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J/53  作者: 池金啓太
十七話「追い追われる先に」
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同級生の女の子

「・・・お前たち何をやっているんだ?」


不意に後ろから声がして静希と明利が声の方を向くと、そこには運動着に着替えた状態のエルフの同級生、石動がいた


どうやら彼女も自主訓練を行っていたようなのだが、この場所で立っていられると少々都合が悪い


「話は後だ、今は隠れろ」


「お、おぉ?一体何事だ?」


隠れて二人を眺めているのがばれないように物陰に石動を引き入れて再び監視を続行する二人、そしてそんな二人を見て石動は視線の先をたどってようやく状況を理解することができた


その先にいるのは明らかに挙動不審な鏡花と、特に変わった様子もなく訓練を続けている陽太の姿がある


「出歯亀とは・・・あまりいい趣味とは言えんな」


「そういうなよ、幼馴染として班員として、気になるものは気になるんだからさ」


「あの二人結構お似合いだと思うんだけど、なかなか先に進まなくて・・・」


その言葉を明利が言うのかと石動は突っ込みそうになったが、視線の先にいる鏡花を見てふむと小さくつぶやく


石動はこの班のことはそこまで詳しいというわけではない


だがあの様子から鏡花が陽太に対して想いを寄せているということまでは把握できた


「なんというか、微笑ましい光景だな・・・青春というやつか・・・」


「他人事みたいに言ってるけど、お前はそういうの無いのか?」


静希の所属する一班は静希と明利は恋人、そして鏡花は陽太に片想い、こうしてみると男女が対に番になっているのだが、他の班がどうなのかなどは考えたことが無かった


特にほかの班の中でも比較的親しい石動がどんな生活を送っているのかは少し気になるところだ


「・・・そういえばお前たちはすでに恋仲だったな、一応おめでとうと言っておこうか?」


「話をそらすな・・・っていうかなんで知ってるんだよ、言った覚えはないぞ?」


「あ、私がメールで教えちゃったの、この前ぽろっと・・・」


何時の間に明利と石動がメールをしあう仲になっていたのかまでは知らないが、少なくとも自分の情報を教え合う程度には親しくなったようだった


幼馴染兼恋人としては嬉しい反面何とも複雑な気分だった


「それで?お前んところはどうなんだよ、青春っぽいことやってるのか?」


静希の言葉に、石動は目に見えて落胆したような風体で大きくため息をついて見せた


一体何に対してのため息なのか静希と明利は理解できなかったが、少なくともあまり良い意味ではないだろうことは察するに難くなかった


「お前のところのように優秀かつまともな人間がいればよかったのだがな・・・私のところはすでに二人は恋仲、残る一人は変態だ」


「・・・あ、そういえばお前の班員って上下コンビと樹蔵だったっけか」


以前にも何回か遭遇したことがあったが、彼女の班員は長年の付き合いのある二人、通称上下コンビと双眼鏡の異名を持つ樹蔵である


長い付き合いがあるのだからそういった関係になるというのは何の不思議もないが、もう一人である樹蔵に対しての辛辣な呼称が少し気になった


「あ、あの・・・樹蔵君何かしたの?」


明利の言葉に石動はその時のことを思い出したのかわなわなと肩を震わせ始める


その様子だけでずいぶんと彼女の怒りを買っているという事だけは十二分に理解できた


「あのバカ者は・・・二度目の実習の時にあろうことか女子風呂を覗いてきてな・・・!それだけならまだしも・・・!わた・・・私の体を・・・貧相・・・などと・・・!」


声を震わせながら怒気を振りまいている石動をなだめながら静希はどうしたものかと困り果ててしまう


樹蔵の能力は遠視、超能力などで言うところのクレヤボヤンスだ、実際にその場に居なくても遠くのものが見えるというものでその気になれば覗きなどし放題なのだが、肝心の樹蔵は陽太とは別のベクトルでバカなのだ


見るのまではよいとして黙っていればいいものを、そこから先のことも考えずに吹聴したりするからこうして石動の怒りを買っている


「その様子だと樹蔵に制裁は加えたみたいだな」


「もちろんだ、婦女子の入浴を覗いただけに飽き足らずその体を侮辱したのだ、公的に処刑してやった・・・去勢しなかっただけでも寛大と思ってもらいたいくらいだ」


恐らく石動の中でそのスレンダーな体は相当なコンプレックスになってしまっているようだった


そこまで気にすることでもないような気がするのだが、やはり気にする人は気にするのだろう


「そんなひどいこと言ったなら仕方ないよ、本当に失礼だね樹蔵君」


「そうだろう?まったく、幹原がうらやましいぞ、こんなできた伴侶がいて」


同じようなスレンダーというか幼い体つきの明利もうんうんとうなずきながら猛烈に同意している


なるほどこの二人がここまで仲良くなったのは共通点があったからなのだろう、それがコンプレックスという形であろうと共通意識が生まれれば人間上手くいくものだ


こうしてみるとエルフということなどあまり関係なく、石動はただの女の子であるように思える


ただの女の子であるように茶化してバカにした挙句樹蔵は恐らくズタボロにされたことだろうが、そこは自業自得としか言いようがないだけに擁護のしようがない


自分も石動に対する発言は気を付けようと心に決めながら体についての話を続けているエルフを眺めた後で静希は視線を陽太たちに戻した


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