死後の世界
ドイルが数々の霊媒による降霊会などを通じて聞いた死者からのメッセージによって確信した死後の世界とは次のようなものであった。『新しき啓示』から、その概要を一部要約して紹介する。
死の直後では、まず〝死ぬ〟という現象には痛みは伴わず、いたって簡単である。そして、そのあとで想像もしなかった安らぎと自由を覚える。やがて肉体とそっくりの霊的身体をまとっていることに気付く。しかも、地上時代の病気も障害も完全に消えている。その霊的身体で、抜け殻の肉体の側に立っていたり、浮揚していたりする。そして、霊体と肉体の双方が意識される。それは、その時点ではまだ物的波動の世界にいるからで、その後急速に物的波動が薄れて霊的波動を強く意識するようになる。
死後といっても、死の直後と、しばらくしてからとではかなりの違いがある。つまり死後の世界には段階的な広がりがあり、死の直後の目を見張るような体験がひと通り終ると、さらに異なる環境が展開する。といっても、前の階層と新しい階層との間では、連絡や通信は容易であるが、地上界と死後の霊界との間では、霊媒など霊能力者の力を借りないと通信は難しい。霊界の低い階層から高い階層へは行けないが、高い階層から低い階層へは意のままに行ける。
霊界の霊たちは、膨大な資料を保管してある図書館のようなものを利用しており、〝全知〟に近い能力を身に着けたようにふるまう。その知識は人間業とは思えないほど、正確である。
近親者の死から遺族が立ち直れる理由
ドイルは特に「関心を向けずにいられなかったもの」として、次の事象を挙げる。
「まず、死後に赴く世界が、どこか遠くにあるのではなくて、すぐ近くにある――否、今自分がいるのと同じ場所にあって、われわれも実は睡眠中に何度もそこを訪れている、という事実(先輩霊たちはそう言っている)である。愛する者を失った人が、本当ならそのまま発狂しかねないほどの悲しみに暮れながらも、そのうち立ち直って明るさを取り戻していくのは、実は睡眠中に〝その人〟と会っているからなのだ」。
戦争で息子を亡くしているドイルにとって、心の支えになったことだろう。