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J/53  作者: 池金啓太
十七話「追い追われる先に」
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表情と変化

「・・・で、結局遅くまでゲーム三昧と・・・」


次の日、学校に隈を作ってやってきた静希と明利を見て鏡花はあきれかえっていた


陽太が夜更かししたというのはよくあることだが、静希や明利が夜更かしするというのは地味に珍しい


特に体調管理にうるさい明利がこういう姿をしているのは稀だ、しかも夜遅くまで静希の家にいたというのも稀有である


「いやぁ・・・案外盛り上がっちゃって・・・キングビンボーの擦り付けデッドレースが熱くてさ・・・」


「最後にオルビアさんに怒られちゃったけどね・・・遅くまでゲームやってちゃいけませんって・・・」


「・・・なんかあれだな、オルビアがお母さんみたいになってないか?」


元より家政婦のように静希の家のことを取り仕切っていたオルビアではあるが、四人を正座させて叱り始めた時はさすがにやりすぎたかと反省したほどだ


途中邪薙やオルビアもゲームに誘ったのだが、邪薙は部屋の結界の張替え作業を行っているらしく参加できず、オルビアはゲームをする四人をハラハラした様子で見ているだけだった


「それにしてもあれね・・・あんたのところの住人はどんどん現代に染まっていくわね・・・」


「そうだな、まさかあそこでキングビンボーと陰陽師カードのコンボを使ってくるとは思わなかったよ・・・総資産の六割は持っていかれた・・・」


「あのデスコンボ使ったのか、禁じ手を使うあたりさすがだな」


最初はルールも何も知らなかったメフィだが、何故かあり得ないほどに運が良く、サイコロを振れば六を連発、カードを引けばレアカードを入手しまくるというある意味一番恐ろしいプレイヤーだった


それも後半に差し掛かるにつれてルールを理解し、カードこそ最も重要であることを理解したのか巧みにその効果を操り最下位から二位まで上り詰めたが、序盤の貯金をそのままに逃げ切った明利が一位となった


三位は通称デスコンボにより破滅寸前まで追い詰められた静希、ビリは静希によって破滅させられた雪奈である


「ていうか、ってことは明利昨日は静希の家に泊まったわけ?」


「うん、雪奈さんも一緒に泊まったよ?」


さも当たり前であるかのようにお泊り宣言をした明利、さすがに付き合い始めてからそれなりに時間が経ってきたことで多少のことでは動じなくなってきたのだろうか、それとも雪奈というライバル兼姉という存在を得たことで自分から行動するようになったのか


なんにせよそこには今までのように触れ合うだけで顔を赤らめていた明利は居なかった


すかさず明利を引き寄せ顔を近づけ声を小さくする


「あんたらって・・・その、もう静希とやっちゃったわけ?」


最初鏡花の言葉が理解できなかったようだが、数秒の後にその言葉の意味を理解したのか明利は顔を真っ赤にして鏡花を軽くたたく


「鏡花さん、そ、そういう事聞かないでよ・・・!」


「・・・この反応・・・もう済ませた感じ?」


鏡花のにやけ顔を掴んで明利は首を大きく横に振る、少し長くなった明利の髪が鏡花の顔に当たり地味に痛かった


その反応を見てなんだとつまらなそうな顔をするが、明利の顔はまだ赤い


「ていうかさっさとしちゃいなさいよ、雪奈さんに遠慮することも無くなったんだしさ」


「そ、そうだけど、静希君もね、心の準備がいるだろうからお前の好きなタイミングでいいぞって言ってくれて・・・」


「・・・その分雪奈さんを待たせてるわけだけどね」


鏡花の言葉に反論できないのか明利は顔が赤いまま小さくなってしまう


以前より触れ合うことに対しての抵抗はなくなったようだが、まだ性的に触れ合うことに対しては免疫がなさすぎるのか、さすがに最後の一歩というところで勇気が出ないらしい


雪奈は雪奈で明利を一番にしてあげたいという気持ちがあるらしく自分から何かいう事はないようだが、さすがにこのままでは不憫だ


二人同時に付き合うという事なのだが、静希と明利と雪奈という付き合いの長い三人だ、多少のことは問題ないだろうがあまりに停滞時間が長いと雪奈が暴走する可能性もあり得る


その前に幾つか手を打っておくべきだろうかと鏡花は目を細める


「ねぇ明利?この前静希が死にかけた時のこと忘れたの?」


「・・・う・・・」


告白のきっかけともなった実習のことを思い出して明利は身を縮め僅かに手を握る


あれほど強く絶望したことはなかった、そして後悔したこともなかった


そのことを思い出したのか、少しだけ唇をかんで下を向いてしまった


「いつ前と同じようなことになるかわかんないんだから、やりたいこととか、してあげたいこととか、全部やっちゃいなさい、それはあんたのためだけじゃなくて、雪奈さんのためでもあるんだから」


