4年連続20本塁打以上を放ち、主力として活躍した鈴木貴久選手(写真:時事)

消滅のいきさつ

■〈消滅要因(1)〉万年赤字体質

近鉄バファローズの赤字体質の根本原因は、「観戦客の少なさによる低収入」にあった。特に、かつての本拠地である藤井寺球場(跡地は「四天王寺学園」など)は、大阪市の一大ターミナルである梅田・難波ではなく、天王寺から乗り換える「近鉄南大阪線」沿線(大阪市の南隣・藤井寺市)にあり、交通の便が良くなかった。

球場内の設備も、あまり入りたくないトイレや古めいた客席など古色蒼然として、野球ファンでないと「行きたい!」とは思わないようなつくりであった。

選手向けの設備はさらに悲惨で、「ロッカー室が不衛生すぎて蜂窩織炎が流行」「ユニフォームは使い回しでツギハギだらけ」「人工芝の整備がプロのキーパーではなく普通のおじいちゃん」など、もはや一般的な職場環境の体をなしていなかったという。このあたりの“藤井寺伝説”は、球団OBの野球解説者・金村義明氏の証言(通称「野球漫談」)で世間に知られているため、詳細は省こう。

藤井寺球場跡地に建つ四天王寺学園(筆者撮影)
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消滅から20年が経過したいまも根強い人気を誇る(今年10月に発売されたばかりの『ベースボールマガジン別冊紅葉号』)

もうひとつの拠点であった「日生球場」(跡地は「もりのみやキューズモール」)はJR大阪環状線・森ノ宮駅前という絶好の立地にあったものの、こちらは収容人数が2万人しかなく、藤井寺球場と同様に老朽化が激しかった。

セ・リーグの読売ジャイアンツ(巨人)が年間350万人の観客を動員している時代に、近鉄バファローズは年間100万人前後。もちろんチケットの売上収入は少なく、近鉄本社の幹部によると、「球団は「近鉄パールス」(創設時)から、ずっと赤字」であったようだ。

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