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J/53  作者: 池金啓太
十六話「示した道と差し出された手」
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似ている二人

「・・・イガラシって本当にテオドールに似てるわ」


「・・・それは聞き捨てならないな・・・あいつと似てるとか寒気がする」


セラの言葉に静希は眉間にしわを寄せながら僅かに怒りをともした


自分の敵であるテオドールに似ているなどと考えたくもない、あの狡猾さは見習うべきだろうが、彼のようになりたいなどと一度だって思ったことはないのだ


「どこが似てるんだよ、どこも似てないだろ」


「ううん、私があいつに私の護衛になれって言ったとき、イガラシとおんなじ風に断ったのよ」


思い出すようにそうつぶやいたセラの言葉に静希は眉間にしわを寄せる


どこの誰に似ていると言われようと特に気にしない静希でも嫌いな人間に似ていると言われるのは嫌だ


特にテオドールと同列に扱われるのは嫌だった


「そんなに似てるか?」


「顔とか声とかは全く似てないけど、考え方とか、使う言葉とかは似てると思うわ」


追撃のように告げられた宣言に静希はわずかな頭痛を抱えながら額に手を当ててため息をつく


嫌いな人間と似ているなんて考えたくもない


いや、もしかしたら似ているから嫌いなのかもしれない


同族嫌悪というやつだろうか


弱い能力を応用しながら戦う、体を動かすよりも頭を動かすほうが得意、銃器だろうと使えるものは何だろうと利用する


なるほど、類似点は多い


「そんなに似てるって言われるの嫌?」


「嫌だな、あんな奴と似てると思われたくない・・・」


本心から静希はテオドールを嫌悪している、命を直接狙われたからというのもあるのだが、なぜか相容れない


恐らく理屈ではないのだ、あいつとは合わない


最初陽太が鏡花に対して持っていた感情に近いものがあるかもしれない


長く一緒に居ることであの二人はすでに打ち解け、苦手意識など無いようだったが、特にかかわりを持とうとしていなかった静希にとってテオドールは未だ強い苦手意識、というか敵対意識が残っている


「でもイガラシってたくさん活躍してるでしょ?別に誰かに似てるとか言われても気にならないんじゃないの?テオドールから聞くイガラシの話ってまるで物語のヒーローみたいだけど」


「関係あるかよ、それに活躍してるって言ってもたいしたことしてないっての・・・それにヒーローなんてがらじゃない、せいぜいそこらの小悪党だよ」


簡易翻訳のせいか、恐らく主人公とでも言いたかったのだろう、それをヒーローと聞いてしまったあたり微妙に不便だ


だがそんな些細な違いはまったく気にしていないのか、セラは静希の返答を聞いて不意に笑いだした


「なんだよ、なんかおかしいこと言ったか?」


「ははは・・・だって・・・今の言葉テオドールの言ってた言葉まんまだもの!びっくりしちゃった!」


静希は一瞬何を言っているのかわからず、自分の言った言葉を思い返していた


活躍なんて大したことしていない、ヒーローなんてがらじゃない


どれも確かにテオドールが言いそうな言葉ではある


「ちなみに、あいつはなんて言ってたんだ?参考までに聞きたいな」


「いいわよ・・・えっと、私が初めてあいつにあった時かな、父様の友達で、すごいお仕事してるって聞いたとき、すごいのねって言ったら『たいしたことはしてない、ただのしがない小悪党だよ』って」


静希はショックを受けていた


小悪党だという認識はあった、自分は善良な人間ではない、だが大罪人というわけでもない


だからこそ小悪党という言葉を使った、だがまさかテオドールが同じ言葉を使っているとは思わなかったのだ


テオドールは立派な悪党だ、小悪党などと言う些細なものとは一線を画す

なのに自分を小悪党などと、これは笑うところだろうか


「面白い、やっぱりどこか似てるのね・・・あ!そうだ!いいこと思いついた!」


セラは携帯を取り出すとどこかにかけ始める、荷物を持った静希のことなど全く気にならないのか電話の向こうにいる人に向かって何やら話しかけていた


少なくとも休憩はできそうだと近くの建物に体を預けて左腕に持っている荷物を見る


軽く見ただけでもかなりの量がある


服、雑貨、本、食品


よくもこれだけ買ったものだとある意味感心する


明利や雪奈と一緒に買い物はするが、あの二人はそこまで物欲が強い方ではない


長く時間をかけて一つか二つ買う程度だ


だがこのセラは長い時間をかけていくつもの商品を買っていく


その金がどこから出ているのかと少し問い詰めたいところではあるが今はやめておこう


すでに日は高く昼時になろうという時間だ、そろそろ空腹を知らせるべく静希の腹の虫が豪快に叫びをあげることだろう


「イガラシ、行くわよ!」


「・・・行くってどこに?」


電話を終えこちらにやってくるセラを見ながら静希はため息をつく、今度は一体どこに連れていかれるのか、そう思うと期待やら不安やらでもやもやしてしまう


「お昼ついでにちょっと遊べるところよ」


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