な時と場所で取り出したり転送したりするため、能力者にとっては『担ぐ』という行動自体が珍しい


だが一班の人間の中で収納系統は静希のみ、しかも何キロもあるようなものを運ぶことなどできないタイプの能力、こういう物資の運搬については今後何らかの対策を練らないといけないかもしれない


支援行動という一見地味で普段思い入れやそれほど印象に残らないもののありがたみを与えるのもこの訓練の目的の一つでもある


だが静希を除く収納系統の能力者数名は皆ぼやいていた


こんなもの何時でも能力で持ち運びできるのになぜこんなことをするのかと


「でもさ、俺らは静希がこれだからこういうのもやらなきゃいけないってのはわかるんだけどよ、他の収納系統のいる班とかはなんでこんなのやる必要あるんだろうな」


「そりゃ、やっぱあれじゃないの?無能力者の気分を味わえだとか、どんなことにも対応できるようにするためでしょ、前みたいに能力が使えなくなることだってあり得るんだから」


鏡花の言うように能力が封じられたときの対応というのも一理ある、だが静希はもう一つの必要性を見出していた


「それもあるだろうけど、負傷者の移送っていうのもあるんじゃないか?収納系統とかは生き物を入れられない奴がほとんどだし、重いものを背負って移動できるだけの体力と体は全員作っとけってそういうことじゃねえの?」


収納系統で生き物を入れることができる能力者ももちろん存在するが、その数は絶対的に少ない


静希のようにゼロを入れられる能力者というのもまた希少だが、生き物を入れられるというのはそれと同等以上に珍しい


人々の搬送や密入国、それ以上に護衛や護送にこれほど向いた能力者もいない


なにせ護衛対象を収納して目的地まで移動するだけの至極単純明快なものになるからである


「発現系統の念動力とかの能力者がいれば、物を動かすのも楽だけど・・・案外いないのよね」


「一番ポピュラーなんだけどな、念動力・・・うちのクラスにも二人くらいしかいないだろ?」


指を折って数える程度しかいない念動力を扱える能力者、世間一般に知られる中でも最も有名なのが念動力と言えるほどだが、実際にそういう力が使える能力というのは案外少ないものだ


静希も知り合いに数人いる程度のものである


今日が土曜日だったのを思い出したので二回分加筆しました


すっかり忘れていました、深夜投稿だと曜日感覚が狂いますね、申し訳ありません


これからもお楽しみいただければ幸いです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