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J/53  作者: 池金啓太
十七話「追い追われる先に」
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手繰り寄せる先に

十一月も中旬になろうという頃、静希は携帯電話を片手に自宅で電話をしていた


その表情と声音はただの世間話をしているには少々物騒すぎるほどに険悪なものだった


相手はテオドール、前回の半強制的なイギリスへの旅行の際に頼んでいた情報収集の定期報告でこうして通話しているのだが、あまり良い報告はあげられていなかった


『というわけだ、少なくとももうイギリス国内に目標が求めるモノはないだろうってのがこっちの考えなんだが』


「・・・あまりいい知らせじゃないな・・・索敵範囲がイギリスを除いた全世界になったってだけな気がするけど」


静希が依頼したのはリチャード・ロウにつながる手がかりの捜索だ、今まで召喚に関わった事件を引き起こしていることから次も何かしらのアクションを起こすのではないかと読んで、とりあえずエルフと召喚研究を行っている研究者などの調べを行わせている


だがその範囲が広すぎる


どこにいるのかもわからない相手にどう探せというのか


静希も自分で言っておきながらさすがに無理な話だったかと、半ばあきらめムードが漂っている


『あぁそうそう、お前六月中旬は何をしていた?』


唐突に話しが変わったことで静希は一体何を聞きたいのかわからなかったが、とりあえず思い出すことにする


六月の中旬というとザリガニの校外実習があった頃だろうか、あの時は苦労したものだと思い返して僅かにため息が出る


「その頃だったらザリガニを倒してたな、なんかあったのか?」


『ザリガニとは・・・くっくっく・・・お前がそういう遊びをしているとは思わなかったぞ』


「遊びじゃねえよ・・・それで?いったい六月の半ばに何があったんだよ」


本題に入らないテオドールに苛立ちを覚えながら静希は口調を強くする


笑いをこらえながらテオドールが咳払いすると、少しだけ電話の向こう側の声音が低くなる


『その時期に一回、悪魔の召喚実験が行われてる、こっちは非公式だがな、場所はドイツだ』


「・・・ドイツで・・・?」


もしその事件にもリチャードが関わっているとしたら、ずいぶんと過密スケジュールということになってくる


四月に日本で召喚、五月に日本の人権団体に武器の売買してイギリスに行って実験のための接触、六月にドイツで召喚、そして八月に召喚


時系列的には無理はないかもしれないが随分と濃密な数か月を過ごしていることになる


そして八月からまったく動きがない、明らかに何かおかしい


「その事件の詳細が知りたい、わかるか?」


何かしらの手がかりになるかもしれない、聞いておいて損はないだろう


『もちろん調べておいたぞ、犯人は現在逃走中で行方知れず、恐らく契約者になったエルフの研究者だ、相当頭のいかれた奴だってのがわかるな』


「・・・どういうことだ?」


『召喚の際、自分の家族を皆殺しにしてるのさ』


その言葉に静希は一瞬絶句してしまった


以前エドの関わった召喚では研究者全員が殺された、理由は悪魔のトラウマの再現


一瞬でもいいから悪魔に隙を作って、その間に悪魔の心臓に細工をするというものらしい


恐らくその家族とやらは悪魔の隙を作るために生贄になったのだろう


『あー・・・イガラシすまない少し誤った情報を言った』


「あ?どういう事だ?」


『皆殺しと言ったが、見つかった死体は三つ、研究者の父親と母親、そして祖父、だが犯人がその研究者だったとすると死体が一つたりないんだ、弟の死体が見つからなかったらしい』


死体が足りない、つまりその犯人は祖父を含め五人家族だったということになるのだろうか


ただ単にトラウマの再現に必要だった死体が三つだけだったということも考えられるが、もう一つ可能性を上げるのであれば、共犯


弟と一緒になって召喚を行い、二人で逃げた


エルフの研究者ということは弟もエルフだろう、十分すぎる戦力になる

最も実際どうなったかはわかったものではないが


「今そいつはどうなったんだ?行方不明って言ってたけど」


『あぁ、全世界で指名手配されているよ、悪魔の契約者になるために家族を殺したようなサイコパスは野放しにしちゃいられないからな』


「ならお前のところにもそいつの情報は入ってくるんだな?」


静希の問いにテオドールはまぁ一応なと言葉を濁すように答える


今のところ手がかりはそれだけだ、何が目的かもわからない今、リチャードに接触して今なおどこかを放浪しているその研究者はかなり有力な手掛かりになる


「ならそいつをもし見つけた場合、あるいはそいつの逮捕の依頼が出た場合、それを日本の俺のところに持ってくるようにしろ、できるな?」


『ほほう?自分から厄介ごとに突っ込むか』


「これ以上面倒を増やすわけにはいかないんだよ、さっさと解決したいんだ、できるな?」


『オーライオーライ、任せとけ、ただし何時になるかはわからないぞ、どこをほっつき歩いてるかもわからないようなフリーウーマンだ』


テオドールの言葉にその研究者が女性だったということを初めて知った静希はとりあえずテオドールに礼を言った後で通話を切る


手がかりの先、本当につながっているかもわからない糸だが、その先は掴んだ


後はテオドールの連絡待ちになるが、少しずつだが追い詰めている、そんな気がした


今回から十七話スタートです


一話一話を短くした方がいいのかそれとも投稿の量を増やせばいいのか、悩みどころですね


これからもお楽しみいただければ幸いです

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