カレカノ談義
上級生の校舎となるとさすがに記憶と今の差異もあまりないようだ
特に明利は全く違和感がない
初等部の上級生あたりから身長が伸びるのが止まった彼女からすれば、ここに自分がいても何の問題もないのだ
そしてどうやら、そのことを上級生の男の子たちにからかわれたのか、一通りチェックを終えて静希と合流した際にちょっとへこんでいた
何度か初等部の見回りを繰り返すと、徐々に校舎の方に流れてくる大人たちが増え始めてきた
高校、中学と見て回るのを終えたのか、最後に初等部を見に行く様子でスーツ姿の人と何人かすれ違った
恐らくは委員会などの関係者なのだろう、仕事とはいえこんなところをただ見るだけというのもつらいものである
なにせ特に変わった様子もなくただ授業をしているだけなのだから
そうしている間に静希達が担当する警備の時間は終了し、後からやってきた警備の人員と交代し、少しの自由時間となる
時間を見るともう十五時を過ぎている
四人でまた警備本部のところに向かい、警棒と無線を返すと全員で大きく伸びをした
「いやぁ、何事もなく暇だったな!」
「まったくね・・・ところでなんで明利は落ち込んでるの?」
「まぁその・・・なんだ、察してやれ」
小学生相手にまったくもって年上扱いされなかったことで軽く心に傷を負ってしまった明利をいたわりながら静希はため息をつく
なにせこの数時間、ほとんどと言っていいほどに何も起きなかったのだ
ただ同じところをぐるぐるとまわっているだけ、店の時も思ったが、やはり平日となると暇を持て余してしまうのだ
「よーし・・・んじゃどっか行くか!店出てるんだろ?冷やかしに行こうぜ」
「そこはちゃんと食べに行きましょうよ、何で冷やかすのよバカ」
同級生や上級生が手伝っているということもあり、あまり意識することが無いかもしれないが出店されているのはれっきとした店だ、そんなところに冷やかしを入れるのはあまり推奨できるものではない
「今日はどこも暇してると思うから、回るなら今日のうちじゃないか?明日からは忙しくなるだろうし」
今日は平日、これから放課後に移るにあたって人も増えるだろうが、それでも休日の明日以降には劣るだろう
静希達の自由時間も限られているために、それを考えると今のうちにこの一般公開を楽しんでおくのも重要かもしれない
なにせせっかく授業から解放されているのだ、こういう場面で動かないと損をするばかりである
「せっかくだからいろいろ見てみましょうよ、店舗型じゃなくて屋台みたいなのもあるんでしょ?」
「あー・・・屋台は中庭とかの方だっけか、行ってみるか・・・ほら明利、いつまでも落ち込んでるなよ」
「あ・・・う、うん、大丈夫・・・」
よほど小学生にバカにされたのがつらかったのか、明利の表情は未だ浮かないままである
見るに見かねた鏡花が頭をなでながら元気づけようとしているが、あまり効果はなさそうだった
「ちょっと静希、何とかしなさいよ、あんたの彼女でしょ?」
「あー・・・あの状態になると地味に長いんだよなぁ・・・仕方ない・・・先に中庭に行っててくれるか?ちょっと相手してるから」
そういって静希は明利を連れてそそくさとどこかへと行ってしまう
残された陽太と鏡花は顔を見合わせて互いにどうするのだろうかと不思議そうにしていた
「にしてもあれね、あんな様子だと本当に付き合ってるのか疑問に思えるわね、前と扱い変わってないじゃない」
「確かになー・・・でもわかんないぜ?実はやることやってるかもしれんぞ?」
「・・・それはないわね・・・」
以前行われた人外含めの女子会もどきに参加していなかった陽太からすれば、平日休日合わせてほぼ一緒にいる二人を見てそれなりに進んでいるのではないかという予想なのだが、実際は全くもって違う
主に明利が臆病なせいでまったくと言っていいほどに先に進んでいないのだ
高校生でのカップルなのにあそこまで淡白なのも珍しいのではないか
というか昔から一緒に居過ぎたせいでカップルを通り越して夫婦の立ち居振る舞いなのだ
倦怠期を軽く通り越しての信頼関係を築いているために先に進みにくいというのもあるのかもしれない
「わかんないぞ?もしかしたら静希が獣のように襲い掛かってるかもしれないぜ?」
陽太の言葉に、明利に対して獣のように襲い掛かる静希を想像したのだが、思わず携帯で通報してしまいかねない構図が頭に浮かび眉をひそめる
明利のあの体格では静希といても妹としか見られない可能性があるうえに、小学生にしか見えないために下手したら本当に通報されかねないのだ
何よりここは学校だ、そんなところを誰かに見られようものなら本当に警察沙汰になりかねない
マスコミなどにばれようものなら写真込みで報道されることだって十分にあり得る
友人が通報されるなどと言う不名誉な展開にならないことを願うしかない
「ていうか、あんたからしたら二人とも幼馴染だけどさ、そういうのって嫌なもんじゃないの?」
中庭に移動しながら幼馴染二人に対しての反応として陽太のそれが気になって鏡花がそういうと、陽太は疑問符を飛ばしていた
「そういうのってどういうのだよ」
