誰にも聞かせられない物語。
誰もが物語を生きている。物語に苦しみ、物語に救われる。自由とは、物語から自由になること。自分を縛り付けていた物語から自由になり、制限のない空に向かって、翼を広げて飛び立つこと。物語から自由になるための物語を、誰もが自分の内側に持っている。その物語は、誰にも聞かせることはできない。出版されることもない。発表されることもない。自分しか読むことはできない。
小説家の吉本ばななさんから「お茶をしよう」とお誘いいただき、三軒茶屋にある老舗の喫茶店に行った。ばななさんに会うと、安心する。昔からの友達に会ったような、自由で、のびやかな感覚になる。私は言った。小説と呼ぶにはおこがましいけれど、自分の中に物語がある。はじまりと終わりだけは決まっていて、ほとんど書き上がっている。だけど、それを公表しようとは思わない。曲を作った時も「自分だけわかっていればいい」と思うことがあり、御守りのように、護符のように、自分の物語や自分の音楽と共に生きている。
ばななさんは言った。物語に苦しめられるのは、なんとなくわかるよ。枠みたいなものがあって、その枠に縛られてしまうから、あれができないとか、これができないとか、苦しんでしまうのかもしれないね。小説を書く時は、登場人物たちと一緒に生きているような感覚になるから、本になる時は自分が減るような感覚になることもあるよ。あれ、なんだか今日は頭が痛いなあと思ったら、あ、そうだ、今日は本が発売された日だったって気付くこともある。みんなが自分の本を読んでくれているから、読んでくれている人の意識が、目には見えない形でやって来るのかもしれないね。
私は「動物が好きだ」と言った。昔から好きだったけれど、自分が思っている以上に、自分は相当に動物が好きなことを最近知った。ばななさんは言った。私も犬や猫を飼っているよ。動物は本当に素晴らしいよ。動物みたいに生きるって言うと「獣みたいなセックスをする」みたいに思われちゃうこともあるけれど、動物はとてもよく観察をしているよ。膝の上にちょこんと乗ってきたと思ったら、またすぐに何処かに行くよ。犬はすごいよ。死んでいいって言われるまでは、死なないんだよ。もういいよ、もう苦しまなくていいよって言った時に、コトンと死ぬんだよ。たまにドジな犬もいて、間違って死んじゃう時もあるけどね。
その後、食事会にご招待をいただき、ばななさんを含めた女性三人と一緒に貝を食べた。ビールと日本酒をいただき、あっという間に酔っ払った。誰もが、それぞれの物語を抱えながら、明るく楽しく生きている。みんなもがきながら、幸せに手を伸ばしている。笑ったり、泣いたりしながら、自分と言うものを諦めたり、自分と言うものを許したりする。生まれる時も、死ぬ時も、大事な局面は全部、一人きりで迎えることになる。生きている。それを見抜く眼さえあれば、失敗という人生はない。孤独とは、優しさのことだと思った。
おおまかな予定
10月19日(日)神奈川県横浜市界隈
以降、FREE!(呼ばれた場所に行きます)
連絡先・坂爪圭吾
LINE ID ibaya
keigosakatsume@gmail.com
SCHEDULE https://tinyurl.com/2y6ch66z
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ばっちこい人類!!うおおおおおおおおお!!


赤星と五円と貝と🩷