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J/53  作者: 池金啓太
十五話「未来へ続く現在に圧し掛かる過去の想い」
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大人と昔話

「それでさ、君の班員は誰?さっきの子?」


「えぇ、さっきの小さいのが俺の班員の幹原明利、で、その隣にいるのがうちの班長の清水鏡花、んでもって裏方にもう一人前衛の響陽太がいます、全員俺よりずっと優秀ですよ」


俺より優秀という言葉に、大野と小岩は表情をひきつらせた


なにせこの二人は静希の能力の実情は知らないものの、悪魔や神格、霊装に使い魔を使役しているところを見ている


そんな人物より優秀という時点で末恐ろしいという段階をかなりとばしているのだ


「一応聞いておくけど、うちみたいな軍に興味のある子っている?」


「俺らの中では陽太くらいですかね、時間あるならあとで引き合わせますけど」


「そりゃありがたい・・・ちなみにほかの班とかで優秀な子とかいるかな?」


随分とぐいぐい来るなと思いながら、静希は自分の記憶の中から優秀な人物を探し出す


約一名、特徴的な仮面をつけた女子生徒を思い出した


「うちの学年唯一のエルフでよければ、今は何してるかわかりませんけど」


彼女が訓練体験をやることはわかっているが、今もそれをやっているかはわからない


幾つかの仕事を兼任するのが当たり前なので、もしかしたら今は警備に従事しているかもしれないのだ


「エルフかぁ、いいね、是非お願いするよ」


「私エルフって一人二人しか知り合いいないわ、ちょっと楽しみかも」


小岩がそうつぶやくと、貴方の先輩で自分たちの担任教師の城島は実はエルフなんですよなんてことは口が裂けても言えない


というかもし口を滑らそうものなら城島に本当に口を引き裂かれそうだ


そして石動には悪いが、この二人の話し相手くらいにはなってもらうしかない


軍の仕事に興味がないのであればそれでよし、興味があるならなおのこと軍に知り合いができるというのは悪いことではないだろう


「班もクラスも違うんで時間かかるかもですけど、一応連絡しておきますね」


「あぁ頼むよ・・・それにしてもやっぱりこっちは人が少ないね」


大野の言葉に静希と小岩は同意してしまう


こちらにやってきているのは本当にごく一部の人間ばかりだ


平日の昼間というだけあって廊下を通過したのも数える程度の人数しかいない


しかもそのすべてが何らかの礼服を着こんでいるのだ


軍服だったりスーツだったり、警察官らしき人物もいる


ごく一部の関係各所の人間しかこちらに来ていないというその理由を理解してしまうだけに非常に複雑な気分である


「ちょっと静希、結局その人たちは知り合いなわけ?」


さすがに傍観しているのにも耐えられなくなったのか、鏡花が明利を引き連れて三人の元にやってきた


班員が自分たちの知らない軍人と話しているのはさすがに見て見ぬふりをするには興味がありすぎる内容だったのだ


「あぁ、そういや説明忘れてたな、この二人は大野さんと小岩さん、町崎さんの部下で俺が前イギリスに行ったときに世話になったんだ」


「・・・あぁ、前言ってたエドモンドさんの時の・・・」


事情を大まかにしか把握していない鏡花は記憶をたどりながらもその二人の情報を引き出そうとしていた


