表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
J/53  作者: 池金啓太
十六話「示した道と差し出された手」
623/1032

警察の事情

「ちなみにそれだけじゃないのよ、こっちの写真見て」


鏡花がデジカメを操作して金庫の中にあった札束と、箱の中に大量に詰まったビニール袋に入れられた白い粉を二人に見せる


その瞬間、陽太はうわぁと声を上げ、明利は絶句してしまっていた


この反応も無理はない、静希と鏡花だってこれを見た時こんな反応しかできなかったのだから


「これもうこのまま通報でいいんじゃねえの・・・?これ完璧アウトだろ」


「まぁ待ちなさいよ、他にも見てほしいのがあるんだって」


陽太の言い分ももっともだ、これだけのものが出ていたら即座に突入して神父と巫女を捕縛することだってできるだろう


だが問題はもう一つある


鏡花は再びデジカメを操作して納期という言葉の記されたカレンダーの写真を見せる


「・・・こんなんがあるってことは、どっかの誰かに売ってたってことか?」


「でしょうね、上手くいけばこういう事やってるところ一網打尽にできるかもよ?」


「まぁ、証拠かどうかはわからないけど判断材料にはなるな・・・」


カレンダーに記された日にちを確認していると、静希は自分が見たあの巫女を思い出す


あの顔色、そして痩せ細った体


今回のことに関わるうえであの巫女の存在が気にかかった


神父である史桐が主犯であることはまず間違いないだろう、だがあの巫女はどうなのだろうか


痩せこけた顔とあの隈のせいで正確な年齢がわからなかったのだ、もし共犯なのだとしてもあの扱いは少しおかしい気がする


「なぁ明利、この覚醒剤の副作用ってどんなのだかわかるか?」


「どんなのって・・・いろいろあるよ、それこそプラス面もマイナス面も」


圧倒的にマイナス面の方が多いが、それでも多少なりとも良い面があるというのに驚くが、恐らくは快楽や神経の鋭敏化のことを指すのだろうと静希は少し悩んでから口を開く


「隈ができるとか、痩せるとかそういうのはあるか?」


あの巫女の顔、明らかに異常な隈に痩せた体


痩せているのはただまともな食事をしていないからだとしてもあの隈は一体どうやってできたのか


静希が知りたいのはそこだった


「うん・・・えっと、これを見てくれればわかると思うけど・・・」


明利は携帯を操って静希にある画像を見せた


ネットなどにある覚せい剤を使用した状態の人間の顔の写真だった


その顔は静希が昨日見た巫女と同じように目の下に大きく黒い隈ができ、頬は痩せこけ、明らかに異常な顔をしているのがわかる


あの巫女も、覚醒剤を打ち続けているのだろうか、何故そんなことを


思考を続けている中、さすがに不安になったのか明利が静希の服の裾を掴む


不安にさせてしまったかと反省しながら明利の頭をなで、僅かにため息をついた


「明利、あの時見た巫女、覚えてるか?」


「・・・うん、フードかぶってた人だよね?」


「あぁ、あいつが覚醒剤を使いまくってるかもしれない、こんな顔してたよ・・・」


その言葉に明利は再び悲痛な顔をする


医学と薬学の知識を収めている明利にとって、覚醒剤を乱用するということが一体どういうことなのかはっきりと理解できるのだ、だからこそ、その恐ろしさと辛さがわかってしまう


「今提示できる証拠はこの写真と・・・あと巫女の体調くらいか・・・薬物反応が出たら一発だな」


「これだけでも十分でしょ、まずは佐藤さんにこれを見せましょ・・・一応能力で撮影したとか嘘ついて」


能力者の中には遠距離でも撮影などができる能力者はいる、自分たちがその能力を使って不法侵入をしないでこの写真を撮影したという体で話すのがベストだろうと判断した


警察にわざわざ自分たちの犯罪歴を声高に主張するようなバカな真似はする必要はない


佐藤と担当職員を呼んでから先程の写真を見せると、それを見た全員の顔色が変わった


その変化は静希達への畏怖の念も多少は含んでいただろう、まさか一晩で証拠ともとれるものを撮影したのだから


実際どのように撮影したかは問題ではない、このようなものがあるという事実こそ重要なのだ


金庫の中の薬物と思わしき白い粉を撮影したとき、土地や建物の権利書も一緒に写っていたためにこれが教会内部の写真であることはその場にいた警官はすぐに理解できるようだった


