Tarnished Archive   作:助動詞

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『ヘイロー』
キヴォトスの住人達が、頭上に浮かべる光輪
個人によって、形や色、大きさが異なる

光輪は持ち主に力を与え、また肉体を途轍も無く頑丈なものにする

だからこそ、キヴォトスの住人は死を恐れるのだ
それが、普通には起こり得ぬ故に


エピローグ

 

死ぬかと思った。まさか言葉だけで生命力を持っていかれるとは思わなかった。70万ルーンへの執念を胸に、何とか食いしばる事に成功した訳だが、ちょっと瀕死、今際の際だ。一応2種の聖杯瓶は飲んでおいたが、正直回復した気がしない。

 

祝福へのワープを使いラニの元へ馳せ参じたあなただったが、ちょっと他人には言えない理由により、彼女からの余りにも鋭い言葉の剣でじっくり数時間をかけて致命の一撃を喰らったのだ。さらに数週間の会話拒否。正直ちょっとメンタルが死にそうだ。

 

落ちた気分をどうにかするべく、『純血騎士褒章』を使ってモーグウィン王朝にワープ、しろがね人共をニーヒル!ついでに円卓に銃を強化しに行こうかと思ったが、キヴォトスと狭間の地の時間がどのような関連をしているのか不明であり、よって皆に黙って狭間の地へと戻る事は出来ない。

 

向こうにほんの数分滞在しただけでこちらが朝になり、あなたの自室である空き教室に誰も居ないのをホシノ先輩が発見、彼女が心配の余り発狂。……とならない保証はどこにも無いのだ。

 

それに狭間の地からキヴォトスに戻る際、ラニの居る例の空間を経由する必要があるだろう。今のラニに会う程の度胸は、生憎持ち合わせていない。

 

……待てよ、そう言えばスマートフォンがあった。これでメッセージを送るか残しておけば良いだろう。あなたはスマートフォンを取り出し………

 

『新着メッセージ ……件』

 

『星見君、あれから身体の調子はどう?どこか痛んだり、違和感があったりしたらすぐに言うんだよ?』

 

『本当にいつでも大丈夫だから。もしも急を要するなら、『シャーレの先生の紹介だ』って言って、○○○─☓☓☓─△△△△に電話してね』

 

『それじゃあ、また明日』

 

 

 

『ねぇ、星見?無事?何か問題とか起こってない?大丈夫?生きてるわよね?』

 

『ねぇ、既読つかないけど大丈夫よね?』

 

『(心配するようなキャラクターのスタンプ)』

 

『不在着信』

 

『これを読んだら何か返事をお願い』

 

 

『夜分遅くにすみません。星見さん、具合などは大丈夫ですか?撃たれた場所などに、違和感や痛みなどありませんか?』

 

『星見さん?』

 

『不在着信』

 

『すみません、こんな時間に電話なんて……』

 

『また明日、元気に会えますよね?では、おやすみなさい』

 

 

『やあ星見!こんな時間に悪い!話は聞かせて貰ったぜ、お前、カイザーとやり合ったんだって?』

 

『ヘイローも無いのに良くやるじゃないの〜!ま、風紀委員会の皆様の手によりリニューアルした我らが柴関ラーメン店、楽しみにしておけよ!』

 

 

『星見、撃たれた場所は大丈夫?痛みとかは無い?』

 

『あ、夜中にごめん』

 

『寝てた?こんな時間だし、しょうがないね』

 

『大丈夫?悪い夢とか見てない?なにかあれば何でも言って。相談に乗るから』

 

『おやすみ。また明日』

 

 

『星見、俺だ。話は聞いたぜ、カイザーとやり合ったんだろう?』

 

『体は大丈夫か?なにか胸騒ぎがしてな、心配になって連絡しちまった。夜遅くに悪かったな』

 

『それじゃあ、また今度、お前さんと働くのを楽しみにしているよ』

 

 

『星見君、こんばんは〜☆』

 

『その、今日は大丈夫でしたか?』

 

『なにか困った事があれば、何でも言って下さいね〜☆』

 

 

『不在着信』

 

『うへ、夜中にごめんね〜』

 

『ちょっと声を聞きたくて』

 

『いや〜、幽霊でもちゃんと寝れるんだね〜。ユメ先輩、熟睡だよ〜』

 

『それじゃあ、また明日』

 

『不在着信』

 

『ごめんね〜、ちょっと操作をミスっちゃった』

 

『不在着信』

 

『いわ〜、またやつちゃったよ』

 

『↑ごめん!誤字!いや〜、おじさんももう歳だね!夜中に何度もごめん!それじゃ、おやすみ〜』

 

 

………まずいんじゃないか?ひょっとするとこれはかなりまずいんじゃないか???

