役立つアドバイス
「でもそうだな・・・あいつが恥ずかしがったりしてるとこって実月さんに抱きしめられてるときくらいだしな・・・」
「陽は実月さんに抱き着かれるの苦手だもんね・・・っていうか直接的過ぎる愛情が苦手なんだよ」
直接的過ぎるのが苦手となれば、微妙に奥手となっている鏡花相手なら相性はいいのかもしれないが、正直判断材料が少なすぎる
明日になったら結局デートの誘いがどうなったのかを聞き出すべきだろう
直接聞くのはさすがに憚れるため明利に情報をリークしてもらうことにする
「そういや陽って私や明ちゃんや鏡花ちゃん以外に仲のいい女の子っていないんじゃない?それもあるんじゃないかな?私や明ちゃんは静にべったりだったし」
「なるほど、陽太の相手役がいなかったからこそか・・・思えば確かに陽太は実月さんがべったりだったからな・・・鏡花が彼女になったらあいつ大変そうだな」
「二人も彼女にしてるシズキがいうとあんまり大変そうじゃなく思えるわよね」
メフィの言葉に耳が痛いのか静希は目をそらして苦笑いを浮かべている
不誠実だというのはわかっていながら二人とも傷つけたくないが故に至った行動、二人の了承があるからこそこういった形で落ち着いているが、その了承がなければ静希は恐らく明利を選んでいただろう
以前雪奈にも言っていたが、彼女は異性というよりも姉としての存在が強すぎるのだ
「・・・なぁメフィ、お前って俺以外にもいろんな奴と契約してきたんだよな?」
「そうよ?いきなりどうしたの?」
「いや、今までいろんな奴を見てきたなら鏡花にアドバイスでもできるんじゃないかと思って」
外見や行動こそちょっとあれな部分もあるメフィだが、その中身は何百年も生き続ける悪魔、多くの物事を目にし、多くの人の生き死にを近いところで見てきた人外である
先程の陽太のこともそうだが、ある意味的確ともとれるものの見方をすることもある
となれば恋に迷い変な方向に向かいかねない鏡花にも的確なアドバイスができるのではないかとそう思ったのだ
「見てきたからそれができるかって言われると・・・正直微妙ね、シズキだって映像を見たからその人がどんな苦悩を抱えているかとかわかるっていうわけじゃないでしょ?」
「・・・まぁそりゃそうだな」
メフィからすれば静希達の人生も今まで見てきた人たちの人生も皆等しくテレビのドラマのようなものだ
彼女の時間感覚からすれば静希達人間の人生はあまりにも短く、そして儚いものである
いつ終わるか、何が起こるかわからない先の見えない映画のようである、メフィは以前人間の人生をそのように表現した
その考えで言えば、映画を見てその登場人物の身上をすべて理解できるかと言えば確実に否である
多くを見ている分、分析と自分なりの解釈はできるだろうがそれも百%正解というわけではない
「それに私そういう事にあんまり口出ししたくないのよね・・・」
「へぇ、面白いこと好きのお前にしちゃ珍しいな、何でだ?」
物事を引っ掻き回したり、眺めるのが好きな彼女にとって人の恋路に口出しするのが嫌とは少し今までの印象と違う
また気まぐれかそれともただ単にそういうのが嫌いなのか
「私が口出しするとなんかつまらなくなるのよ・・・なんて言うか・・・楽な道を通ってるみたいでさ、どうせ見るなら困難な道を進んでるほうがいいじゃない?」
「・・・それはそれで趣味が悪いな」
物語に必要なのは安全や平穏よりも、その中に含まれる起伏であるという事なのだろうか
実際ダラダラと平坦な一本道を歩き続けている映像よりも、山や谷、森や砂漠などあらゆる環境や困難を進んでいる光景の方がずっとおもしろく思える
メフィから見れば鏡花の恋路も一つの娯楽でしかないというあたり、悪魔らしいと捉えるべきだろうか
「・・・ねぇメフィ、もしかして鏡花ちゃんがアドバイス欲しいって言ってきてもはねのけるの?」
「いいえ、頼んできたなら相応の対価を貰った上できちんとしたアドバイスをしてあげるわ、知らない仲じゃないし、それくらいはしてあげるわよ」
さすがに悪魔にも情というものがあるのだろう、それがどのような意味での情かは不明だが、ただの人間に向けられるそれよりも少しは上等なものだと信じたいものである
「オルビアちゃんとしてはどう?鏡花ちゃんにアドバイスとかできそう?」
「わ、私ですか・・・!?・・・私は・・・その・・・」
雪奈の思わぬ質問にオルビアは身を強張らせて狼狽してしまう
この質問は予想外だったのだろうか、どう答えたものかとかなり真剣に悩み始めてしまう
「・・・確かオルビアって性別偽って騎士になってたんじゃなかったっけか・・・?となるとまともな恋愛とかしたことない・・・?」
「う・・・お、お恥ずかしながら・・・そういった経験は全く・・・」
オルビアの生きていた時代は何百年も昔の話だ、そんな昔では今とは全く違うことが常識となっていても不思議ではない
しかも日本ではなく海外、さらにオルビアは騎士として男として育てられた
とてもまともな女子としての生活を送れていたとは思えない、実際はじめてあった時などは服などにも一切興味のないそぶりを見せていたのだ、よくここまで真っ当になったと感慨深くなってしまう
