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あなたは激怒した。必ず、かの邪智暴虐の邪智暴虐を邪智暴虐せねばならぬと決意した。
今すぐにでも飛び出し、あなたにとって大切な場所を破壊し、交流を深めた人物を傷つけた風紀委員会共に復讐しようとしたあなたは、しかし僅かに残った冷静な部分に留められた。
まあ待て一旦落ち着け。まずは様子見だ、敵の数や配置を確認するのが先決だろう?今までに何度それを怠って屍を晒してきた?
……確かにその通りだ。あなたは建物の陰から僅かに顔を出し、遠眼鏡を使って脳内に生息する血の君主と共に敵の数を数え始めた。
…。
……?
………!?
!?!?!?!?!?
おかしい。非常におかしい。あなたの目は故障してしまったようだ。まるで敵が百人近く居るように見える。それに遠くにはこちらに狙いを定める多数の砲門も見えるのだが。
「えっ。そりゃそうでしょう?だって相手はゲヘナの風紀委員会よ?大勢で部隊を組んでくるに決まってるじゃないの」
何と言う事だ…!
最悪の状況だ。
実はあなたにはどうしても克服できない苦手分野がいくつかある。その中の一つが多対一の戦闘だ。一対二や五か六辺りまでなら攻撃範囲に優れた魔術や祈祷、遺灰による霊体召喚で何とかなるのだが、流石に数十、数百となれば話は違う。
十匹の犬に囲まれたらほぼ死が確定するのがあなたという生きものである。何と生の儚い事か。
ついでにキヴォトスでは今のところ還魂碑が見つかっていないので、遺灰と霊喚びの鈴が使用出来ない。
「…え?ちょっとまって?さっきあんなにカッコよく『賓客が参りました……』とか言ってたのに?多対一は苦手だって???」
勘違いはしないで欲しい。ただちょっとあなたの想定では十数人だったのが百人近くと遠くの砲門に増えたのに驚いただけだ。
今のあなたに奴らとの戦闘を回避しようとする意志は微塵も存在しない。ここが狭間の地であったなら、数千回死んででも奴らの行動を見切って念入りに殺す事が出来るが───
ここはキヴォトス。少なくとも今はその戦法は使えない。
さて、どうしたものか。あなたとしては奴らに最低でも出血、できれば毒か腐敗を発症させ、できるだけ長く苦しんで欲しい所だが。
「ちょ、ちょっと?今なんだか物騒な言葉が聞こえたんだけど?ここは穏便に銃か爆破で……」
何、殺しはしないので安心して欲しい。アビドスの生徒達の為にも、奴らなんかの為にキヴォトスで殺人を犯す訳にはいかない。ただちょっと苦しんで貰うだけだ。
戦場に出ておいて、命が助かるだけでも恩の字だろう。あなたの慈悲深さがとどまるところを知らない。
それに毒も腐敗も今のところは禁止されてはいない。あの時は『殺しは駄目だ』と言われただけであり、『毒や腐敗を使うな』とは言われていないのだ。
「…やめておいた方がいいんじゃない?あの娘たち、きっと怒るわよ」
確かに、ホシノ先輩が知ったら指弾きどころか渾身のグーが飛んでくるだろうが───
……。
痛いだけ。そう、一瞬痛いだけだ。死にはしない。
「本当に、戦うのね……」
そう言うと、陸八魔は自らの持つ銃を複雑そうな目で見つめた。一体どうしたと言うのか。
「……その、私達が普段使っている物が、本当は人なんて簡単に……その、殺せてしまうんだって改めて思い知ったというか……。もしもさっきのあなたみたいに、大怪我をさせてしまったらどうしようって……」
なるほど。あなたにとっては馴染みのない感覚だ。住人が皆途轍も無く頑丈な、キヴォトス故の物だろう。あなたと先生が特別貧弱なだけなので、心配は無用である。
「それは…そうかも知れないけど…」
さて、どうしたものか。遺灰が産廃と化した今、便利屋達が居るとはいえ、百人近くが相手ではかなり分が悪い。
……だがしかし。あなたには別の手段がある。スマートフォンによる皆への連絡だ。
アビドスの生徒達と友好的な関係を築いている今、連絡をすれば恐らく彼女達はあなたを助けに駆けつけてくれるだろう。
あなたは連絡を入れる為に、スマートフォンを取り出そうとして───
『我々はゲヘナ学園所属の風紀委員会だ!便利屋に告げる!お前たちは今包囲されようとしている!大人しく武器を置いて出て来い!』
───妙案を、思いついた。
あなた達は現在、両手を上げながら風紀委員会共の下に歩き出していた。ちなみに、今のあなたはぼろぼろになった制服の代わりに狭間の地を共に旅した『星見のローブ』一式を身に纏っている。
