「生活保護から抜け出せない」何が自立を妨げる? 19歳の女性が見いだした小さな「突破口」
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斎藤碧さん(19歳、仮名)はあるシェルターで暮らしていた。父親による長年の性虐待から避難したためだ。 父親は逮捕され、実刑が確定。ただ、中学1年の途中から学校にも通わせてもらえなかった碧さんにとって、人生をやり直すのは簡単ではない。生活保護を受けていたが、将来に目を向け、アルバイトを始めた。短大に通う学費を稼ぎ、資格を取って自立するのが目的だ。 バイトで稼いだ分は生活保護費から差し引かれてしまうが、高校生らの保護脱却につながるとみなされれば「特例」として差し引かれない。バイト代を学費に充てようと自治体へこの特例を申請したが、結果は却下。高校に通っていないことがネックになった。碧さんのせいではないのに。 「早く生活保護から抜け出したいのに、抜けさせない仕組みと思えてしまう」 一体どうすればよかったのか。(共同通信=宮本寛)
「ずっと高校に生きたいと思っていた」 シェルターで考えた自分の将来
碧さんが母親の再婚相手である父親から初めて被害を受けたのは12歳の時。以来、6年間にわたって性虐待を受けた。中1の途中から父親に通学を禁じられた。家庭内でも孤立させられ、相談相手だった姉の真琴さん(20歳、仮名)と2人きりになることも許されず、携帯電話の番号も知らない。飼い犬だけが心のよりどころだったという。 過酷な生活の中でも希望を捨てなかった。「ずっと高校に行きたいと思っていた」。それでも「17歳の頃には年齢的に遅すぎると思い、諦めるようにもなっていた」。 碧さんから性暴力被害の相談を受けていた姉が昨年3月、警察に通報したことで父親は逮捕された。これが転機となり、支援団体の協力も得ながら猛勉強。高卒認定試験に合格した。
「動物の看護師になりたい」 それでも高すぎた進学への壁
シェルターでの避難生活の中で、やっと将来に目を向けられるようになった。犬に関わる仕事をしたいと思い、オープンキャンパスに通った。そんな中で「ここだ」と思える短大を見つけた。学べる内容が幅広く、学生の相談にも親身に乗ってくれる。就職にも強く、早く仕事を始められそうだと期待できた。 目指すのは国家資格の「愛玩動物看護師」。動物病院やペットホテルで働いたり、シッターになったりと、選択肢が広いのが魅力だった。 ただ、問題は学費。入学金と初年度の授業料で100万円を超える。貯金では到底足りない。生活保護費のうち、食費を含めた生活費をシェルター側に支払うため、自由に使えるのは月2万円程度。欲しいものを我慢し、勉強しながらバイトを掛け持ちするようになった。
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