「んじゃ一応聞くけどワンちゃん神様は?鏡花ちゃんに何かアドバイス」
「一応とは何だ・・・生憎と縁結びの神ではないのでな、管轄外だ」
神様に管轄があるとは意外だが、確かにいろんな神がいるという意味では管轄分けされているという考えも間違っていないのかもしれない
だが管轄というとどうしても役所のように思えてしまう
守り神である邪薙は一体どの管轄を任されているのか少し気になるがとりあえずはスルーしておくことにしよう
「そんなこといったら雪姉はどうなんだよ、なんかあいつにアドバイスとかできんのか?」
「え?もちろんできるさ!明ちゃんの時だって私のアドバイス大活躍だったっしょ?」
やはりあの明利の行動はこの姉が原因だったかと静希はあきれ返ってしまう
告白して返事を聞く前に唇を奪えなどと言うアドバイスは助言というカテゴリーから大きくかけ離れた行動だとなぜわからないのか
下手すれば今後の関係まで壊しかねない凶悪な行動だ、相手が親しい間柄でなければできないことである
今回の場合鏡花が仮に告白して返事を待つ前にキスなどしたらそれこそ面倒な展開になること請け合いだ
明利のように強烈で急激な行動ができないような女の子ならともかく、鏡花はその持前の能力のせいで何を起こすかまるで分らないのだから
「あれだな、雪姉は鏡花にアドバイスとかはしないようにな」
「なんで!?年上のお姉さんとしてばっちり二人の恋を応援するよ?」
「話がややこしくなるから物陰から眺めるだけにしなさい」
間接的にお前のアドバイスは役に立たないからあっち行ってなさいと言われ、雪奈は少し落ち込みながら静希の体に自分の顔をうずめてしまう
泣いているふりでもしているのか、抱き着いた状態から離れなくなってしまう
結局その後陽太と鏡花の恋人談義もひと段落し、雪奈を引き剥がした静希はそのまま床に就くことになる
翌日、学校に着くや否や明利は鏡花と楽しげに話をしている
そして静希と陽太は先日と同じようにそれを横から眺めていた
「またあの二人内緒話か、ガールズトークってそんな毎日やることか?」
「まぁ楽しいから毎日やるんじゃないか?俺ら男子にはわからないもんだろうよ」
まさか自分自身が話の種であるとは思わないだろうと、静希はわずかに陽太に同情する
陽太自身鏡花の行動の変化に気づいてはいるだろうが、深くは考えていないようで特に気にしていない様子だ
昨日の訓練の時にどんな話をしたのかはわからずとも今日の鏡花の様子を見る限りなんとなく把握できる
朝から機嫌がよさそうで僅かに笑みをこぼしているそぶりもある、あれが恋する乙女というものかと静希は今まで見たことのない鏡花の表情に少し驚きながらも今日の準備を進めていく
いつものような座学と訓練、特に変わり映えのしない毎日
腕が無くなってからというもの、比較的忙しい日々を過ごしていた静希でもその忙しさも終息しつつあり、新しい腕にももう慣れ、以前と変わらない日常を過ごせるまでになっていた
喜ぶべきことなのだろう、今や気にするべきことが陽太と鏡花の恋愛事情なのだから
「で?鏡花はなんて言ってた?」
「うん、ちゃんとデートに誘えたんだって、来週から放映される映画を見に行くんだって言ってたよ」
きちんと情報を手に入れてきた明利の話を聞きながら静希はそうかそうかと何度かうなずいて見せる
あの様子ならその結果に驚きはないが、来週から上映開始となると静希にもいくつか思い当たるものがある
恋愛かアクションかアニメ映画のどれかだったように記憶しているが、鏡花がいったい何を見ようとしているのかまではわからないようだった
確かそのうちの一つをメフィが見たがっていたというのは覚えているのだが、それがその三種類のうちのどれだったかまでは覚えてない
「来週か・・・また尾行するか」
「え・・・?そ、そっとしておいてあげればいいんじゃないかな・・・?鏡花ちゃんもいい雰囲気になりたいだろうし・・・」
すでに尾行する気満々の静希をよそに明利はあまり乗り気では無いようだった
明利としても応援している鏡花に楽しい思いをしてほしいと願っているのだろう、その反面その様子を見ていたいという気持ちもあるだろうが、今は鏡花の気持ちを優先する気持ちの方が大きいようだった
「でも明利だって気になるだろ?それにあのバカがなんかやらかすかもしれないし、フォローは必要だろ」
「それは・・・そうかもしれないけど」
デリカシーの欠片もない男陽太が行動するという時点で何かしらのアクシデントが発生するというのはむしろ予定調和のようなものだ、そういったときにフォローをしてやらなくては大惨事になりかねない
無論面白半分でついていきたいというのが半分、フォローしなくてはいけないのが半分程度の気持ちだった
「まぁあれだ、ばれない程度の距離から、ばれない程度にフォローしてやればいいんじゃないか?それくらいなら問題ないだろ」
「・・・そうかなぁ・・・」
静希の言葉に半ば説得されかけている明利は不安そうに口元に手を当てている
彼女としても複雑なようだが、好奇心には勝てないようだった
日曜日なので二回分投稿
誤字がいい感じに調整してくれたおかげでいいところで物語を切ることができました、ちょっとほっとしています
これからもお楽しみいただければ幸いです