主に静希の護衛をしていたという二人で、悪魔同士の戦闘の中ではそこまで役に立てなかったものの、かなり協力してもらったと静希が言っていたのを思い出したのだ


「その節はうちのバカがお世話になりました、何やら厄介な面倒事に巻き込んでしまったようで」


「いやいや、こっちもいろいろ勉強になったから構わないよ・・・ところで・・・君たちはその・・・」


「・・・彼の『同居人』についてどこまで・・・」


人外たちの事情をほぼ正確に知っている大野と小岩は、同級生たちがそのことを知っているのかどうか気になったのだろう、声を小さくして鏡花と明利の方に視線を向ける


その質問に特に何も答えることはなく満面の笑みを浮かべた後に静希の方を向いてから表情を崩して大きくため息をつく


その反応だけで二人は理解してしまった


少なくとも鏡花は知っている、そして明利もどう答えたらいいのか迷っているところを見ると知っているだろうことは理解した


「なんというか・・・その、若いうちから随分と大変な思いをしてるみたいだね」


「えぇ本当に・・・どうしてこんなバカと一緒の班になっちゃったのか・・・」


「おいおい鏡花、俺だって好き好んであいつらを引き入れてるわけじゃないんだぞ」


「毎日当たり前のように過ごしてるあんたが言っても説得力ないのよ」


鏡花の言葉にそれ以上反論することができないのか、静希は少し項垂れてしまう


口喧嘩ではこの班最強は鏡花だ、はっきり言って勝てる気がしない


作戦などを考えるときはしっかりと言いくるめられるのにこういった場所では鏡花の正論は本当に胸に突き刺さる


「あ、あの、お二人は今日はお仕事できたんですよね?」


「そうだよ、学生能力者で有能な子たちをスカウト・・・もとい軍部の仕事に興味がないかのアンケートを取りにね」


「早い話、有能な子たちに声をかけて引き入れたいのよ、有能な子は本当に早く就職先決めちゃうからね」


二人の話をまじまじと聞く明利だが、それにしても一年生の時から声をかけるのは些か早すぎるのではないかとさえ思える


静希は例外として、優秀な能力者と言えば確かに心当たりはあるが、進路が決まっている人間などほんの一握りなのだから


「優秀だったら、鏡花さんは優秀だよね」


「やめてよ、称号持ちでもないんだから・・・」


明利の言葉に鏡花は頬を掻いて軽く否定しているが、やはり優秀と言われるとうれしいのだろう、悪い気はしていないようだった


「・・・あれ?二人は同級生なんだよね・・・?」


「?はいそうですけど」


「なんでさん付けなの?同い年なのに」


大野と小岩の言葉に鏡花と明利は顔を合わせてどうしたものかという顔をしている


明利が鏡花のことをさん付けで呼ぶのは特に理由はない


強いて言うなら今まで変えるタイミングがなかったからでもある


「そういえばそうね・・・これを機に呼び捨てとかにしてよ」


「え?よ、呼び捨て・・・?」


明利は今までもずっと静希達に対してでも君付けしてきている、ここで呼び捨てというのは多少ハードルが高いのだろうか


「じゃ・・・じゃあその・・・鏡花・・・ちゃん・・・?」


顔を赤らめながらそうつぶやくと、にやけた顔をした鏡花は明利を抱きしめて拘束してしまう


明利のちゃん付けがツボに入ったのだろうか、緩んだ顔が元に戻らないようだった


「そうだ、せっかくみんな授業している間に来てるんですから、城島先生の授業でも見に行ったらどうです?優秀な生徒探すって言ったって、店を手伝ってる奴らたくさんいますから、先生に聞いた方が早いですよ」


