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J/53  作者: 池金啓太
十七話「追い追われる先に」
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同級生は見た

「なるほどね、そんな事話してたのか」


「うん、鏡花ちゃんももう少しアグレッシブに行ったほうがいいと思うんだよ」


静希と明利は放課後にそんなことを話しながら少しの間学校に残っていた


朝に話したことをそのまま静希に伝えてしまうあたり明利が静希に絶大な信頼を寄せているということがわかるのだが、あまりにあっさりと話しすぎなのではないかとさえ思えてしまう


内緒にしてほしいなどの頼みは受けていないので問題ないともとれるが、さすがにまったくためらわずに話すというのもなかなか問題なのではないだろうか


「で・・・、その結果があれか・・・」


なぜ静希と明利が残っているかというと、鏡花と陽太の訓練の様子を覗き見に来たのだ


普段陽太の訓練は完全に鏡花の担当になっており、どんな訓練をしているのかも全く不明な状態だった、しかもどんな風に会話しているのかもわからない状態である


鏡花の恋路を応援したい明利としては、少しでも情報を集めてアドバイスしたいということで二人の様子を監視することにしたのだ


その結果、コンクリートの演習場の大体中心辺りで炎の色を次々変化させている陽太と、その近くで落ち着かない様子で炎を眺める鏡花が立っている構図が出来上がっている


今は槍の鍛錬ではなく炎の状態を変える訓練を行っているのだろう、陽太は何時もどおりなのが見受けられるのだが、鏡花の様子が明らかにおかしい

具体的に言えば挙動不審だ


「今日デートに誘うって息巻いてたんだっけか?あの様子じゃ平常心保てるかどうかも怪しいな」


「普通に誘えればそれで大丈夫だと思うんだけど・・・問題は恥ずかしがったり、変に強がったりしちゃうかもしれないことだよね・・・」


鏡花は見栄っ張りだ、客観的に物事を見ることはできるだろうが、その中に自分の感情も含めるとなると途端に情報処理能力が低下する


陽太に対して恋を抱いているという考えを持った時と同じような挙動不審っぷりに静希はため息交じりにその様子を明利と一緒に物陰から眺めていた


「そういえば静希君って鏡花ちゃんが陽太君のこと好きって聞いたときあんまり驚いてなかったよね、なんで?」


明利が静希に鏡花のことを話した時、静希が一番最初にした反応は「へぇ、そうなのか」というなんとも普通の物だった


具体的にその時の様子を上げるなら少し笑みを浮かべていたことも印象的だ


「なんでって言われてもな・・・あいつら性格除けば普通に相性いいし、そこまで変な話じゃないとは思ってたけど」


「でも最初はあんなに口げんかしてたのに・・・それに最初鏡花ちゃんは陽太君のこと恋愛対象にならないって言ってたんだよ?」


その話をしたのは女子の入浴時だったから静希はその話は知らないが、それでも静希は特に驚きはなかった


あの二人が出会ってから半年以上、ほとんど毎日のように顔を合わせていれば何が起こっても不思議ではない


「口喧嘩っていったって途中から陽太が勝てないってことを学習して口喧嘩もほとんどしてなかったじゃんか・・・それに正反対の人間って案外惹かれあうもんだろ」


バカと天才


あの二人は絵にかいたように正反対だ


自分の思ったことをなんでも口にするという点では少し共通点があるかもしれないが、基本頭の良い人間と頭の悪い人間は最悪に相性が悪いか、最高に相性が良いかのどちらかに二極する


あの二人の場合相性が良かったのだ


「でもまぁ・・・あいつを好きになってくれる奴が鏡花でよかったと思うよ」


「・・・鏡花ちゃんなら安心できる?」


できるねと確信をもって静希は笑う


昔から一緒に居た静希は、陽太の性格を熟知している


陽太は良くも悪くもバカだ、それを許容できるだけの人が、陽太のことを好きになってくれるかどうかは怪しいところである


特に陽太は能力が暴走しがちだった、両親からも疎まれているし、愛されるということに耐性がない


そういった面を理解したうえで陽太のことを好きでいてくれるような相手がいれば最高だという風な理想を静希を含めた幼馴染と姉である実月は思っていたが、まるでその条件に全て合わせたかのような人物、鏡花が陽太のことを好きになった


陽太が馬鹿であることを理解しながらその指導を引き受け、完璧に能力の指導を行って見せている


彼の家庭の事情を知ってなお、鏡花は陽太を好きでいつづけている


安心できるという言いかたは、実はあまり正しくないかもしれない


普通に、ただ嬉しかったのだ、自分のことのように


苦労している姿を見てきたからこそその思いも一入である


「あとは陽太君が鏡花ちゃんの気持ちに気づいてくれればいいんだけどね」


「難しいな・・・いっそのこと誰かさんみたいに返事聞く前にキスしちまえばいいんだろうけどな」


「・・・もう・・・そのことは忘れてよ・・・」


残念姉貴分の甘言にまんまと惑わされた明利は顔を赤くして静希の体を手のひらで叩く


冷静に考えると何故自分はあんなことをしてしまったのだろうと後悔する毎日だが、その結果今こうなれているのだ、案外雪奈のアドバイスは役に立つのではないかとも思える時もある


もっとも、鏡花にも雪奈からアドバイスをさせるべきかは首をかしげるところだが


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