 

現在時刻は夜の2時。不死ではない人間は、一般的に眠りについている時間である事を、あなたはキヴォトスでの生活で知っていた。今返事をしても大丈夫だろうか。大将とロボットの従業員の彼は明日の朝で良いとして、セリカとホシノ先輩には早急に返事をした方が『星見?既読が付いたって事は今生きてるのね?大丈夫なのよね?』……。

 

繰り返すが、あなたは不死だ。まかり間違っても、『生きているか?』などと聞かれる様な存在では無い。

 

……それともここキヴォトスにおいては、それ程までに『死』というものがタブー視される概念なのだろうか。あの戦闘で、調子に乗って戦技『死の刃』や祈祷『黒き剣』を使わなくて良かった。

 

セリカとホシノ先輩に『問題ない、私はちゃんと生きているさ』と返事をして、あなたはある作業に取り掛かった。柴関ラーメン店の制服の補修の続きである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはようございます」

 

『おはよ〜う!……あれ、ノノミちゃん?何だか元気が無いけど、大丈夫?』

 

「あ、ええと………その、余り寝られなくて……」

 

『……そっか。そうだよね、あんなの見たら……』

 

「ええ……。彼が不死である事は知っていたのですが……いざ『見て』しまうと、やっぱり……それに、夢にまで出てきて………」

 

「おはようございます。その、星見さんは……」

 

「"あ、おはよう、アヤネちゃん。彼なら自室で柴関の制服の補修をしているよ。セリカちゃんも彼に会いに行ってる"」

 

「あ、はい。少し様子を見て来ますね」

 

「……この様子だと、アヤネちゃんも………」

 

「うん、大丈夫かな……」

 


 

「あ、星見さん、セリカちゃん、おはようございます。その、昨日は夜遅くに連絡してしまい、すみませんでした」

 

セリカにも言ったが、特に問題はない。謝る必要も特に無い。

 

あなたは一応不死であるから、睡眠は必ずしも必要、という訳では無いのだ。聖杯瓶の補充の目処が立った今、あなたにとって睡眠を取る事の意味ははっきり言って限りなく薄い。

 

と言うわけで、いつ連絡をくれても構わない。戦闘中は流石に控えて欲しいが。

 

「……でも、ちゃんと寝なさいよ?」

 

まぁ、寝れる時には出来る限り寝るようにはする。さて、皆揃った事だし、そろそろルーンを回収しに行きたいのだが、良いだろうか?勿論行くのは自分一人だ。自分の為に、皆にそこまで迷惑をかける訳にはいかない。

 

「待って下さい、一人で行くつもりですか!?」

 

「私達が同行するわ。一人で行かせるなんて、とても………。『なぜ?』って、それは……だって、あんた、銃弾一発なんかで死んじゃうじゃない。……もう、あんたに、死んで、欲しくなんか………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かくして、あなたは対策委員会総出(アヤネと梔子先輩はホログラムでの参戦である)でルーンの回収に赴く事にした。電車はやはり凄い速さだ。ものの数十分でアビドス高校の最寄りの駅から砂漠まで着くのだから。

 

……心無しか、トレントが更に拗ねた気がする。おいしいフローズン・レーズンを作るのでどうか機嫌を直して欲しい。

 

……ルーン()と言えば。なんとアビドス高校の抱える借金の全てが1夜にして大幅に減少していた。なんと残りは億を切っている。理由は単純。彼らが殺人を───ここキヴォトスにおいて最も重い罪を───犯してしまったからだ。死体も無い上に殺された本人はこうして元気にやっている訳だが、それでもあなたが殺される瞬間は風紀委員など多くの人間が目撃している。

 

なおあなたの死や不死性については、キヴォトスのトップシークレットとして扱われる事になった。

 

主犯であるカイザー理事長については………正直な所、あなたには良く分からないのだ。知らされていないのである。あなただけではなく、先生にも。カイザー自体は、企業としてのその力を大きく削がれた事だろう。

 

殺人犯である彼は『厳罰に処せられた』そうだが、どの様な罰かは『いくら先生とはいえ、キヴォトスの外部の人間に教える訳にはいかない。これは君たちの為でもあるのだ』と言われ、結局知る事は叶わなかったのだ。