「よし、良いぞ……。武器は持っていない様だな。そのまま……ん?誰だ貴様は?」
「先刻、お前達が砲撃を撃ち込んだラーメン屋の従業員だ」
「……は?いやまて、そんな情報は……それにお前、男でヘイローが無くて……ってまさか!キヴォトスの外から!?」
「その通りだ。よくも攻撃に彼らを巻き込んでくれたな」
「いや…それは……」
「まあそれは今は良い。今は、ね。本題に入ろうか」
「……招待無き客人よ。アビドスの地に、何の用がある?」
「さっきの勧告で分からなかったか?我々は、そいつら便利屋を捕らえに来たんだよ」
「そうか。…だがな。彼女らは今は───私達の、『お客様』だ。今、我々には彼女らにうまいラーメンを提供する義務がある。その代わり、お代は頂くがね。彼女らは、我々にとって大事な客なのだ。自分で言うのもなんだが───アビドスは、この有り様だ。客は、少しも失いたくないのだよ。それを、捕らえて連れて行くと言うのならば───」
あなたは右手を空高く掲げた。その手に、黄金に輝く弧が顕れる。
あなたはそれを砕いた。装備していたゴドリックの大ルーンが、あなたにその恩恵を齎す。
あなたは伝説の武器の一つ、『剣継ぎの大剣』を取り出し、戦技『復讐の誓い』を発動した。
起動した大ルーン、発動した戦技、予め装備していたふたつのタリスマン、『ラダゴンの爛れ刻印』『マリカの爛れ刻印』の効果により、あなたの能力は───
一時的に、
その祈祷は、正しく神の力の一端。かつて打ち破った強敵、『腐敗の女神、マレニア』の追憶から得られた祈祷。
あなたは背中から朱い翼を生やし、空へと飛び立った。
あなたの作戦により不意を打たれた風紀委員共は、あり得ない物でも見たようにぽかんと口を開けあなたを見つめている。その中心に、あなたは飛び込んだ。
背中の翼は蕾に変じ、一拍おいて───
凄まじい腐臭を辺りに撒き散らしながら、艶やかに開花した。
腐臭の発生源は、エオニアの花だけではない。花の近くにいた風紀委員共は、目論見通りに
あなたは記憶していた魔法を切り替え、『黄金律原理主義』の祈祷の一つ、『回帰性原理』を発動した。
地面に特徴的な紋章が顕れ、*1奴らが発症した朱い腐敗が完全に治まった。なんとあなたの慈悲深い事だろう!あなたですら10秒は耐えられる朱い腐敗を、たったの5秒経った時点で治してやるとは!間違いなくキヴォトスの全住人があなたの慈悲に感動の涙を流す事だろう。
仲間の身体が腐っていくのを見て、奴らは目に見えて取り乱していた。肉体が頑丈なキヴォトスで良かった。彼女らは流血にすら余り慣れていない。肉体が腐るなど、かなり衝撃的な光景だっただろう。
あと一押しだ…!
あなたは先ほど便利屋から受け取っていた銃を、彼女らに返却した。
陸八魔達にはあらかじめあなたが何をするかを伝えておいた為、腐臭や腐敗による精神的ダメージは少ない様に見える。
「……あの娘たちからのお説教、今のうちに覚悟しておきなよ?」
……今は良い。それよりも戦闘を。
「は、はい!行きますよ…!アル様!見ていて下さい!」
「!気をつけて!あっちから援軍が…!」
陸八魔の警告に、あなたは言われた方向を見た。数十人の風紀委員共が、こちらに押し寄せている。
その光景に、あなたは狭間の地にやって来たばかりの時を思い出した。
そうだ。巡回していた兵に笛を吹かれ、なす術なく数の暴力でリンチされたのだったか。───捻り潰してやる。あなたは最大強化の『死王子の杖』を取り出し、ある魔術を唱えた。
あなたの背後に創り出された異空間から、援軍に向かって小隕石が次々に撃ち出されていく。
「ひっ!?な、なんだこれ!?」
「がはっ…!?」
「え、援軍を呼べ!地点βに部隊を置いていた筈だ!そいつらを…」
「そ、それがですね…どうやら、既に壊滅状態のようで……」
「……は?」
「ほ、星見ーーっ!生きてるーーっ!?居たら返事をしてーーーっ!!!」
どうかアンケートにご協力くだせぇ……へへっ……
もしも主人公がやって来たのが、原作開始前(アビドス編が始まる前)のゲヘナだったら?
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激長!便利屋ルート
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やっぱり激長!風紀委員会ルート
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全部書いて♡