大阪・関西万博「工費未払い」 訴えられたイベント企業は来年の「アジア・アジアパラ大会」を超高額で受注

2025年10月19日 06時00分 有料会員限定記事
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 大阪・関西万博は閉幕したが、海外パビリオンをめぐる工事費用の未払い問題は解決していない。このうち、四つのパビリオンの元請けとなり、下請け業者から未払いを訴えられているのが、外資系イベント企業の日本法人。いずれも東京地裁で訴訟になっている。同社は、来年愛知県で開かれる「アジア・アジアパラ大会(愛知・名古屋大会)」でも競技会場の設営などを担うことになっている。(森本智之)

◆フランスに本社を置く「GLイベンツ」の日本法人

 この企業は、フランスに本社を置く「GLイベンツ」。同社ウェブサイトによると、世界20カ国以上に拠点を構え、従業員は6000人を超える。会議やイベント、展示会などの企画から運営まで一貫してサポートするという。

大阪・関西万博の開幕まで3週間を切った段階のマルタ館。工事が遅れていた様子がうかがえる=3月、大阪市で(高関千尋氏提供)

 欧州メディアの日本特派員は「ドバイ万博(2021〜2022年)でも受注するなどイベント業界で著名な大企業。最近、パリ郊外のスタッド・ド・フランス(国立競技場)の運営管理を長期間、担うことになりフランスで話題になった」と述べる。
 日本法人(東京)は2016年に設立された。大阪・関西万博では六つのパビリオンを手がけたという。うちマルタ館では、施工した建設会社(京都市)が6月に約1億1800万円の支払いを求めて提訴した。セルビア、ドイツ両館を手がけた建設会社(大阪市)は8月に、約3億3000万円を求めて提訴。一方、ルーマニア館を手がけた建設会社(大阪市)に対しては、GLの方が未払いがないことの確認を求めて提訴した。この会社は6月の会見で約1億2500万円の未払いを訴えていた。

◆吉村洋文知事は「民民の問題」と逃げ腰

 海外パビリオンをめぐっては、施工会社が決まらず工事が遅れ、吉村洋文大阪府知事らの要請で地元の中小企業が引き受けた経緯がある。未払いを訴える業者は他にも複数あり、5月には「被害者の会」も発足している。被害者は行政に対し資金繰り支援など求めているが「民民の問題」(吉村氏)と応じていない。

元請けのGLジャパン日本法人に対し、下請け企業が工事費の未払いを訴えているマルタ館=8日、大阪市で

 マルタ館訴訟の原告となった建設会社の経営者は取材に対し、「契約は2月上旬。4月の開幕に間に合わせるため、24時間体制で働き、半年はかかる工事を2カ月で仕上げた。裏切られた思いだ」と訴える。未払いにより資金繰りが苦しくなり、20人いた従業員は半分になった。「会社はいつまで持つか分からない」と打ち明ける。
 建設現場は、異例ずくめだったという。

◆現場の混乱「責任はGLに…彼らには管理する能力がない」

 訴状や原告の男性によると、限られた工期にもかかわらず、現場ではまともな設計図面がなく、GL側からの指示も遅れた。さらに途中で、当初の予定になかった追加工事が現場で次々に口頭で発注された。GL側の現場担当者は外国人で日本語を話さず意思の疎通にも苦労したという。その結果、工事はさらに遅れ、一部は、自社で施工することを断念せざるを得なかったという。

9月、国会内で開かれた院内集会で未払いの被害を訴えた高関千尋氏=東京・永田町で(久野千恵子撮影)

 GL側は争う姿勢だ。地裁に提出した答弁書で「担当した工事をほとんど完成させなかったので第三者に発注して工事を完成させることを余儀なくされた」として原告側の求める費用の支払い義務がないと主張する。また、原告の男性が提訴に当たり、大阪市で記者会見したのは、契約で定めた秘密保持義務に違反するとも訴えた。
 ただ、原告の男性と一緒に現場に入っていた別の下請け企業の高関千尋氏は実名で取材に応じ、やはり現場の混乱ぶりを証言。「責任はGLにある。彼らには現場を管理する能力がない」と批判する。
 高関氏が現場に入ったのは開幕まで約3週間の3月下旬。その段階でも骨組みがやっとできたような状況で、間に合うとは思えなかったという。

◆「作ってから依頼主に確認…非効率な作業が延々と」

 なぜそれほど遅れていたのか。「まともな図面を見たことがない。イメージ図ぐらいしかないような状況で、たとえば壁を作る時に、実際に作ってみてから、現場でマルタ政府側の人に確認してもらう。ダメならまた壊してやり直す。GL側はクライアントであるマルタ政府の意向を事前にしっかり把握していなかったのではないか。だからやってみないと分からない。瀬戸際まで追い込まれた中でそんな非効率な作業が延々と続いた」。高関氏の話は、原告男性の主張を補足するような内容だった。

下請け企業が工事費の未払いを訴えている大阪・関西万博のドイツ館=8日、大阪市で

 最終的に英語が堪能な高関氏がGL側の担当者らと日本の作業員らの仲介役を買って出て作業はスムーズになったという。完成したのは開幕2日前の4月11日。GLの現場責任者と、原告の男性と手を取って喜びあった。責任者は男性に英語で「ありがとう」と感謝し「追加の費用なども支払う」と約束したという。
 高関氏は実名、顔出しで証言を続けている。その理由について、...

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    みんなのコメント2件

  • ユーザー
    ジャック・リーチャー 6 時間前

    東京新聞らしい、とても素晴らしい記事。

    横浜市で国際園芸博覧会 を主催する協会は
    大阪万博で工事代金未払いを続ける【GLイベンツ】という外資系株式会社を建築代行業者として認定している。

    こちらもとても心配である。こっちも取材してほしい

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    • ユーザー
      AA 10 時間前

      GLイベンツは過去の国際イベントでも未払いを起こしています。例えば2016年のブラジルのリオオリンピックでは2年後の2018年時点で約1,280万ドルの支払い義務が残っていました。
      今後さらに被害者が増えないよう、この会社の悪質さは国際的に知られるべきだし、万博協会副理事として建設各社の協力を呼びかけたのに民民問題と逃げる吉村知事の無責任さも国民にもっと知られるべきです。

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