どうも。
「"アコちゃん、だったよね?その、外の世界には私や彼のような、ヘイローを持たない人ばかりだから、今回みたいな事をやったら……本当に、取り返しがつかない事を起こしてしまうかも知れない。私は、君に、大切な生徒に、そんな罪を背負って欲しくは無い。だから、学校を卒業して、キヴォトスの外に行く時には………よく、気をつけないといけないね"」
『はい。……本当に、すみませんでした』
先生の説教を受けた行政官は、あなたに深く頭を下げ謝罪した。別に謝る必要は無いので安心して欲しい。
『それは……『謝っても許すつもりは無い』、ということですか……?』
全く違う。怒ったのはあなたにとって大切な場所や人物を傷つけたからであり、あなたが瀕死の重傷を負った事については、これっぽっちも腹を立てていない。それは最早あなたにとっての日常風景なのだ。
レナラの生まれ直しにより、かつてあなたの身に宿っていた生命力を限界まで信仰と神秘に振り分けたあの日から、あらゆる攻撃で致命傷を受ける、あるいは即死する事への覚悟は済んでいる。
精々祝福もマリカの楔も見つけていない今殺されるのはかなり困る、と言った程度だ。
………ところで、なぜあなたは風紀委員の砲撃に耐えられたのだろうか。衝撃に身構えたあの一瞬、ひやりと何か冷たい力を感じたが───
………ところでなぜ風紀委員会共はあなたの事を不安そうに見つめているのか。いくら敵の命の価値がゴミクズ並とは言っても、アビドスの皆や先生に迷惑が掛かるので今のところは殺人を犯す予定は無いから是非安心してほしい。
「先輩!私安心できません!私達を殺さない理由が自分の倫理観とか良識とかじゃなくて『親しい人に迷惑がかかるから』って言われても私全然安心できません!」
「奇遇だな、私もだ」
………なぜか奴らのあなたを見る目が更に恐怖に染まった様に見える。一体何故………?
「………そうだ。星見、君には後でお説教をしないといけない」
「…ええ、そうよ、ほんっとにその通りよ!」
「そうですね☆あの言動はちょっと見過ごせません!」
待ってくれ。頼むから待ってくれ。流石にゴミクズは言い過ぎだった、貯金箱位の価値は───
「いや、そっちじゃなくてね?それもまあ……でも……」
『良いですか?星見さん。この年頃の女の子にですね?『重量過多』なんて言葉は絶対に使ってはいけないんですよ?良いですか?………良い、ですね?』
ちょっと何を言ってるのか分からない。何故重い物を重いと言うのが悪いのか。大変理解に苦しむ。
苦しむが、ここで納得しておかないと恐らくアヤネによって机が宙を舞う事になるので、あなたはひとまず首を縦に振っておく事にした。
「ん、分かればよろしい」
「………ところでどうしてあなた方風紀委員会はわざわざアビドスまで?聞くところによれば、便利屋の皆さんを追ってきたようですが……」
「………何か引っかかる」
「カヨコ?どうしたのよ」
「風紀委員会が私達を追ってわざわざ他の自治区まで?それもこんな大軍で………。『あの』風紀委員長が、そんな非効率な運用、する?」
「……確かに、言われてみれば奇妙ね………」
「………だからアコ、これは、この件は、あんたの独断なんでしょう?それにこの戦力。ここで暮らすアビドスの生徒と交戦する事になってしまった事を想定したとしても、全校生徒は6人。星見の魔法について知ったのもついさっきの事。戦力が───余りにも、多すぎる。だから、 あんたは………『シャーレ』に所属する『先生』が狙いだった。………違う?」
何と言う事だろう。さっきからあなたの地雷が次々と刺激される。これ以上親しい者が死んだり取り返しのつかない事になるのは勘弁願いたいのだが。
もしも鬼方の言う事が真実ならば、風紀委員の誰かに赤い腐敗か毒を発症させる事になる。無論治療は無しだ。できるだけ苦しんで死んで欲しい。
………いけない。さっきから思考が狭間の地のそれに近くなっている。殺しは駄目だ。アビドスの皆に迷惑が掛かる。死にかけた影響だろうか。それとも得体の知れぬ強者に警戒し続けているからだろうか。
『………この際です。観念して言ってしまいましょうか。ええ、その通りです。その通りでした。……ティーパーティー。ご存知ですよね。ゲヘナ学園と長きにわたって敵対関係にある、トリニティ総合学園の生徒会です』
トリニティ総合学園。確かそこは、阿慈谷が通っている学校だったか…?
