『エセ二人称視点』のタグを追加しました。
二人称視点の作品で主人公のセリフが「」付きで出てくるの、この作品くらいじゃないか?
「それじゃあ、あなた方には柴関ラーメンの店の復興を手伝って頂く、と言うことで………」
『はい、誠心誠意取り組ませていただきます。……それでは、私達はこれで失礼しま───せん!便利屋!便利屋はどこですか!?せめて彼女達だけでも捕えなければ……!』
便利屋達ならとっくに逃げ出したが。彼女らの逃げ足の速さや逃走技術にはあなたも感心する程だ。
『暗殺の作法』も『見えざる姿』も『暗部の歩法』も使わずに、まさかあそこまで華麗な逃走が可能とは思いもしなかった。
「便利屋?いないけど……。アコ、この状況、後で詳しく説明してくれる?通信を切って、校舎で謹慎して」
『は……はい……。』
プツン。
通信を切ったのだろう、行政官のホログラムが消えた。
よかった。ひとまず、得体の知れぬ強者の内の一人がこれで離脱した。心置きなく委員長に専念出来る。
『こちらアビドスの対策委員会です。ゲヘナ学園の風紀委員長ですね。はじめまして。この状況については理解されていますでしょうか?』
「………。ええ、もちろん。事前通達無しでの他校自治区における兵力の無断使用、及び………彼との衝突。………けれど、彼がこちらの公務を妨害したのも事実。違う?」
公務とやらの妨害と言われても困る。あなたとしてはこちらを突然攻撃して来た敵に対して、然るべき対応───反撃をかましただけだ。外の世界で、少なくともあなたの出身地である狭間の地では殺されても何も文句は言えないのを、意識不明だけで済ませた事に感謝して欲しい。
………欲しい、が。
あくまでもこれは狭間の地、律は壊れ、住人の殆どが狂い、そして正気を失ってしまった彼の地での常識だ。
キヴォトスは違う。暮らす皆が正常な理性を、正気を保ち、決められたルール、法律に則って生活している。*1狭間の地での常識や経験に従って行動すれば、大抵の場合ロクな事にならない事をあなたは学んでいた。
もしもここであなたが『うるせぇ!公務の妨害なんざ知るかよバーカ!先に攻撃してきた方が悪いに決まってんだろ!殺されなかっただけ有り難く思いなァ!』などと返せば、確実にあのデミゴッド並みの強さを持つ委員長を怒らせ、何やかんやで多分あなたが死ぬ。
あなたは今だけは死ぬ訳にはいかないので、何とかして彼女を怒らせずにこの場をやり過ごす必要があるが………
瞬間。あなたの脳裏に過ぎる、存在する記憶。
『うん、謝ろう?敵対を解除したいならまずは謝ろう?』
謝る。つまり謝罪。
これだ!
ホシノ先輩によれば、なんとここキヴォトスでは星の雫無しで敵対を解除する事ができるのだ!この方法ならば、或いは………!
しかしどうしたものか。あなたの脳内には自身や大切な場所、人物を攻撃して来た敵に対しての謝罪の言葉など存在しない。何か無いかと必死で記憶を掘り起こして───
瞬間。あなたの脳裏に過ぎる、存在する記憶。
そうだ。彼がいた。謝罪と言い訳の得意な、ハゲ頭の彼が。
彼が言いそうな事を脳内で再現し、あなたは口を開いた。
「……さっきは、悪かったな。だがまあ、あれは……不幸な事故、というやつだ。ほら、私の出身地はここと比べてかなり……その……荒んでいてな?ついうっかりクセが出てしまった。だがまぁ、過程はどうあれ結局君達は五体満足で無事だ。だからほら、ノーカウント、ノーカウントというやつだろう?な?どうかここは一つ水に流して………」
………。
言った後で気付いた。これでは彼女の怒りを煽るだけなのでは?おのれパッチめ……!よくもこんな事を……!*2
「……出身地?まさかあなた、キヴォトスの外から……!?」
ドォーン!