静希の言葉に大野は乗り気でそのほうがいいかもなと思案していた


なにせこの一般公開中の中でこういった仕事にいそしんでいるのは確かに優秀な生徒の証でもある


だがそれでも各クラスに三班、各クラスから十二人も選抜されるのだ、その中から優秀な人物を探し当てると言われても現実性に欠けている


「あー・・・先輩の授業かぁ・・・」


都合よく城島の知り合いというか後輩である小岩はこの提案にあまり乗り気ではなかった


知り合いから優秀な生徒の噂などを聞くことができればその生徒を探すという効率の良い方法でチェックできるのだ、こちらの方が良いとも思われるのだが


「あんまり先輩のそういうところって見たくないんだよなぁ・・・なんというか・・・思い出しそうで・・・」


「・・・そういえば小岩さんって城島先生の後輩って言ってましたけど、高校の頃の後輩なんですか?」


静希の言葉に小岩はそうだよと呟いてさらにため息をついた


高校の頃というと城島は帽子をかぶっていたというのを、完全奇形討伐時の写真から思い出す


表情がうまく読み取れなかったせいもあって当時の彼女がどのような性格だったのかは想像できなかった


「あ、あの、高校の頃の城島先生ってどんな感じだったんですか?」


「あ、私も気になる、どんなんだったんです?」


明利の言葉に追従するようにいちゃついていた鏡花が小岩に食いついた


なにせ自分たちが知っているのは今の城島だけだ、しかもその姿もほんの一部であったことがこの前に明らかになったため、新しい姿に興味を示してしまうのだ


「当時の先輩かぁ・・・今は随分と丸くなったけど、昔は結構とげとげしてたよ」


「・・・とげとげですか・・・」


もちろん物理的にではなく精神的というか性格的なことなのだろうが、今のあの状態でも丸くなったのかと思うと静希達は戦慄してしまう


彼女が高校だった頃というとだいたいどれほど前だろうか


少なくとも十年位前だと思うが、そうすると彼女の弟の聡が生まれて少し経ったあたりだろうか


「あの時の先輩はね、なんていうか戦ってストレス解消してるみたいだったよ、前衛でもないのに無理やり前に出て行って思い切り目標殴り飛ばしたりとかしてたしね」


城島のことを思い出している小岩は懐かしそうに目を細めていた


城島の能力は重力の操作だ、強い重力を作ることも、その向きを変えることも容易にできる


そんな能力を持っている人物が好き勝手に暴れていればどうなるか、想像に難くない


恐らくは両親の再婚と、新しくできた自分の弟にどう接していいかわからずにイライラしていたのだろう、そのフラストレーションを訓練と実戦にぶつけるあたり城島らしいというべきか


「殴るって・・・普通に肉体でですか?」


「ううん、昔先輩は大きな棍棒?ハンマー?みたいなのを使ってたんだけど、重力操作して思い切り叩き付けたりしてたから・・・結構な威力だったよあれは」


城島が大きな鈍器をもって襲い掛かる映像を想像して三人は顔色を悪くする

重力という特性上、重いものを持ったりするのは容易だろうし、それを振り回すのも簡単だ


質量自体が減るわけではないために威力が減るわけでもないし、重力を操作してスイングの速度を上げて威力を上げることだってできる


以前トンファーを使っていたことがあるが、彼女の能力は鈍器を用いた打撃との相性がいいのだろう


全力を出していないというあの時の言葉には何の偽りもなかったということだ


彼女の戦闘方法を見て、ずっと前衛だと思っていたが、彼女の能力は発現、しかも肉体強化などはほとんど入っておらず、防御に関してはあまり有効とは言えない能力をしている


なのにあれほどの前衛としての格闘術を習得しているのは、恐らく高校の荒れていた時代の名残なのだろう


前に行って思い切り体を動かす、痛みを与え与えられ、少しでも苛立ちを抑えられるように


城島の過去の話を聞いたとき、彼女と彼女の家族の話で、そして父が再婚して弟ができたと言ったあの時の彼女の目は穏やかだったように見えた


だから何の問題もなく、ただ幸福になれた話だったんだなと思っていたが、やはり新しい家族を迎えるというのはそれだけでは済まないのだろう


彼女の場合、複雑な事情があるだけにその傾向は顕著だ


静希達が想像できなかった苦悩があったのだろう


そして恐らくそれはもう解決し、城島はようやく平穏で幸福な日々を手に入れることができたのだろう


小岩は多分だがそれを知らない、丸くなったと言っても、指導の時には昔の名残が出るのではないかと思っているのだ


実際、静希達が直接指導を受けるとき、城島はそれなりに厳しい


だがつらく当たるというわけではない、八つ当たりをするというわけでもない


彼女は教師だ、昔とは違い、今は教師だ


「まぁ昔はどうあれ、一度は見てみてもいいと思いますよ、先生の授業も、めったに見れないんだし」


「うぅん・・・まぁ考えておくわ」


年が明けてから数日、皆様如何お過ごしでしょうか


きっと自分はおしることかを食べていると思います、おしるこ大好きです


これからもお楽しみいただければ幸いです

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