表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
J/53  作者: 池金啓太
十六話「示した道と差し出された手」
622/1032

隠された違法性

健康とは言えないような巫女の状況を見て、もう少しよく確認してみることにした


顔は日本人、髪も黒い、黄色人らしい肌をしているのだが、かなり痩せこけている


腕などもそこまで肉付きが良いというわけではないが、それ以上に顔に肉がない


骨と皮のような状態に加えて黒ずんだ隈がその恐ろしさを増している


もしかしたら何らかの薬物を使っていてもおかしくない顔色だ、この場に明利を連れてくるべきだっただろうかと悔やみながら今度は体を確認する


身長は百五十程度、衣服もこの寒い季節にもかかわらずTシャツと短パンしか身に着けていない


明らかに異常だ、少なくとも住民から崇拝を受けているような人間の身なりではない


すると鏡花が静希の近くによって合図をする


どうやらこの場所にはめぼしいものは無いようだった、とりあえず静希達はこの部屋を後にし、鍵をかけなおしてから次の部屋へと向かう


『次の部屋はその隣になります、そこには人はいません』


明利のナビを受けながら進むとそこには鍵がかかっていなかった


ゆっくり中に入るとそこはどうやら食事などを作り、食べるスペースのようだった


少なくとも秘密を隠しておくような場所ではないことを確認してから静希達はまた別の部屋へと向かう


次に向かったのは反対側の通路、今度は中に人がいるらしい


鍵がかかっていたためにゆっくり音をたてないように慎重に中に入ると、そこには大きなベッドに幾つかの本棚、そして金庫があった


ベッドでは神父の史桐が寝息を立てている、かなり眠りは深いようでいびきまで立てている始末だ


互いに頷いて静希は本棚を、鏡花は金庫を調べることにした


本棚にあるのは心理学、そして宗教学の専門書ばかり、日記などがあるかとも思ったのだが、その類のものは無いようだった


鏡花が何の苦労もなく金庫の中を開くとそこには札束が幾つかと、土地や建物の権利書などがある


だがその中に、本来あってはならない物があった


それは小さな袋に入った白い粉だった


鏡花が軽く静希の体をタップしてそれを見せると、ゆっくりと顔を近づけてよくそれを観察する


ただの小麦粉というには少々入れ方が物騒ではないかと思えてしまう


小さなビニールの袋に入っているそれは、金庫の中の小さな箱の中にびっしりと詰められていた


鏡花がその粉を能力で調べてみるがそもそもこんな物質に触れたことすらないために、この物質がどのようなものかはわかっても、一体なんであるかを把握することができなかった


だがいくらそんなものの知識が無くても明らかにこれが違法の物であるということくらいはわかる


ただの冗談で小麦粉をこの中に詰めたのだとしたらそれはそれで笑い話になりそうだが、こんなに大量に作っておいてさすがにそんな冗談はありえそうにない


静希と鏡花は頷いてその中をフラッシュの光が部屋の方に漏れないように覆い隠しながら撮影する


金庫の鍵も元通りに閉め、いびきをかいている史桐に視線を向けると、ずいぶん血色がよさそうだった


しかも口からは酒の匂いもする


倉庫同然の場所で寝ている巫女とはずいぶん待遇が違うのだなと思いながら静希と鏡花はその部屋を後にする


最後に入った部屋はいくつかタンスなどがあり、机と書物が置いてある所謂私室のような場所だった


タンスの中には衣服がいくつも、そして本棚には史桐の趣味と思われる本がいくつか、パソコンなども配置されており、ここが史桐の部屋であることは理解できた


静希は迷わずパソコンを起動してみるが、どうやらパスワードが設定されているらしく、それ以上探ることはできず、とりあえず電源を落としておくことにする


タンスの中にも本棚にも変わったところはなく、静希と鏡花はそのまま部屋を後にする


そして問題は最後、通路と通路の間にある謎の空間についてだ


壁と主柱があるにしても開きすぎたこの隙間、何かあるとにらんでいる鏡花は裏口のすぐ近くの壁に能力を発動してその周囲の状況を確認すると、親指を立てて見せた


何かあったのだろう、彼女が能力を発動して壁に穴をあけるとその奥には確かな空間があった


恐らくはどこかの部屋に隠し部屋に通じる扉か通路があったのだろうが、鏡花にとってそんなものは無駄の一言、中に侵入して軽くライトをつけてあたりを照らすと何かの機材がいくつか、そしてその近くには幾つもの鉢植えとそこに根を下ろす植物があった


