誤字報告もありがとうございます。
説明を受けて分かったことは、ここは明らかに狭間の地とは異なることである。十五、十六くらいの子供たちがキヴォトスを動かしているというのだから、面白いものだ。また、学園一つ一つが国家と言っていいほどの規模を持っているらしい。そして、この地たるトリニティ総合学園は非常に歴史のある学園であり、三大学園の一つでもあるんだとか。トリニティでは三人の生徒会長が治めているようで、今目の前にいるミカちゃんがその一人であるとのこと。この事実を知った時は思わず声が出てしまった。
「三人の生徒会長」と聞くと思わず「神肌のふたり」を連想してしまうのだが、流石に「だいたい三人の生徒会長」などということはないらしい。
この説明において明らかになった重大なことは、殺人を犯してはならないことである。人を殺してはいけないとはな……。他の褪せ人たちも大いに驚愕するだろう。まあ、平和とはそれでまったくよいのだが。
「この地で最初に会った人が話の通じる者でよかったよ。最初に不良とやらに出くわしていたら殺人者となっていただろう」
「はあ……勘弁してよもう……」
また、キヴォトスでは銃という武器を携帯するのが常識とのこと。クロスボウではダメなのだろうか。曰く、それは滅多に見ないんだとか。無事に冒険ができるとよいのだが。
ちなみに、銃のことを何も知らないという旨を話したことにより、私という褪せ人は相対的に時代遅れの者ではないかと判断されることとなった。この先、私の適応力が試されるぞ。文明万歳!
「あとは私が過ごす場所か、まあどこでもよいのだが」
「うーん……私の家で過ごしてく? 空き部屋あるから貸せるよ」
ミカちゃんは少し頬をかきながら、どこか照れくさそうに言った。ほう、よそ者の私に部屋を貸すとはな……随分と度胸があるじゃあないか。そういうのは嫌いではない。例えば、血の君主、モーグ。自分を殺そうとした者を逆に勧誘したり、褪せ人と同じく被差別民族に当たる「しろがね人」を迎え入れたり、などといったことは感嘆に値する。ならばこれを拒絶するという手はない。
「では、生徒会長サマのお恵みにあずかろう。それでよいのだな?」
「その呼び方やめて。まあそれでいいよ、でも私の家で粗相とかしないでね?」
「これでも私は上流だったんだぞ、貴族に相応しい立ち振る舞いはできるさ」
ふーんと頷くミカちゃんに釘を刺されるが、私は魔術を学べる程の上流階級だったので安心してほしい所存である。しかし厳刑を宣告されてしまったようだが。このことを他人事のように思っている理由は、その罪を覚えていないからである。私の罪は、私の名前と一緒に薄れていってしまったのだ。
「そういえば貴方の名前を決めてなかったね、何か希望とかある?」
やっぱり名前はあった方がよいのか? こう考えるのも二度目だ。別に要らないだろう、と疑念の目を浮かべるも、口は勝手に動いていた。
「……星や月と関連のある名前で頼む」
なぜ、そんなことを口走ったのか。私は、星と月が好きなのだ。湖のリニーリエ、霧深く風光明媚な湖の夜空を彩る星月が美しかったから。創星雨、輝石の魔術のはじまりを象徴する「伝説の魔術」、暗黒の星雲から生じる凄まじい星雨に心奪われたから。とあるカーリア王女が出会った月、冷たく暗い神秘の月に魅了されたから。
「おっけー! ちょっと待っててね、今調べるから!」
ミカちゃんがそう言うと、彼女は何かの道具を取り出して操作し始める。初めて見る薄い長方形のそれに私の目が釘付けになると、彼女もその視線に気付く。
「そっか、これも知らないのか…….銃と一緒に買わせなくちゃね」
「しかし、本当によいのか? 私は銭無しだぞ? ああいや、現地の通貨を持っていないということだ」
まあ、情けない。貴方は巫女無しだけでなく銭無しでもあるのですね。あの白面の男の幻聴が聞こえた気がするが、気にしなくてもよいだろう。だが、ミカちゃんがそこまでしてくれるのは何故なのだろう。もちろんその恩恵もありがたいのだが。
「別にいいって! 私の分のお金もちゃんと取っておいてあるし! まあティーパーティーの予算使ってもいいかな?」
おい最後。碌でもないことが聞こえた気がするが。まあいい、このお恵みには感謝しなければいけない。なにせ、こんなに手厚くしてくれるのは初めてな気がするからな。
「分かった。────────ありがとう」
「フフッ、どういたしまして!」
感謝を伝える、顔を綻ばせながら。それに呼応してか、ミカちゃんも思わず笑顔になる。ああ、私は嬉しいんだ。だって、こんなに気遣ってくれたのは滅多になかったんだよ。それだけで私は十分だった。
「ねえねえ! 『アステリア』っていうのはどうかな? 『星座』『星の女』っていう意味なんだって!」
曰く、とある神話に伝わる女神の名前でもあるらしい。畏れ多いことだ、私が女神の名を名乗るなど。あまり言えないことだが、実は私は女として育てられた男なのである。加えて中性的な声をしているので余計に拍車がかかる。まあ、私は影の地で出会ったティエリエという青年を女性だと勘違いしたのだが。私と似た境遇の仲間を見つけてちょっと嬉しかったけども。とはいえ、己の容姿、己の性別に苦悩したことはない。だからこそ、女神の名をすんなりと受け入れることができる。
しかし、「アステリア」か。「暗黒の落とし子、アステール」、悪意ある星とも呼ばれる外なる神の名に似ているな。何の運命なのだろうか。
「それでよい。気に入った」
「じゃあアステリアで決まりだね! よろしくね、アステリアさん!」
「名前を呼ばれるのは新鮮だな、フフフッ」
ミカちゃんに出会い、キヴォトスとトリニティのことを知り、銃やらスマホやら*1の新しい文明も知り、名前も与えられた。狭間の地から転送されて色々とあったが、ようやく一段落が付いた。さて、あとは何をしようか──────そう考えていると、ふと部屋の扉からノックされた。賓客の予感……体力を回復する緋色の聖杯瓶を念の為に飲んでおく。
「入りたまえ」
「入っていいよー!」
こちらの声に呼応して、扉が横にスライドされる。そこにいた者は。
「私と同じ褪せ人が現れたとのことだが……ああ、お前か。エルデの王よ」
戦斧を振るう屈強な勇者の装束。背中に背負われた二本の戦斧。その装束と戦斧はキヴォトスでは似つかわしくないだろうが、それでも。数々の戦いを勝ち抜いてきたであろう、歴戦の風格を感じさせる。
「貴公は……ネフェリか!?」
「あっ、ネフェリさん! 来てくれたんだね────えっ、エルデの王?」
我が戦友にして、孤高の戦士、ネフェリ・ルーその人だった。
セイアを生存させる→黄金樹に誓ってハイマの大槌を振り下ろすミネ団長を見れる
セイアを原作通り寝かせておく→フロムゲー特有の手遅れ感を味わえるかもしれない
さて、どうしようか...
…誰か、俺の原作を知らないか… 水たまりに、落としちまったみたいなんだ で、原作って知ってます?
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ブルアカもエルデンも知っている
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ブルアカのみ知っている
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エルデンのみ知っている
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ブルアカもエルデンも知らない