ミャンマーで臓器を売る人が急増中 軍事政権下で経済混迷、「生きるために」
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内戦が続くミャンマーで借金返済のため臓器を売る人が急増中だ。インドで移植手術を受ける例が多く「腎臓一つ700万チャット(実勢レートで約25万円)が相場」。軍事政権下の経済混迷が背景にあり、経験者は「生きるために他の方法がなかった」と証言した。(共同通信バンコク支局=木村一浩) 【写真】バッタを食べて戦うミャンマー少数民族武装組織の兵士たちは、なぜか明るく楽しげに歌う
▽システム 最大都市ヤンゴンから車で1時間。人口約700人のカンベ村に住むチョウチョウさん(25)は2023年5月に腎臓を売った。2021年2月のクーデターまでは建設作業員として働き貯金もあった。だが政変後に失業しインフレが悪化。息子(3)の入院も重なって借金が膨らみ、返済に追われるようになった。 「腎臓を売らない?」。ブローカーの女(35)に声をかけられ、誘われるままインド・ニューデリーへ。移植を受けるミャンマー人の親族だと偽る書類を用意して現地病院の審査に通り、手術を受けた。一連の手順はシステム化されていた。 病院には臓器を買った多数のミャンマー人が入院しており、似た状況の病院が周辺に複数あった。1カ月半ほどで退院。帰国便には臓器を売った8人が乗り合わせた。 チョウチョウさんは今、ブローカーの女に新たなドナーを紹介し1人当たり1万円相当の仲介料を稼ぐ。実の姉を含め村の住民10人が腎臓や肝臓を売った。3人が買い手を待っている。近くには住民の過半数が臓器を売った村もあるという。
臓器売買は違法だが、行政も警察も黙認している。「命が助かるし村のみんなも借金を返せる」。チョウチョウさんはそう話し「臓器を摘出した書類があれば徴兵も免れられる」と付け加えた。 ▽何も残らない 姉のモーモーさん(29)は2024年、軍政高官の親族(63)に腎臓を売った。手術を受けたのは北東部シャン州の病院だが、手順はインドとほぼ同じ。書類を偽造し審査を通り、700万チャットの収入を得た。 「母親の借金を返済した。金の指輪とネックレスも買ったけど、生活のために売ってしまった」。手元に残ったのはスマートフォン一つだけ。シングルマザーとして娘を育てなければならないが、もう売る物は何も残っていない。 「クーデターのせいで、こんなことになった」。モーモーさんは民主派指導者アウンサンスーチー氏を懐かしみ「スー母さん(スーチー氏の愛称)なら私の境遇に同情してくれる」と話した。 2023年に腎臓を売ったカンコーさん(27)も母親の借金が理由だった。返済後、残った金で村に100平方メートルほどの土地と家を買った。「臓器を売っても、すぐに金を使ってしまう村の仲間を見てきた。せめて何かを残したかった」。カンコーさんはそう話した。
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