 

先日戦闘を繰り広げた地点に到着。『ヴァルキューレ』なる警察組織の規制を掻い潜り死亡地点を目指していると、ノノミ先輩が金色の細枝を見つけたようだ。

 

「あ、ありました!金色の枝です!あれで間違いはありませんか?」

 

「ああ、間違い無い。……回収完了。悪かったな、私の不注意でここまでの事になってしまって」

 

「大丈夫ですよ〜☆」

 

「ククッ、良かったですね。……成る程、それは『ルーン』と呼ぶのですか、不死の稀人……いえ、星見さん。調べようにも回収ができず、難儀していた所なのですよ」

 

「「"っ…………!?"」」

 

振り返れば、そこには奇妙な人型の『何か』が立っていた。黒い服を着ていて、皮膚の有るべき箇所は真黒、顔面は目口の箇所がひび割れている。狭間の地ではお馴染みの人外、異形の類だろうか。幸い敵意は見られない。敵意は見られないのでホシノ先輩には鎮まって欲しい。

 

「アビドス高校の皆様、はじめまして、またはお久しぶりです。私は『黒服』という者です。……早速ですが、本題に入りましょうか」

 

そう言うと、彼はあなたの方を見た───目口の様に見えるひび割れがそれらの役割を果たしているなら───様に思う。

 

「……いやはや、『エルデンリング』……『黄金律』……『修復ルーン』……数多く、興味を惹かれる単語の数々。………そして、何よりも」

 

「見させて頂きました。自らを竜に変じ、何処からともなく武器を取り出し、手から爆炎を生じ、更には死者を黄泉帰らせた『魔術』と貴方が呼んだ業。……死をも乗り越え、蘇るその生命。……ええ、ええ、非常に興味をそそられます。貴方に感謝を。こんなにも心が躍る心地は、本当に久しぶりです。良いのでしょうか、最近は幸運な出来事ずくめです」

 

「"………"」

 

「何が言いたい、目的は何だ」

 

「いえ、私は単純に彼に感謝を伝えたかっただけですよ。できればお礼も。……ああ、手荒な真似はよした方が良いかと。ヴァルキューレに見つかっては、困るのはそちらもですよ?……では、私はこれで。お先に失礼します。……お礼はまたの機会に致しましょう、今、私は歓迎されて居ない様ですから」

 

「………星見君、あいつが例の『黒服』だよ。……何をされるか分からない、どうか本当に気を付けて……」

 

当然だ。皆の精神衛生上の観点からも、自分は死ぬ訳にはいかない。

 

『みんな!大丈夫!?怖くなかった!?』

 

「とても怖かったわ。主に星見があの人に突撃していかないかって事が」

 

セリカは自分の事を何だと思っているのだろう。

 

「はい、大丈夫です☆そろそろ帰りましょうか」

 

「そうだね〜。アヤネちゃん、案内をお願いね〜」

 

『はい、お任せ下さい!』

 


 

アヤネの案内の下無事にアビドスへと帰還したあなた達は、このメンバーでは最後となる会議を行っていた。というのも、先生がシャーレへと帰ってしまうのだ。

 

『帰ったら……溜まってる仕事をやって、溜まってる仕事をやって、それから溜まってる仕事をやって、後は溜まってる仕事を完遂して、その後で書類を片付けるんだぁ……あっはっはっはっはっはっはっはっ………………』とは彼の談。これ以上無い位に目が死んでいた。

 

梔子先輩は、このままアビドス高校に残る事にした様だ。霊体の、それも今のあなたのように一発の弾丸が命取りとなる彼女を放逐する事は出来ない。先生によれば彼女をシャーレの所属とする事も可能なようだが、梔子先輩の意思により、アビドスに所属する事になった。

 

彼女はここ一年と数ヶ月の間、学校に出席していない。よって出席日数とやらが足りず、留年した二年生として籍を置く事になるらしい。

 

『ひぃん、ホシノちゃんが先輩になっちゃったよ〜』

 

「ん、同級生が増えた」

 

「これからよろしくお願いしますね、ユメちゃん☆」

 

『うん、改めてよろしくね〜!』

 

「先輩……先輩が……本当に帰って来て……うぅっ………」

 

さて、シャーレへと帰る先生に、いくつかの贈り物がある。先生はあなたや梔子先輩の様に、弾丸が致命となり、そしてあなたの様な敵への対抗手段や防御手段を持っていない。よって……

 

