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J/53  作者: 池金啓太
十六話「示した道と差し出された手」
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万全を

静希達が結果を伝えられたのは夕食を終えて帰って来た時だった


結果として、神父を明日逮捕するべく行動するとのことだった


今日すぐにではなく明日というところが少し悠長な気もするが、警察は警察でいろいろと事情があるのだろうと割り切ることにする


「案外あっさり決まったわね、もっと渋るかと思ってたけど」


「先生の脅しが効いたんじゃないか?なんて言ったかは知らないけど」


実際に城島が警察関係者に今回の情報をどのように伝えたのか静希達は知らない


いったいどのように伝え、どのような言葉を彼らにぶつけたのかは全く不明である


「明日は警察の人たちと一緒に行動するんでしょ?仮面はつけたほうがいいよね・・・」


「一緒っつっても実際に神父と巫女を捕縛するのは俺らだぞ?意識を喪失させた状態で警察に引き渡せ・・・って言われてもなぁ・・・」


相手が能力者とわかっている以上無能力者を矢面に立たせるわけにはいかない


これは城島からの指示のようだった


相手は二人、一人は回復をメインとした補助、一人は熱関係の何らかの能力を保持している、この二人ならば静希達は勝てると城島なりに考えたのだろう


実際静希達も訓練も何も受けていない能力者相手に負ける気はしなかった


仮に悪魔や神格を隠していたとしても、こちらも総出で当たれば勝算は十分にある


「気絶させるのはそう難しくないけど・・・問題は建物内にいる信者だ、確実に一人二人はいるだろうし・・・うまいこと誘導するか、無理やり外に出すか・・・」


恐らく静希達が向かう時には今日や昨日と同じように町の信者たちが祈りをささげていることだろう、そんな中で戦闘を行うわけにもいかないため、何らかの方法で彼らを安全圏まで離れさせなければならない


