「特集」東日本大震災1年~復興への課題

自立につなげる活動を

 東日本大震災の被災地には、支援の物資やボランティアが大量に入った。「甘えている」。最近は被災者からもそんな懸念が漏れ、支援団体は自立につなげるのが大事だと指摘する。
 「支援を当たり前と感じる被災者が出てきた」。宮城県を中心に支援を続ける東京バプテスト教会のドロシー陽子さん(57)は、物資を独り占めしようとする人や仮設住宅で物の山に埋もれて暮らす人を多く見た。「全てをなくし、物に頼ってしまうのは無理もないが、一部の人は他人に分け与える気持ちを忘れている」とため息をつく。
 岩手県大船渡市の仮設住宅で暮らす男性(60)は最近、住民の「甘え」が気に掛かる。炊きだしにお礼を言うだけで片付けを手伝わない人や、ボランティアの見送りが自治会役員だけという光景が目立つと嘆く。
 「物資は要らない物でも必ず受け取る」と話すのは、同県陸前高田市の仮設住宅で支援受け付けの窓口役を務める中川聖洋さん(69)。仮設住宅によって受け取る物資に差があり、「支援団体と個人的なつながりが大事で、一度断ると来なくなる」と明かす。
 スマトラ沖地震の大津波で被害を受けたスリランカを支援しているNPO法人「アプカス」同国事務所代表の石川直人さん(33)は、こうした「支援漬け」は国内外の被災地に共通する傾向だと指摘する。配ること自体が目的化している例もあるといい、「過剰な支援は自立を妨げる」と警告。「一方的に支援して満足するのではなく、何が必要かを被災者と話し合うべきだ」と話す。
 「物やお金を送る支援はもう終わり」。ドロシーさんは春から、地元の女性と漬物づくりを始めるつもりだ。「漬物のほか総菜も売り出せれば活気が出るし、自立につながるので」

※記事などの内容は2012年3月6日配信時のものです

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