静希と鏡花に植物の知識があればこの時点でこの植物がいったい何なのかわかるかもしれないが、残念ながら二人にそんな知識はない


ここに明利を連れてくればよかったと本気で後悔しながら周囲を調べると、カレンダーがあり、いくつかの日にちに納期と書かれていた


とりあえずそのカレンダーも撮影し、部屋の内部も撮影しておくことにする

完全に隠し部屋ということもあって、月の光もなく、外に光が漏れる心配もない


ある意味好都合だった


他にたいした資料もなく、その部屋を後にしほかに調べるものはなさそうなので、壁を元に戻してから足早に教会から脱出する


来た時と同じように地下に潜り、明利のナビで二人が待機している場所まで移動した


「お疲れ様、どうだった?」


待機していた二人の元へとたどり着くと、明利が小声で話しかけながら静希達の無事を喜んでいた


陽太はしきりに周囲を警戒し続け、とにかく自分にできることをしているようだった


「いろいろとやばそうなものが見つかったな・・・とりあえず戻ろう、陽太、しんがり頼むぞ」


「任せとけ」


静希達は再び町から出るため道路から少し外れた木々の生えた場所を移動し始める


来た時と同様に途中でパトカーが走ってくるのが見えたのでやり過ごしながら走り、警察署まで戻ってくることができた


フィアの力を借りてまた会議室に戻ると、とりあえず不法侵入が成功したことを確認した


可能な限り痕跡は残さず行動したが、とりあえずすぐにばれるということはないだろう


まずは手に入れた情報をまとめることが大切だ


「いやぁ、疲れた・・・独特の緊張感だったな」


「まったくね、潜入とかは神経すり減らすからやりたくないんだけどなぁ」


実際に忍び込んだ二人はかなり疲弊しているようで仮面を取り外した時の表情はお世辞にも機嫌が良いとは言えなかった


現場で見てきたものが少し衝撃的だっただけにその疲労と不快度は高い


「で?結局何が見つかったんだよ」


「ねぇ陽太君、話は明日にしない?今日はもう遅いし、二人ともつかれてるみたいだし・・・」


明利の言葉通り、不法侵入組の疲労の色はかなり濃い


仮眠をとったとはいえ深夜ということで眠気も襲ってきており、そろそろ全員活動限界が訪れようとしていた


さすがにこれ以上の活動は明日に響く


もしかしたら明日には警察と連携しなくてはならなくなるのだから、今日は休んでおいた方がいいかもしれない


時間を見るとすでに三時を回っている、動き続けていたためにあまり時間を意識しなかったが、こんなに時間が経っているとは思わなかった


「さすがに今日は休みましょ、もう眠いわ・・・」


「そうだな・・・着替えて・・・シャワーは明日でいいか・・・」


机を並べ直して軽く寝床を再構築しながら男子と女子で境界線を作っていく

着替えた後ですぐに布団の中に入ると全員すぐに睡魔に襲われ気絶するように眠りについた


さすがに長いこと活動していただけに疲労が蓄積していたようで、彼らが目を覚ましたのは朝の十時近くだった


寝心地は悪くなかった、決して悪くはなかったが夜更かしをした時の独特の倦怠感が抜けなかった


「ずいぶんと遅い目覚めだな、夜更かしでもしていたか?」


「あー・・・そうですね・・・ちょっとばかし・・・」


「なんでもいいが、しっかり活動できるようにしてこい、あまりいい顔じゃないぞ」


すでに朝食を終えて資料を作成し始めている城島に軽くたしなめられながら静希達は目を覚ますためにすぐにシャワーを浴びに向かい、とりあえず近くのコンビニで朝食を購入した後で夜に手に入れた情報を確認することにした


「とりあえず、撮った写真を見せていくか、特に明利にいろいろ見てほしいものがある、まずは隠し部屋にあった植物からだ」


静希が写したのは隠し部屋にあった鉢植えに根を下ろしていた植物だ


あんな場所で育てているというだけでかなり怪しいが、一応は植物に精通した明利に意見を聞くのが第一である


明利がデジカメの画面をのぞき込むと、一瞬でその顔色が変わる


植物を凝視して、そのあとで周囲の状況を確認しているのだろう、写真の隅々に至るまでを注意深く観察していた


「なんだこの植物・・・なんか妙に細いな」


「・・・この植物を栽培しているだけならまだ問題じゃないけど・・・そうじゃないんだね?」


明利は静希達の表情からこれだけでは話が終わらないということを察知したのか、それとも写真の背後に写っている機材を見て大まかな状況を判断したのか、目を伏せてため息をつく


植物、薬学、医学に精通している明利はそれが何なのか、そしてそれがどういう意味を持っているのかを理解してしまった


「なんだ?これやばいもんなのか?」


「やばい・・・っていうか・・・そうだな、やばいもんだ、専門家とかが持ってるならまだセーフなんだけど・・・」


「少なくとも神父が持つようなものじゃないわね・・・これだけで十分しょっぴけるんじゃないのってレベルよ」


静希も鏡花も何とはなしにこれが何なのかを把握している


明利のこの反応でほぼ確証は得られた、はっきり言って当たってほしくない予想ではあったが、こうなればもはや是非もない


「陽太君、これは覚醒剤の一種の原材料にもなる植物なの・・・薬用にもなるから作ってる人はいるけど、ちゃんと許可を貰ったりしてる・・・でも、隠してるってことは・・・」


覚醒剤と聞いて陽太の表情が引き締まる、薬物と言っても様々ある中で危険度も高く、陽太でさえも知っている一般的な違法ドラッグでもある


それがあの教会で作られている


これはもう疑いようもなくあの神父は黒であることがわかる


土曜日なので二回分投稿


今回のことに関して少し調べ物をしました、おかげで検索履歴が物騒なことに・・・


これからもお楽しみいただければ幸いです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