この先、おじさん視点があるぞ
『戦闘には慣れているし、今も武器を持っている』と言う彼を、しかし貫いたのは怪訝な視線だった。
「武器を?その、何も持っていない様に見えますが…」
目立たずに隠し持てる様な、小さい銃でも持っているのかな?
…考えるのは後にしよう。今は襲撃をどうにかするのが優先。ヘイローを持たない彼を前線に出す訳にはいかないので、アヤネちゃんと一緒に後方で待機しておく様に伝える。
「…それで、出来ればでいいから、星見君には後衛で私達を支援してほしいな〜」
弾丸からは私が護るからさ。
私がそう言うと、彼は『分かった』とばかりに頷いた。
……この時の私は、見落としていたのだ。
ヘイローのない外の世界で、『戦いに慣れている』彼が、敵に対してどんな対応をするのかを。
「オラオラァ!!今日こそ皆殺しにしてやへぶぅ!?」
喚き散らすヘルメット団の一員に、私の放った散弾が突き刺さる。
『敵、後少しです!』
「了解、シロコちゃん、こっちだよ〜」
「ん、了解」
いつものように敵を殲滅して行く私達。
そこに、アヤネちゃんの焦った様な声が届く。
『えっ!?星見さん、そんなのどこから出したんですか!?』
「えっ?なになに、どうしたの〜?」
通信に気を取られた私の一瞬の隙をつき、物陰から敵が飛び出してくる。
「オラッ死に晒せぇッ!」
(やばっ…!)
回避は困難。
来たる衝撃に身を備えた私の耳に、何かが風を切って飛んでくる音が聞こえて。
スコーン!
「痛ったぁ!?」
続いて、悲鳴と何かがカラカラと地面を転がる音。
地面に目を向けると、そこには矢が転がっていた。
…????なんで?誰が弓矢なんて使ってるの?ここはキヴォトスだよ?なんで銃を使わないの?
「アイエエエ!?ナンデ!?弓矢ナンデ!?」
「何でキヴォトスに弓矢があんだよ!?」
「文明はどうなってんだ文明は!?」
突然の原始的な武器の登場に、混乱に陥るヘルメット団達。
矢が発射されたであろう方向を見ると、そこには星見君の姿が。
「ちょっと!?何で弓矢なんて使ってるの!?銃は!?」
「銃?君たちが使っている、筒状の武器の事か?それなら持っていないし、見るのも初めてだ」
待って?外の世界って銃が無いの?狭間の地って一体…?
混乱する私をよそに、彼は二の矢をつがえる。
正気を取り戻した敵───最初に彼に射抜かれた子だ───が、私に銃を構えていたからだ。
スコーン!
またしても、小気味よい音が響き、今度は眉間の辺りに命中する。
「グヘェッ!」
「…ん、ナイスショット」
「うへ~、何だかもうどうでもよくなって来た…」
ふと、彼に射抜かれた子の様子がおかしい事に気付く。
顔色は青ざめて、息は浅くそして荒く、目の焦点が合っていない。
彼の放った矢が目に留まる。さっきは気付かなかったが、その鏃には、ぬらりとした、緑色の液体が付着していた。
……これは、まさか。
「隊長?どうしたんすか?隊長!?隊長ッ!!?」
「テメェらッ!隊長に何をしたッ!!?」
「ちょっと!?ねぇ、大丈夫!?おじさんのこと見える!?…星見君ッ!」
私は大慌てで彼を呼ぶと、彼は怪訝そうな表情を浮かべてこちらへやって来る。
「星見君…まさか君、毒矢を使ったの!?解毒剤は!?持ってるならすぐに使って!」
彼は本気で訳がわからない、といった顔で、彼女の口に何かを押し込み、飲み込ませた。途端に安らぐ表情。効果は、しっかりと発揮されているようだ。
「おいテメェ!何で毒矢なんて使いやがった!隊長を殺す気かよッ!?」
ヘルメット団からの、その叫ぶ様な問いに、彼は眉一つ動かさずに答えた。
「その通りだが、それがどうした?」
瞬間。空気が凍り付いた。
同時に、私は思い出す。彼は、ヘイローのない場所で戦ってきたことを。それはつまり、
つまり。彼にとって『人と戦う』ということは。
