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夕陽の河原/Novel by 睡眠直哉。

夕陽の河原

2,427 character(s)4 mins

こちらも前垢の作品です。
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とある小川のほとりで江良明日香は、ぼんやりと夕日の景色を眺めていた。
よれよれになったチョコレート色のウールコートは夕日に照らされているせいか薄茶色に色あせている。、その目は何かへの怯えを見せているようだった。

「明日は仕事ですか・・・・」

彼女は今にでも溜息を吐きそうな声でつぶやき、河原の石ころを小川の水面に向かって投げた。石ころは水面を2度跳ねたのち川の中へと消えていく。
まるで、ストレス発散ができたことに満足したのか彼女は小川のほとりを去ろうとした時、小さい子供にぶつかってしまい、倒れてしまった

「大丈夫?けがはない」

彼女は焦った様子で子供に話しかけた。彼女は子供の姿を眺めるとまるで不可思議な気分を覚えた。なぜなら、服装は中性的なのだが、その髪の毛は目が隠れるほどのおかっぱで生気が無いのである。
やがて、子供はゆっくり河原へと歩き出した。河原のほとりに止まると突然ぶっきらぼうな顔をして河原の石を拾い出し、その石を積み上げ始める。その石はまるで職人技のようだった。
彼女はその様子を見て思わず河原へと駆け寄った。なぜなら、自分も子供と一緒にその石の塔を完成させたくなったからだ。
子供の目の前へ近づいた瞬間、突如として積み上げられた石は崩れ去ってしまった。その光景を見た子供は今にでも泣き出しそうな顔をしはじめた。彼女はお詫びに急いでその石を積み上げることにした。
だが、子供と同じような積み上げをしようとしても必ず二段目で崩れてしまう。何度試しても二段目で崩れる。子供はその光景を見て無邪気に笑い出し、その目の前で石を再び積み上げはじめた。必ずと言っていいほど二段目が上手くいき、先ほどと同じように塔の形になっていく。
その時、彼女の脳内で何かが噴火したかのように子供の積み上げた石を崩した。
彼女は躍起になり崩した石を積み上げようとする。だが、同じように二段目が上手くいかない。何度繰り返しても、何度繰り返しても二段目で崩れてしまう。彼女の心の中には子供がまるで人知を超えた何かを持っていることを恐怖を感じた。それも今、自分がストーカに殺されるかのような恐怖・・・。いや、祟り神に襲われるような恐怖である。
その時、子供は彼女の心情を察したかのような面持ちで無邪気な笑い声をあげた。
その笑い声はまるで悪魔がとりつき、自分への恨みが宿って呪い殺されるような笑い声だった。彼女はその声を聞いて思い出す。

「アキ・・・・?」

動揺している彼女を前にしながらも、子供は無邪気に笑いながら石を積みあげていく。石はまるで鎌倉時代に実在した仏師である運慶の仁王像のような職人技を連想させるかのように天高くまで積みあがり始めた。
彼女はその石が積みあがった時、自分の身に何かが迫ることを悟った。

「やめて・・・・・。捨てたことは申し訳なく思っている。でも生きていくためにはこれしかなかった・・・・・。」

子供の手はてっぺんに差し掛かろうとしたときに止まった。そして、かすれた声で力を振り絞るかのように喋り出す。

「遅いよ母さん。仕事のストレス発散のために僕を虐待したり、父親以外の人間と関わって僕をいじめたりして・・・・。それにお金のために生きたまま僕を解剖して臓器まで売るなんて。それでもらったお金で幸せなの?」

子供は前髪をかき上げると、その顔を見せた。両眼はブラックホールのように穴が開いている。にっこりとした口元は血のようにどす黒い。彼女は思わず声が「あっ」となった。河原から逃げようとしても逃げきれない。まるで自分が殺した子供に今にでも内臓を引き出されそうな恐怖を覚え、目を閉じる。だが、子供は母親である彼女の目の前に残酷無情にも近づいてきた。

「僕は母さんの道具にされた・・・・。許さない」

子供は彼女にそう囁いた。彼女は目の前で異形の顔をした子供を見た瞬間すべてのことを思い出した・・・・。

「そうだ・・・・。貢いだばかりに・・・。ストレス晴らしで貢いだばかりに・・・・。」

彼女は子供を突き飛ばし、急いでその石を崩した。石は豪快な音を立てて崩れ去っていく。子供は大きな声で笑いだす。

「お母さん、残念だよ。その石が積みあがればお母さんは救われたのに」

彼女は動揺しながらも勝ち誇ったかのように笑いだした。喉からしゃがれた声で子供に語り掛けた。

「そ・・・・・・・。笑わせないでよ・・・・。あ・・・・あれは仕方なかったの・・・。」

子供は呆れたかのような笑いを始める。
彼女もそれにつられて大きな声で笑いだし、今にでも殺意を向けながら子供に突進しようとした。その時、河原から無数の手が彼女を掴みだしゆっくりと河原へと引きずりこもうとした。

「何するのよ・・・・。何するのよ・・・・・。」

彼女はイヤイヤ期の子供みたいに騒ぎ出しながら川から伸びる手を振りほどこうとする。だがその手は彼女を強い力で川の中へと引きずろうとしていた。
すると河原のすすきから、無邪気な子供たちがたくさん姿を現し、一斉に不気味な合唱をする。その合唱は彼女が河の底へと引き摺られ、これから受ける罰を暗示し、お経のように聞こえてきた。彼女は大きな声で笑いだす。それはまるで自分が「運命」に対して如何に無力化を悟ったような達観性と虚無の入り混じった笑いだった。
やがて、合唱が終わると子供たちは無邪気に笑い出した。
その頃にはもう彼女の手は川の中に浸かっていく。やがて、その細い手から力が失われていき砂粒のように川の中へと消えていった。そして、子供たちはそれまで何もなかったかのように一斉に消えていく。その顔は魂を救われたかのような面持ちだった。
夕日に照らされた川は今日も何事もなくきらめている。しかし、河原にはボロボロになりずぶ濡れたチョコレート色のウールコートが残っていた。


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