ついに支えきれなくなった「日本一の私鉄」
■〈消滅要因(3)〉「親会社補填」の限界
そしてついに、親会社である近鉄が球団を支えきれなくなる。バブル期の不動産投資が仇となり、1.7兆円もの有利子負債を抱えてしまったのだ。
かつて球団とともに、近鉄グループの象徴であった「あやめ池遊園地」「OSK日本歌劇団」「銀座近鉄ビル」「am/pm(エリアフランチャイズ)」などが、次々と閉鎖・売却される。
さらに、バブル期に数々のゴルフ場を開発した「大日本土木」も、2700億円の負債を抱えて破綻(現在は再建)。「けいはんな線」延伸、「阿倍野再開発」などの成長戦略を掲げていた近鉄の足を、大きく引っ張ることになる。
なお、大日本土木の一部関係者には寝耳に水の破綻劇だったようで、「民事再生申立の計画案を白紙のまま申し立てた」(週刊ゴルフダイジェスト2002年7月号 )と、当時の弁護士が語っている。この頃には近鉄本体の株式が投げ売り状態となっており、グループが一寸の猶予もないほど追い詰められていた様子が伺える。
鉄道事業も1992年から乗客減少に転じ、99年には「営業利益277億円、当期純損失45億円」に転落してしまう。エリアが広すぎて赤字ローカル線も多く、不採算の北勢線、伊賀線、養老線などをなりふり構わず近鉄から切り離し、第3セクター会社や他の私鉄に移管していく。
球団最後の二軍監督となった石渡茂氏が、スカウト時代に「近鉄は日本一の私鉄なので、プロ野球撤退や破綻にはもっとも遠い存在です」と選手に伝えていたという環境は、もろくも崩れ去った。
グループはもはや近鉄バファローズを存続させている場合ではなく、事態は「近鉄のプロ野球撤退」、最終的には「オリックスとの合併」に向けて動き始める。