話しが早くてありがたいのだが、どうやらこれだけでは済まないらしかった

これだけの材料があれば、最悪家宅調査くらいはできるだろうが、問題はこの宗教団体の背後にいると思われる存在である


ただ薬物を取り扱っているというだけで片田舎のただの警察には多少荷が勝ちすぎている内容だ


だからと言って無視することなどできようはずもない


静希達の目的は教会の犯罪の証拠を入手し、信者たちが犯罪行為に走らないようにすることだ


ある意味すでに目的は達成していると言ってもいいかもしれない、もうあの宗教団体の核ともなる人物を捕縛できるだけの材料がそろっているのだから


警察の対策会議の中に急遽呼ばれた静希達は少しばかり戸惑っていた


静希達が提示した証拠はその場にいた警官たちにかなりの衝撃を与えたようだったが、同時に大きな動揺を与えてもいるようだった


意見としては二つに分かれている


背後組織をしっかりと捜査してから検挙するべきだというものと、今すぐに突入するべきだという二つの意見


どちらも間違っているとは思えない、警察からすればこれだけのものを与えられたのだ、潜入捜査なり、本庁に報告するなりして大々的に捜査をするべきだというのも理解できる


だが静希達の都合から考えればさっさと住民の犯罪を止めるべきだ


「ねぇ、私たちここにいる必要ある?」


警察の人間が話し合っている中、鏡花は呆れを含めた声で静希に話しかけてくる


証拠の提出をした後は静希達はもう見向きもされない状況だった


状況を軽く説明して、不法侵入ではなく遠視ということにして話をしてあるのだが、その後はどうするべきだこうするべきだなどと話が右往左往していて進む気配がない


確実に逮捕できるだろう神父と巫女を拿捕するのを優先するか、それともその後ろにいるであろう存在も含めて逮捕するために神父達を少しの間泳がせておくのか


「あの・・・静希君・・・」


「ん?どうした?」


話が進まない中で浮かない顔をしたままの明利が小さく声を出す


先程からずっと考え事をしていたようで、じっとしていたのにこんなところで声を出すのは珍しい


「・・・あの巫女の人が気になって・・・もし薬物乱用してるなら、すぐにでも病院に運んだ方がいい気がして・・・」


「・・・確かに重度の薬物中毒になってるならそのほうがいいだろうけど・・・病院への搬送イコール神父逮捕だからな・・・俺らが決められるような内容じゃない」


今回の捜査権はあくまで警察にある、静希達はそのサポートであり始まりの手伝いをしただけのこと、最終的な判断を下せるような権限はない


特に、今回のこれはもしかしたら大捕物になるかもしれないのだ、警察が二の足を踏んでいるのも理解できるし、それを勝手に自分たちが動くことで台無しにすることはない


とはいっても、明利の言い分も理解できる


あの巫女の正確な年齢は静希も分からない


さすがに暗さ、顔色の悪さ、黒い隈、痩せこけた顔のせいで正確な年齢までは把握できなかったのだ


明利が同調すれば薬物を服用し始めてからどれくらいの状態なのか、健康状態などもすぐにわかるだろう


だがそれは同時にもう一度あの教会に足を運ぶということだ


さすがに連日知らない顔が現れれば向こうも怪しむだろう


とはいえ放置できない問題なのも確かである


あの巫女が薬物を使用しているかもしれないというのは勿論警察側にも伝えてある


万が一の際はそれを口切に話を先に進めるようなのだが、相変わらず話が平行線から変わらない


どちらも譲らないせいで無駄な時間だけが過ぎているような気がする


「あの、俺ら今は必要なさそうなので退室させてもらいますね、会議室の方で待機しています」


さすがにこれ以上は不毛だと判断し、静希は班を率いてその場から離れることにする


静希達が出て行くのを確認してまた警察の人間は話し合いを始めたようだが、これから事態が先に進むにはさらに何か必要かもしれない


地方の警察が捌くには少しだけ面倒な事案だ、本庁に応援を頼もうという意見も出ていたが、このままいくと夜まで続きそうだから困る


「なんつーかさ、何であんな面倒な話してんだ?さっさと行ってささっと捕まえちゃえばいいのにさ」


「目の前の小魚をすぐに捕まえるか、その小魚を利用してもっと大きな魚を釣るかでもめてるのよ、どっちも美味しそうだから迷ってるってところでしょ」


「おぉ、そういう事か」


鏡花の説明能力がどんどん陽太用に改良されているようで少し面白い

だが実際そういう事だ


事件の即時解決と住民への対応を考えればすぐにでも神父を捕えるべきだ


だが神父の後ろにいる存在も考慮に入れると話は変わる、もし薬物などに関わる組織がいた場合、もしそのつながりを押さえられれば相当な手柄になる


もちろん事件解決と住民への対応はそれだけ遅れることになるが、それを見越しても得られるものは大きい


「てなわけなんですけど、どう思います?」


自分たちに宛がわれた第三会議室に戻り、仕事中だった城島に事のあらましを話すと腕を組んで悩み始めてしまった


「ふむ・・・実際お前たちが関わるべきことではない、決めるのは向こうで、おまえたちはあくまで手伝いに来ているだけだ、とはいえ話が先に進まない限りできることも限られてしまうな・・・」


城島としてもこういった板ばさみは経験したことがあるのだろう、すぐに行動できるのにも関わらず上が判断を渋って行動できないというもどかしい状況


静希達からすればもう何もしなくてもいいというのならそれはそれで楽でいいのだが、さすがにこの状況を放置しておくのは精神衛生上よくない


なにせ薬物に手を出している人間がいて、重度の中毒になっているかもしれない人間までいるのだ、せめてその事だけでも解決したいものである


日曜日なので二回分投稿


これからもお楽しみいただければ幸いです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