「だからその・・・恋人関係でさ、いやらしいことしたりとか、肉体関係結んだりとかするってこと、普通嫌なもんじゃないの?」
昔から知っている人間の濡れ場を想像したりするのを嫌悪する人間はかなりいる
特に陽太を含めた幼馴染は肉親と同じようなレベルで長い期間共に過ごしているのだ、そういった嫌悪感を抱いても何の不思議もない
だが陽太本人は何の嫌悪感も抱いていないようだった
「別に?明利が静希の事好きなのはずっと前からわかってたことだし、ようやくそういう関係になれたんだからやりたいって思うのが普通のことなんじゃねえの?」
「・・・あんたもうちょっとオブラートに包んだ言い方できないわけ・・・?」
陽太の物言いに鏡花は額に手を当ててしまう
陽太は良くも悪くも自分の感情などに率直だ
だからと言ってこんな太陽の高い時間にそんなことを公言してしまうのもどうなのだろうかと思ってしまう
「じゃあ幼馴染二人に先を越されて悔しいとかそういうのはないわけ?」
「いいや?俺ロリコンじゃねえし」
「静希もロリコンではないと思うけど・・・」
明利の外見からそれも断言できないのが悲しいところではあるが、微妙に論点がずれている気がしてならない
だがそう考えると静希は東雲姉妹に優しかったりするなと思い返し、これはまさかなどと思ってしまい首を横に振った
「そうじゃなくて、陽太も彼女欲しいとかそういう風には思わないわけ?」
「あー・・・確かに欲しいっちゃ欲しいな・・・けどさ、彼女できたとして、何すりゃいいんだ?」
陽太の質問に鏡花は絶句してしまう
驚いたのではなく、どう答えていいのかわからなかったのだ
今まで訓練や勉強で忙しかった鏡花からすれば彼氏などできたことがあるわけもなく、そういった恋愛なども物語で読んだ程度
だが実際の能力者のカップルというのは静希と明利以外見たことが無い
そしてあの二人は普通のそれとは違い明らかに段階を飛ばした信頼関係を築いているため参考とはなりえない
そう考えると、一体何をすればいいのかという根本的な質問に鏡花は何と答えたらいいものかかなり迷ってしまっていた
「えっと・・・一緒に出掛けたりとか、ただ一緒に居たりとか・・・あとはその・・・求めあったりとかするもんじゃないの?」
何を求めるのかとまでは明言できなかったが、なんとなくのニュアンスは伝わったようで陽太は腕を組みながら唸り始めてしまう
「でもよ、あいつら見てると普段とやってること変わんなそうだし、それに一緒に買い物とかって昔から行ってるぞ?」
「・・・まぁあの二人は特殊なのよ」
それ以上の言葉が見つからずにそう結論付けたが、実際どうなのだろうか
昔から一緒に居る幼馴染と付き合ったとして何か変化があるのだろうか
静希と明利の動向を完全に把握しているわけではないので何とも言い難いが、確かに陽太の言う通り何かが変わっているというわけではない
そう考えると、恋人ができた時何をしたらいいのかわからないのも同意できる
「あれよ、例えば陽太は恋人ができたとして、なんかしてもらいたいことってないわけ?」
「してもらいたいことか・・・そうだな・・・」
静希程ではないかもしれないが、陽太も陽太で女性関係には疎いところがある
いや疎いというよりは耐性ができてしまっているというべきだろう
幼馴染の二人に加え、実月という強烈な姉を持っているのが原因である
ある意味強烈過ぎる人種が約二名ほどいるために、陽太の女性観はその二人でほぼ固定されてしまっているのではないかと思えてしまう
そう考えると微妙に同情してしまう
「あ、一つあるぞ」
してほしいことを考えていた陽太が何か思いついたのか手を叩いて声を上げる
「何?言っておくけどいかがわしいことはなしよ」
「お前俺をなんだと思ってんだよ、あれだ、膝枕してほしい」
陽太の意外な要求に鏡花は一瞬目を丸くした
膝枕
まさか陽太がそんなものを求めるとは思っていなかったのだ
「膝枕なんて実月さんがやってくれてたんじゃないの?彼女に求めるような事?」
「いや、姉貴に膝枕してもらったことなんて一度もないぞ?腹枕とかはあいつらと遊んだ時に何度かあるけど」
腹枕っていったい何よと鏡花は不思議がる
要するに横になって眠っている誰かの腹を枕にして眠る行為だ、陽太曰く幼馴染である静希明利雪奈の中で一番使い心地がいいのは静希らしい
「にしても意外ね、そんなことしてほしいんだ、もっとアグレッシブに行くかと思ったのに」
「なんていうかさ、安心して眠れるってすごい重要だと思うんだよ、それだけ相手に全部預けられるってことだしな」
陽太のそのセリフに、鏡花はいまさらながらに思い出す
昔から能力の暴走などがあった陽太からすれば、寝ている間も安心できないような状況が続いていたのだ
だからこそ、心から全てを安心して預けられるような相手は限られるのだろう
もし陽太に彼女ができたなら、それはきっと陽太が心から信頼できるだけの女性なのだなと、鏡花はそう感じたのだった
とりあえず予約投稿は今日まで
明日からは普通に投稿できたらいいなと思います
誤字が溜まってそうで怖いです
今年もお楽しみいただければ幸いです