「『捧闘の盾のタリスマン』に白い秘文字の指環、歩哨の松明、召喚サインを書いた紙片、指薬、それから………」

 

「"多い多い!多いよ!?それに一応防御手段はあるから!"」

 

「……そうか?だが一応受け取っておけ、指環と紙片と指薬とタリスマンだけで良いから……」

 

「"松明しか減ってない!?"」

 

「あ、あれです。どこかで見たことがあると思ったら、『一人暮らしをする子を見送る、不安だから色々持たせようとする親』です」

 

「……あ〜、確かにね〜……」

 

「"じ、じゃあ受け取っておくよ、ありがとうね。……それじゃあ、またね。何かあったら、シャーレにおいで。いつでも歓迎するから"」

 

「礼には及ばない。どうしてもと言うなら、ラニの機嫌を直せる言葉や行動を教えてくれないか?」

 

「"え、ら、ラニさんの機嫌……?な、何があったの……?……えっと、ごめん、それはちょっと力になれそうにないかな……"」

 

「……そうか。……他を当たるとするか。……では───」

 

『「「「「「「ありがとうございました!さようなら!」」」」」」』

 

「"うん、またね〜"」

 

そう別れを告げて、先生は連邦生徒会のヘリに乗り行ってしまった。……さて、自分も少し用を済ませるとしよう。

 

「……え?『少し狭間の地に戻る、必ずキヴォトスに帰ってくるから安心しろ』……?まあ、良いですが……」

 

「良いですか?必ず、必ず戻って来て下さいね?」

 

アヤネから許可を取ったあなたは、内心ある種の覚悟を決めて『純血騎士褒章』を使用した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

モーグウィン王朝へとワープする事に成功したあなたは、ある知人に会うために地図を開いてリムグレイブの曇り川の洞窟へと再びワープした。

 

洞窟の入り口に出現したあなたは、洞窟の外を見渡した。

 

懐かしい風景だ。狭間の地での思い出が脳裏を駆け巡り、頭痛と吐き気がこみ上げてくる。

 

あなたは踵を返し、洞窟へと入って行く。内部を駆け抜け、最深部へと到着。目的の人物を発見したあなたは、彼に話しかけ、事の顛末と相談したい事を伝える。

 


 

「……という事があってな。パッチ、彼女の機嫌を直すにはどうすれば良いと思う?」

 

「知るか!何で俺に聞くんだよ!?それに何だよ『キヴォトスという異世界に行ってきた』って!?最後に会ってからまだ1日も経ってねぇぞ!夢でも見て「……何だと」いや、何でもねぇ。何でもねぇからそのハルバードを一旦しまグボァ!?い、痛え……」

 

「……もう一度、ラニに謝りに行くか……」

 

 





これにてアビドス編のお話は完結です。3章や番外編については今しばらくお待ち下さい。それと妙な終わり方ですみません、話の畳み方がどうにも分かりませんで……



言い忘れていました。アンケートは7/4で締め切りとします。票が多かった順に投稿しますので、お楽しみに。 ……ならアンケートを取る意味無いんじゃあ無いか、という質問は受け入れません。

ただし、多くの人に投票頂いているのですが、『影の地探訪記』につきましては最後の投稿とさせて頂きます。話数がどうにも多くなり過ぎる気しかしないので……。
所でこれどうしましょうね。対策委員会や先生達と共に影の地へ……というご意見を感想にて頂いたのですが、そうすると少なくともアビドス組が人型の敵・異形の敵問わず『殺し』をしてしまう、或いは通信などで参加するにしても何度もそれを目撃してしまうんですね。筆者的にはその展開はどうしても書きたくないのです。わがままな作者ですまない。

それにフロム・ソフトウェアお得意のグロテスクな敵や積み重なる死体の山も見なければなりませんし、キヴォトス勢の参加は見送ろうとしたのですが、そうすると原作タグを『ELDEN RING』に変更しないといけなくなります。ブルアカ要素が殆ど無くなってしまいますので。

……いや〜、どうしたものですかね……。別作品として投稿しましょうか……?

とはいえ、今はこの言葉を。

これまでのご愛読、本当にありがとうございました。
それでは、またいつか。

もしも主人公がやって来たのが、原作開始前(アビドス編が始まる前)のゲヘナだったら?

  • 給食部ルート
  • 美食研究会ルート
  • 温泉開発部ルート
  • 激長!便利屋ルート
  • やっぱり激長!風紀委員会ルート
  • 全部書いて♡
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