歴史、ドラマでどう描くか NHK番組問題を考えるシンポジウムが開催

NHKのドラマ制作の問題点を議論したシンポジウム=14日、東京都千代田区(大森貴弘撮影)
NHKのドラマ制作の問題点を議論したシンポジウム=14日、東京都千代田区(大森貴弘撮影)

NHKが8月に放送した戦後80年関連ドラマの登場人物の描き方が「歴史の歪曲(わいきょく)」と批判されている問題を受け、シンポジウム「ドラマによる歴史の改竄(かいざん)は許されるか?」が14日、東京都千代田区の日本プレスセンタービルで開かれ、ジャーナリストや元外交官らが同局のドラマ制作問題を議論した。専門家は背景として、メディアの寡占化などを指摘した。

元駐仏大使の飯村豊氏は、8月16、17両日に戦後80年に絡んで放送されたNHKスペシャル「シミュレーション~昭和16年夏の敗戦~」を紹介した。日米開戦直前に設立された総力戦研究所がドラマの舞台で、実際の所長は飯村氏の祖父が務めていた。ドラマ内で役名は変わっていたが、所長は若手に圧力をかける存在として描かれた。

飯村氏は「何の根拠もなく祖父を保身に走る卑劣な人間と描いており、歴史を歪曲した番組だ」と強調。名誉が傷つけられたとし、月内にもNHKを相手取り、訴えを起こす方針を明かした。

ジャーナリストの斎藤貴男氏は、連続テレビ小説「虎に翼」の問題を提起。性的少数者が自身の性的立場を明かすと周囲が祝福するシーンなどを挙げ、「『実話を基にした』と銘打っているにもかかわらず、当時の価値観を無視して一方的に過去の人に当てはめた。こうした創作は表現の自由を超え、歴史修正ではないか」と述べた。

元NHK記者でジャーナリストの立岩陽一郎氏は、令和5年にNHKでドラマとして放送され、映画化もされた「アナウンサーたちの戦争」でも、実在の人物と類推できる登場人物を悪役として創作した問題があったと指摘。その上で、「ストーリーを面白くするために歴史を修正するのは止めなければいけない」と訴えた。

NHKドラマと史実を巡る問題について、和歌山大観光学部の木川剛志教授(メディア論)は「NHKによるメディアの寡占化ともいえる状態、すなわちメディア間の『非対称性』が招いたといえ、今後も同様の事態は繰り返される恐れがある」と分析する。

木川氏は自身も監督として映画製作に携わっており、フィクションを作る立場にも理解を示す。一方で、「他のメディアが『史実はこうだ』と別の視点を提示し、視聴者や読者が選べる環境が重要だ」と指摘した。

「シミュレーション~昭和16年夏の敗戦~」をめぐっては、NHKの稲葉延雄会長が先月の定例記者会見で「ドラマを面白くするために史実と異なる脚色をしたと指摘されてもおかしくない。たとえドラマであってもNHKらしくなかった」と語っている。(大森貴弘)

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