静希と一緒に居たいのは明利だけではなく雪奈も同じだ


だが当の静希は一人だけ、もし静希が死んだら、この二人が同時に強く悲しむことになる


二人を知っている鏡花としてはそんな目に遭ってほしくないし、そんな目に遭わないように努力するつもりではあるが、いつかそんな日が来てしまうことはわかってる


だからこそ、背を押してやらなくてはならない、後悔も何もしないように、今のうちにかみしめておく必要があるのだ


「なんだったら、またメフィとかはうちに預けてもいいから、できる限り早く結ばれちゃいなさい」


鏡花の言葉に明利は小さくうなずく


彼女自身自分がしたいこともしてあげたいことも分かっている


後は自分の中で気持ちの整理と心の準備をするだけなのだ


「確かに・・・何時までも静希君が無事でいられる保証もないし・・・早くやりたいことは済ませておいた方がいいとは思うけど・・・」


「そうでしょ?悔いなく何でもやっておくことが大事よ?」


鏡花の言葉に明利は踏ん切りがついたのか勢いよく頷いて見せる


だがその後に何か気づいたようで少し考える様子を見せた後鏡花に視線を向ける


「・・・でもそれは鏡花ちゃんもだよね?」


「うぐ・・・」


思わぬ明利の反撃に鏡花は眉をひそめた


鏡花は今陽太に片想いの最中だ、以前告白にもならないような宣言をした後で特に何かアクションを起こしたようなそぶりは見られない


他人の背を押しておきながら自らは動いていないのでは説得力も全くないというものである


「陽太君だって静希君と一緒に居る以上いつまでも元気でいられるとも限らないんだよ?鏡花ちゃんこそ早く告白したほうがいいんじゃないの?」


「わ、私はあいつから告白されるのが理想なの!あいつに惚れさせるように努力はしてるんだから」


それこそ接触を増やしてみたり、少し言葉を柔らかくして見せたり笑顔を多くして見せたり弁当を作ってきたりと鏡花の行動は甲斐甲斐しい、普通の男子であれば難なく意識させることもできただろうし、惚れさせることもできただろう


問題は鏡花が好きになった相手が陽太だという点である


「そ、それにあいつだって私の事別に嫌いじゃないみたいだしさ、そのうちあいつの方から・・・」


「・・・」


鏡花が言い訳がましく目をそらしながらそんなことを言っているのを、明利はじっとりとした目で見つめ続ける


陽太が馬鹿である以上、しっかりと言葉にしても伝わらない可能性があるのだ


行動プラス言葉、そして感情を乗せなければたぶん陽太には思いは伝わらないだろう


今鏡花がやっている行動は確かにプラスに働いているだろうが、それが好意に向くかと言われると疑問だ


「あ、あいつの好みの食べ物とかもわかってきたしさ、これからどんどんと」


「鏡花ちゃん・・・」


「お、男を掴むには胃袋からっていうし、これからも弁当作ってあげて、たまにうちに呼んだり」


「鏡花ちゃん?」


明利が笑みを浮かべながら鏡花の顔を掴んで自分に向けさせる


満面の笑みを浮かべている明利と、ひきつった笑みを浮かべている鏡花


普段の二人の関係から考えるとその表情が逆転しているのではないかと思えるほどだ


「今度デートに誘ってみなよ、たぶん断られないよ?」


「で・・・・いやいや、まだその段階じゃないんじゃないかしら?訓練だってあるし、あいつだって暇じゃないだろうしそれに」


「鏡花ちゃん」


「・・・はい」


自分のこととなるとへたれてしまう鏡花に満面の笑みを浮かべて威圧すると涙目になりながら鏡花は了承させられてしまう


相手のことは自信を持って言えるのになぜ自分のこととなると自信を無くすのか、天才などと言われてもやはり鏡花も女の子だという事だろう


「いい?陽太君はあんなだけど、きちんと相手の気持ちを考えられる優しい人だよ?鏡花ちゃんから誘えば絶対に断らないよ、たぶん暇してるだろうし」


「で、でもさ、その・・・何をすればいいわけ?映画とか誘うの?あいつの好みとか全然知らないんだけど・・・」


「そこは二人で話し合えばいいんだよ!何でもかんでも一人で考えちゃダメ、陽太君にも意見を聞かなきゃ」


普段の鏡花と違いどうすればいいのかもわかっていない状況に対して、明利のアドバイスは非常に的確だ


なにせ普段デートをする際に一人で決めるということは基本ない、静希と雪奈と話してどこに行きたいかなどを決めてから遊びに行くことがほとんどだ


自分だけの判断では独りよがりになるうえに、相手に無理をさせてしまう


陽太の場合どこに行きたいかなどを聞けば特に何の疑いもなくいきたいところなどを話してくれるだろう、そうやって行きたいところややりたいことをピックアップしていけばいいだけである


「鏡花ちゃん、陽太君はあれだから、鏡花ちゃんがしっかりしないとだよ、好きなことは好き、嫌いなことは嫌いっていえば陽太君はちゃんと覚えてくれるから・・・たぶん」


「そ、そうかしら・・・」


たぶんとついているあたり明利もあまり自信が持てないようだったが、少なくとも鏡花は多少の自信というか決意が固まったのか、何度かうなずいて握り拳を作って見せる


そんな二人を横目に、男子二人は授業の準備をしていた


「あいつらは一体何の話をしてるんだ?」


「さぁな、いわゆるガールズトークってやつだろ?男の俺らには関係ないって」


完全に蚊帳の外となっている静希と陽太は二人の様子を眺めながら不思議そうにしている


なにせ明利が鏡花を圧倒するなどと言う場面はほとんど見たことが無いのだ、何を話しているのか気になるところだが、下手に会話に入ればデリカシーがないだの女の子には女の子の大事な話があるのだの言われそうなのでとりあえず雑談しながら見守ることにした


誤字報告が五件たまったので二回分投稿


これからもお楽しみいただければ幸いです

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