凄まじい爆音が、柴関ラーメン跡地の方向から聞こえてきた。目を向けて見れば───
「……………」
ホシノ先輩が、そこに居た。
いつもの緩い雰囲気は霧散し、風紀委員達に向け、剥き出しの敵意を振りまいている。
と、ホシノ先輩の目があなたの姿を捉えた。すると鋭い雰囲気は引っ込み、いつものどこか気だるげな態度を取る。
「……うへぇ〜、星見君だぁ〜。いや〜良かった、『星見君が居る筈の柴関ラーメンが砲撃された!』なんてメールの後にあんな血溜まり見ちゃったらねぇ〜。あとな〜んか腐った様な臭いもするし……」
「!?」
『ほ、ホシノ先輩!?』
「いや〜、ごめんごめん、ちょっと昼寝しててさ……」
「ひ、昼寝ぇ!?こっちは色々大変だったのに!ゲヘナの奴らが……」
「………」
「うーん?事情は良く分からないけど……対策委員会はこれで揃い踏みだよ?と、言うことで、やり合ってみる?風紀委員長ちゃん」
ちょっと待って欲しい。なぜそんな事を言うのか理解に苦しむ。ヘイローを持つ先輩方は良いだろうが、それを持たないあなたは攻撃を喰らえば良くて瀕死、普通で即死なのだ。デミゴッド並みの力を持つであろう彼女と戦闘になった上で初見で全ての攻撃を見切って躱しきるなど無理だ。
少しでも生存率を上げるため、2つの爛れ刻印を大急ぎで外すあなたに、先輩は囁く。
「大丈夫。
………?
「………小鳥遊、ホシノ」
「うん?おじさんのこと、知ってるの?」
「……ええ。情報部に居た頃、他校の要注意人物はある程度把握していたから。特に………あなたの事を忘れる筈が無い。あの事件の後、アビドスを去ったと思っていたけど……」
あの事件。それにホシノ先輩のさっきからの態度。どうにも引っ掛かる点が多い。
どうやら委員長はホシノ先輩と『あの事件』について知っている様だが……?
果たして、あなたに聞き出せるだろうか。
……いや、辞めておこう。アビドスを去っても不思議は無い程の『あの事件』とやらについて当事者たるホシノ先輩から何も聞かされていない以上、第三者から聞くのは良くないだろう。
………或いは、委員長も当事者の内なのか?
「………。……そうか、だからシャーレが……、」
「まあいい、私も戦う為にここに来た訳じゃ無いから。……イオリ、チナツ。撤収準備。帰るよ」
「あ……はい」
そう言うと、委員長はあなた達に向けて頭を下げた。
「……事前通達無しでの兵力運用、他校の自治区で騒ぎを起こした事、そして……意図せずとはいえ、ヘイローの無い、外から来た彼に対して砲撃を行った事。これらについては、私、空崎ヒナより、ゲヘナの風紀委員会の委員長として、アビドスの対策委員会に公式に謝罪する」
「……」
「!?」
「……今後、ゲヘナの風紀委員会がここに無断で立ち入る事は無いと約束する。それと、私達が出した怪我人の治療費も全額を負担する。………どうか許して欲しい」
怪我の手当てならとっくに終わっているので、特に治療費を払う必要は無いからどうか安心して欲しい。
「えっ」
さて、風紀委員会達が去った後、今日はもう解散して明日状況の整理をしよう、となった訳だが───
現在。あなたはホシノ先輩と二人で会話をしていた。
「いや〜、最後に委員長ちゃんが先生になんか話してたけど、あれ一体なんだったんだろうねぇ〜」
分からない。
分からないことだらけだ。ホシノ先輩のあの態度も。『あの事件』とやらも。
「そっかぁ〜。……良かったね。二人共、命に別状が無くてさ」
本当に良かった。二人共───大将もロボットの彼も、あなたの回復祈祷により傷は完全に癒えている。
それでも未だ目を覚まさない彼らは、現在病院送りになっているのだ。
信仰を上げておいて本当に良かった。
………所で、なぜ電話口で受け答えしていた彼女は、物凄い剣幕で『やっぱり要るんじゃあねぇーかよ救急車ァーーッ!!』などと叫んだのだろうか。お陰で鼓膜が破れた。まさか今日だけでここまで負傷を負うとは。
ともあれ、『最悪の事態』が発生しなくて本当に良かった。
「……最悪の、事態?……それって、まさか、その……」
………まあ、恐らくは先輩の想像する通りだ。
狭間の地であなたと関わり、親しくなり、そして死んでいった、或いはあなたが殺した彼らの死体の上に、あの二人の死体が積み上がらなくて本当に良かった。
「……そう。そっ、か。………その、星見君は───」
と、先輩はあなたに何か聞きたそうに口を開いた。
……が。
「……う〜ん、やっぱりいいや!じゃあ、また明日ね〜!」
そう言って、駆け出してしまった。
………今日は本当に、分からない事だらけだ。
もしも主人公がやって来たのが、原作開始前(アビドス編が始まる前)のゲヘナだったら?
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激長!便利屋ルート
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やっぱり激長!風紀委員会ルート
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全部書いて♡