『そのティーパーティーが、シャーレに関する報告書を握っている………と言う話が、うちの情報部から上がってきまして。当初は私もシャーレとは一体何なのか、全く知りませんでしたが………あちらが知っている情報となれば、こちらも把握する必要があります。……それで、チナツさんが書いた報告書を確認しました』
「………確認するのが遅くないで『連邦生徒会長が残した正体不明の組織………大人の先生が担当している、超法規的な部活。………どう考えても、怪しい。そう、思いまして』………怪しいのは行政官の確認の遅さでは?」
怪しい?まさか彼女は、先生を怪しい人物だと考えているのだろうか。だとしたら、彼女のそうした眼は節穴だと断ずる他無い。
『随分、先生を信用なさっているのですね。素晴らしい信頼関係で。何よりです』
当然だ。彼はエビ好きなのだから、怪しい人物である筈が無い。
『エビ好きに、悪人はいない』。これは万物の理である。
『………はい?え、エビ好き?ま、魔法使いなりの隠語や判断基準とかですか……????』
???
彼女は一体何を言っている?理解が及ばない。なぜエビが魔術や祈祷につながるのだろう。
『行政官、彼の行動や言動は余り気にしないで下さい。持っていかれます』
『は……はあ………』
行政官のあなたを見る目に不安と恐怖と困惑が混じり合ってきた頃。どうやら、風紀委員会達は撤退する事にした様だ。
『それでは………今回の補填は必ず。破壊してしまったお店などの復興は、誠意を持って行いますので……』
「ええ!よろしくね!」
『はい。……はぁ、この件が委員長にバレたら……まあバレるでしょうけども、反省文でしょうね……『呼んだ?』あ、いえ、そう言う訳でわああああああああああああああああああああああああああっ!?い、いつの間に!?』
『アコ、今どこ?』
『い、今ですか!?そ、その〜、……ゲヘナ近郊にいます!パトロールです!パトロールをやっています!風紀委員のメンバーと一緒に……!その、今立て込んだ用事がありまして!後でかけ直しますので…!』
『そう。………立て込んだ用事って、他の学園の自治区で、委員会のメンバーを独断で使わないといけない事?」
『……え?』
そうして、あなた達の前に現れたのは。
圧倒的な、暴力の化身だった。数千、数万の命を捧げてようやくその首に刃が届く程に、圧倒的な。
かつて戦った強敵が、霞んで見える程の存在感。もはやその力はデミゴッド達のそれにすら及ぶだろう。
ただそこに居るだけで、彼女は圧倒的な存在感を放っていた。『私こそが風紀委員だ!死んで平伏しろ!』と言わんばかりのそれに、あなたは蛮地の王、ホーラ・ルーを幻視する。
その彼女と、あなたの目が合った。
瞬間。幾千の死を超えて培われたあなたの本能が告げる。
───戦え!勝利しろ!生き残るにはそれしか無いぞ!
思考が冷徹に冴えわたる。反射的に、あなたは盾を構えて
相手はヘイローを持っている。生半な攻撃は通らない。毒や腐敗、出血などの異常を狙え。或いは黒炎や死のルーンの力を。
しかしエオニアは駄目だ。飛び上がる隙を突かれて射殺される。魔術も駄目だ。同様に詠唱の隙を突かれるだろう。
だが……今のあなたは杖を持っている。魔術の触媒用の杖を。武器を切り替える必要があるが───果たして彼女はその隙を許してくれるだろうか。
彼女は、あなたに向けて銃を構えた。
武器を持ち替える必要は無い。そんな時間も無い。このまま盾を構えて接近、魔術『カーリアの速剣』で切り刻む。
……だが、あなたの持久力で彼女の放つ弾丸を盾で受け切れるだろうか。途中で盾を吹き飛ばされ、肉体に無数の弾丸が突き刺さる事になるかも知れない。
どうする。
どうする。
どうする……?
「"ストップ!二人とも、そこまで!"」
「……星見?さっきからどうしたの?何だか雰囲気が凄く怖いよ?」
「そうですよ☆リラックスリラックス〜!」
…………。
「その……ごめんなさい。彼の殺気に当てられて、反射的に………」
こちらこそすまなかった、とあなたは彼女に謝罪を入れた。
悪い癖だ。───少なくともキヴォトスにおいては。狭間の地での経験は、常識は、ここでは余り一般的な物では無い。
狭間の地での常識や経験に則った行動は、こちらでは不利益を生むばかりだ。今の件然り、指弾き然り。
だからこそ、キヴォトスの常識に従わなければならない。それを、再確認できた。
追記───
タイトル書き忘れる奴がいるってこれマジ?
もしも主人公がやって来たのが、原作開始前(アビドス編が始まる前)のゲヘナだったら?
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給食部ルート
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美食研究会ルート
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温泉開発部ルート
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激長!便利屋ルート
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やっぱり激長!風紀委員会ルート
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全部書いて♡