何のために
被害を確認している間に警察官がやってきて、中に入ってくる
その惨状を見て静希がこの家の住人であることを確認すると気の毒そうに事情を聞き始めた
「そう・・・じゃあ盗られた物とかは今のところないんだね?」
「えぇ、まだ全部チェックできてませんから何とも言えませんけど、あと相手は能力者かもしれません、他の家にも入っていた可能性があるので、このマンションの全部の住人に簡単にで良いんで被害の確認をしておいた方がいいと思います」
そうか、ありがとうと警察官が軽くあたりの様子を見ながら床に残っている足跡などを確認し始める
証拠が残っているかはわからないが、僅かに残った足跡、そして物に触れているということからもしかしたら指紋も取れるかもしれない
「まだ学校はあるんだよね?ご家族の方で今家に戻れる人っているかな?現場を調べたいんだけど・・・」
さすがに誰もいない状況で検分するのは問題があるのだろう、だが静希の両親は生憎と二人とも海外に行ったきりだ、年末年始には帰るよとか言っていた気がするが、それも定かではない
その旨を伝えると警察官は苦笑いしていた
「それじゃあ先生に午後の授業は休ませてもらうように連絡しておいてくれるかな、これから簡単に家の中を調べちゃうから」
「わかりました、お願いします」
それから静希は電話で城島に事の顛末を告げると、何故捕まえられなかったんだと軽く小言を言われながらも公欠扱いにしてくれた
彼女自身静希にわずかながら同情でもしているのだろうか、声音が少しだけ優しくなっていた気がしないでもない
そのあと現場を調べる検査官たちがやってきて一、二時間ほど家の中を調べ、書類や写真などに収めていく
その間に静希は何度か事情を説明させられたが、被害者ということもあってそこまで深くは聞かれなかった
何度か警察署に来てもらうかもしれないと言伝られ、警察官たちは夕方頃には静希の家から一人もいなくなっていた
「あぁ・・・ったく・・・これどうすんだよ・・・」
部屋に残った足跡、荒された家の中、そして完全に粉砕された窓ガラス
見るだけで頭痛がしてくる惨状に静希は落胆していた
あの後調べた結果、リビングの方でも盗まれたものはなかった
通帳でも探していたのだろうか、やたらといろんなところを探し回っていたようだが、何もゴミ箱までひっくり返さなくてもよいのではないかと思えてしまう
「ひっどい有り様ね・・・気分も最悪だわ」
「まったくだ、現代の人の心はここまで荒んでいるのか・・・」
「・・・とりあえず清掃してしまいますね」
メフィと邪薙が腕を組んでため息をついている中オルビアは着々と部屋の掃除を始める
人外の先輩である二人にも見習ってほしいところだが、今はそんなことを言っている余力もない
静希もオルビアに続いて後片付けを始めると、家のチャイムが鳴り響く
「だれ?」
「メイリたちだな」
「んじゃ私が出るわ」
相手が明利であることがわかるとメフィがふわふわと飛んでいき、家の鍵を開けると、ぞろぞろと一班の人間が家の中に入ってきた
「静希君、大丈夫?空き巣が入ったって聞いたけど・・・」
城島から大体の事情は聞いたのだろう、不安そうな顔をしながら静希の近くに寄ってくる明利に対し、陽太と鏡花はうわぁとただ声を漏らすばかりだった
「ひっどい有り様ね・・・あんた武器とか持ってたけど、そっちは大丈夫だった?」
「あぁ、っていうか盗まれたものがないんだよ、ただ家を散らかされただけ・・・ついでに窓を割られた・・・」
「まぁ盗まれたもんがないならいいじゃんか、酷い有り様だけど」
憔悴しきった静希の顔とは対照的に陽太は笑っている
静希の様子を見るために今日の訓練が休みになって嬉しい様子だった
人の不幸を笑うとは何て奴だと愚痴をこぼすが、静希もあまり人のことは言えないのでそれ以上口にするのはやめにした
「まぁ、なんにせよ、窓が割れてるのはいただけないわね、明利手伝って、窓直しちゃうから」
「うん、破片を集めればいいんだね?」
明利と鏡花は協力してベランダや部屋に散乱した窓ガラスの破片をすべて集めると、一か所にまとめて能力を発動して見せる
ガラスの破片はすぐに形を変え元の窓本来の形へと戻っていく
まるで何事もなかったかのように元通りになった窓に静希は歓喜の息を漏らす
「今日ほどお前がいてよかったと思ったことはない・・・ありがとな鏡花・・・」
「その感想はもっと常日頃から持っていてほしいものなんだけどね・・・まぁいいわ、今日はあんたも大変だったみたいだし」
なにせ急いで家に戻って犯人を逃がしてしまって警察から簡単に取り調べを受けてそのうえ片づけをしているのだ
精神的な疲労はかなりたまっていてもう何もしたくない気分である