警察に協力を仰ぎたいところだが、今回彼らは町の周りの道路の封鎖と、教会周囲の警戒に当たることで教会内部に人員を割くだけの余裕はない


この中で戦闘を行えるのは三人、静希と陽太と鏡花


明利は外で待機して周囲の状況を確認し続けるために教会内部へは入らないのだ


「んじゃ信者の人たちは私が担当するわ、怪我しないようにしておけばいいんでしょ?」


「まぁ、できるならそのほうがいいな、頼むよ姉さん」


静希が軽く茶化すと、姉さん言わないのと軽くたしなめながらも鏡花はまんざらでも無いようだった


ともかく無能力者に関しては鏡花が責任を持つと言ったのだ、ここは彼女に任せるべきだろう


「んじゃ俺と静希で二人を担当するってことか」


「そうだな、まずは軽く挑発でもして相手の能力を見せてもらうか、簡単に見せてくれればいいけどな・・・」


無能力者への心配を鏡花へと引き継いだ今、静希が最も懸念しているのは神父史桐の動き方だった


今まで訓練などでいやというほど同級生や教師相手に戦ってきたが、それらはすべて訓練された能力者、だが今回の相手は訓練されていない素人の能力者


能力者で素人というのはかなり珍しい、能力を隠して生活するということはほとんどの能力者にとってかなりのストレスになる


普通の人間に例えれば片腕を使わずに生きていくようなものだ


特につらいのは幼少時、能力がどのようなものであるかもあまり理解していない年頃では能力を使うなと言い聞かされても感情に任せて使ってしまうことは多々ある


そんな中、社会人になるまでずっと能力を隠し通してきた能力者というのは意外と少ない


もしかしたらエルフよりも貴重なのではないかと思えるほどだ


今までいろんな敵を相手にしてきたが、今回の相手はある意味未知数、何をしてくるかわからない相手なのだ


自分たちならこうするだろうという能力者としての思考がたどり着かない可能性があるために、先の行動をどう予測していいのかわからない


特に史桐という男がいったいどういう人間なのか、静希は数分程度しか会話していないために人格把握もできていない


接触して挑発する際にどのような人間なのかを把握できればよいのだが


「それで?ひょっとして私の仕事って信者たちの相手だけ?」


さすがにそれだけでは鏡花も手持無沙汰になるのか、もう少しやることが欲しいようだった


確かに鏡花程の人材を無能力者の保護だけに当てるのは少しもったいないだろうか


「じゃあそうだな、巫女の方の相手も頼むか、もし同調でなんかやばいことができるなら触れるのも避けたいところだし」


明利のような切り札を相手が持っていないとも限らない、何もないと高をくくって接近して殺されたなどと目も当てられない


ここは明利と同等の切り札があると仮定して天敵ともなりえる変換系統の鏡花に巫女の捕縛を頼むことにする


「了解よ、んじゃ睡眠薬かスタンガン貸してくれない?気絶させるならそのほうが楽だろうし」


「そうだな・・・んじゃ睡眠薬を・・・っていうか薬物中毒患者に睡眠薬使って平気か?」


「大丈夫だと思うよ、覚醒剤を投与したすぐあとはちょっと効きが悪くなると思うから私がチェックしてそれから対応すればいいんじゃないかな?」


了解よ、捕まえたら外に持っていくわと軽く答えながら鏡花は静希から睡眠薬の入った瓶を受け取る


準備は着々と進んでいた、教会に向かうまであと半日もない






翌日、静希達は自分たちの装備を確認しながら準備を整えていた


警察の人間も慌ただしくパトカーに乗り込み、押野町へと続く道に検問を敷くべく動き回っている


静希達からすれば一刻も早く準備を済ませ突入したいところだが、こちらに都合があるようにあちらにも都合がある


なんでも道路をいくつか塞ぐだけでもかなりの手間がかかったらしい


国家組織というのは力も大きいがその分面倒も多いらしかった


「先生、一応何かアドバイスみたいなのお願いします」


「ん・・・そうだな・・・」


装備のチェックを終えた静希達は全員黒い外套を羽織っていた


それは以前静希が村端からもらった防弾防刃の両方の特性を保有したもののレプリカだった


村端からもらったものを元に、鏡花が数日かけて創り出した特注品である、少しでも防御力を上げるために静希が提案して全員分作っておいてもらったのだ


「相手はまずお前たちの予想とは違う動きをすると思え、何が起こっても動揺だけはするな、冷静に対処すればまず素人相手に負けはしないだろうが、万全を尽くせ」


前回の反省を含め、城島は強く静希達へ檄を飛ばす


相手は素人と判断して痛い目を見るなどと言うことはありえてはいけない、静希達にとって今回の実習はリハビリでもあるのだ、いつもより慎重に動いても足りないほどに


全員装備と仮面をもって警察の用意してくれた車両に乗り込み押野町付近まで移動する


静希の予想ではこの辺りで工作がいくつかあるのを想定していたのだが、そんなものはなく何の障害もなく押野町へとたどり着くことができた


すでに警察官が何人か行動開始しており、じきに包囲網が完成するだろう


「最終確認だ、鏡花、中にいる信者と巫女はお前に任せる、一人も傷つけずに安全圏に押しのけろ、明利は鏡花が押しのけた人たちの健康状態をチェック、暴れる人もいるかもしれないから気をつけろ」


「了解よ、大船に乗ったつもりでいなさい」


「わかった、気を付けるね」


鏡花は笑みを浮かべながらも高いレベルでの集中を維持しているようだった


いい精神状態だ、今の鏡花なら少なくとも無能力者相手に後れを取るようなことはないだろう


明利は多少気おくれしているようだが、少なくとも今回は誰かを傷つけるという場面ではなく、むしろ誰かを救うであろうという局面だ、いざという時には高い判断力を発揮してくれるだろう


「俺は?とりあえず暴れればいいのか?」


「お前の指示はその場その場で俺が送る、聞き逃すなよ?」


「オーライ、楽しみにしてるぜ」


陽太はようやく自分の活躍の場が来たということが嬉しいのか、準備運動をしながら白い歯を見せ笑っている


今回ほとんどと言っていいほどやることが無かった陽太からすれば確かに楽しみの一つだろう


隠密行動には向かない能力と性格をしているため仕方がないともいえるが


「準備できた、そろそろ頼むよ」


警察の包囲が完了したという報告を受け静希達は体の動きを確認しながら全員仮面をつける


「よし、いくか」


顔を隠した状態で教会へと向かい、明利を外に残した状態で静希と陽太と鏡花が扉を開けて中に入っていく


中では予想通り何人もの信者が教壇の方向へと祈りをささげ、教壇近くで神父である史桐と巫女が教義を行っているようだった


唐突に表れた黒衣の三人に、神父である史桐はわずかに眉をひそめたがすぐに笑顔を取り繕った


「おや、随分と変わった方が参られた・・・いったいどのようなご用件で?」


穏やかな声でそう告げる史桐を逐一観察しながら静希はゆっくりと歩く


鏡花は入り口付近で、静希と陽太は教壇と入口の間で足を止めた


「史桐正敏、見るに堪えない宗教ごっこはここまでにしてもらう、お前の悪行もここまでだ」


静希の言葉に一番反応したのはほかでもない周りで祈りをささげていた信者たちだった


唐突に表れた人間がいきなり自分の信じる宗教を見るに堪えないなどと言えばそれは腹が立つだろう


だが静希が最も感情的にさせたい史桐は全く動じていないようだった


「いきなり何を言うかと思えば、私が悪行など何時働いた?私は神の言葉を聞き人々を導く、ただそれだけを行っている、私だけではない、この巫女も、神の御力に魅入られているのだよ」


史桐が大きく手を振るパフォーマンスをするが、静希が見たいのはそんなものではない


だが自分で言っておいてなんだが、ずいぶんと周りの信者が好戦的になっている気がする


「・・・あなたは、神を信じられませんか?」


不意に届いた声に、静希は視線をその方向へと向ける


それは衰弱しきっているはずの巫女から発せられたものだった


「・・・少なくともあんたたちの神を信じようとは思わないな、見えないものは信じない性質なんだ」


毎日のように神格と生活している静希からすれば、見たことのない神格などいないのと同じである、そんなものを信仰するような気は毛頭なかった


誤字報告が五件たまったので二回分投稿


最近モチベーションの低下がやばい・・・やめるつもりは毛頭ないけどなにか手を打たなくては・・・


これからもお楽しみいただければ幸いです

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