───『相手を殺す』という事なのだ。
ヘルメット団が撤収して行く。隊長を抱えて、まるで彼から逃げ出すように。
途轍も無く重い空気の中、私は彼に向けて口を開く。
「星見君。大事な話だから、ちゃんと聞いてね?君が元いた狭間の地が、どうだったかは知らないけど…此処では───キヴォトスでは、殺人は禁止されているんだよ。もしも君がここで人を殺してしまうと、おじさん達にとても迷惑が掛かっちゃうの。だから、一緒に戦ってくれるのはありがたいんだけど……人を殺しちゃ、駄目だからね」
「それは…すまなかった。恩人である君たちの頼みだ。殺人はしない。約束する」
「うん、ありがとう。…さて、暗い話はここでおしまい!さて、帰ろっか」
「ところで、一つ聞きたいのだが」
「はい、なんでしょう?」
「借金の返済についてだ。持ち物を売却するのが駄目ならば、どうやって金を稼げば良いのかと…」
「ん、そんなの簡単。上手く行けば五分で一億円稼げる。…教えてほしい?」
「待ってくださいシロコ先輩、私何だか嫌な予感が…」
「簡単な事。───銀行を襲えば良い」
「やっぱり!なんて事教えてるんですか!?」
「…?すまない、銀行とは何だ…?」
「そこから!??」
「…銀行って言うのは、お金を預けたり引き出したりできる施設の事よ」
「そう。つまり、大量のお金が集まるって訳。だから、そこを襲えば大金が手に入る……かも」
「はぁ…シロコ先輩…」
「なるほど、名案じゃないか。いつ行く?私も同行させてほしい」
「星見さんまで!?駄目です!犯罪じゃないですか!」
「犯罪だと!?馬鹿な、キヴォトスでは拾ったものは拾った場所や手段を問わず自分のものにならないとでも言うのか!?」
「待ちなさい!あんた、どんな環境で育ったらそんな倫理観になるのよ!?」
「そうですよ!稼ぐなら、真っ当な手段で稼がないと…」
「では、その真っ当な手段とは何だ?」
「う〜ん、そうですね……アルバイトをするとか…」
「アルバイト?」
「簡単に説明すると、一種の労働形態ね。働いた時間の分だけ、給料が支払われる…みたいな?でもあんた、身分証明書持ってるの?無いとどこも雇ってくれないわよ?」
「…それならさ、やっぱり星見君もアビドス高校の生徒になろうよ。そしたら、おじさん達が発行できる生徒証が、身分証明書の代わりになるよ〜」
「えっと…でも、いいんですか?星見さんの年齢とか…」
「良いのか?何か資格が必要だったり…」
「大丈夫大丈夫!入学に当たって特に資格なんかは必要無いし、年齢も…まぁ、私達と同年代に見えるし。それに…」
「それに?」
「先輩として、星見君に社会生活の何たるかを、みっちりと叩き込みたいからね〜」
「お手柔らかに頼む…」
『ヘイロー』
キヴォトスの住人達が、頭上に浮かべる光輪
個人によって、形や色、大きさが異なる
光輪は持ち主に力を与え、また肉体を途轍も無く頑丈なものにする
だからこそ、キヴォトスの住人は死を恐れるのだ
それが、普通には起こらぬ故に
『褪せ人の老指』を使って、この作品にメッセージを残しますか?
メッセージを書く
もしも主人公がやって来たのが、原作開始前(アビドス編が始まる前)のゲヘナだったら?
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給食部ルート
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激長!便利屋ルート
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やっぱり激長!風紀委員会ルート
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全部書いて♡