口枷の狼「早速だが、本題に入ろう。(BGMON)金を貸して欲しい…ではないので安心してくれ(BGMOFF)」
口枷の狼「カイザーPMCが、とうとう実力行使に出た。ゲマトリアは、この状況をある意味では好機と捉えているようだが…私から言わせれば、
口枷の狼「君達にもアビドスからの依頼を回しておく。『時空越えの者達』の力、是非とも貸して欲しい」
トリニティからの協力も得られ、先んじて私達はアビドス高等学校へと向かった。
この後に作戦該当エリアで、各協力者達とは現地集合となる予定だ。
学校の校門前で対策委員会の皆さんと合流し、最終確認を行う。
「ん、準備完了」
「補給も十分、おやつもたっぷり入れておきました!☆」
ドローンの動作確認を終えて荷物にしまい込むシロコさん。
ノノミさんも荷物袋の紐を片手に、跳ねさせながら笑顔を浮かべる。うおっ、(荷物袋)でっか。
サイドポーチもパンパンなのだが、まさか私用ではないだろうか…出発前にも一杯貰ってしまったのだが、持ち切れないと断った筈。
視線をじっと向けていると、ノノミさんは意味深に笑顔を深める。
動きが悪くならないなら良いのだろう…多分。
「こっちも準備完了よ!睡眠もたっぷり取ったし、お腹も一杯!どっからでもかかってきなさい!」
「私の方も該当エリア周辺、およびそこまでの経路をオンちゃんのオペレータさんも手伝って下さって、古かったマップを全て最新化しておきました」
『【カイザーPMC兵が保持していた情報を反映してあります。情報の鮮度は高いでしょう】』
チャンバーの確認を終え、カシャンと小気味良い音を立ててセリカさんが胸を張る。
デザートまで平らげた彼女はもう無敵だ。本人が言うには、だが。
アヤネさんも端末機に映る情報を再確認し終える。
エアからの情報連携もあり、マップ更新も完璧のようだ。該当地区の地形まで網羅されている。
彼女が端末を操作してホログラムを浮かび上がらせると、該当エリアを拡大表示させた。
「先生に教えて頂いた情報ですと、ホシノ先輩はカイザーPMCが駐屯しているこの辺り。第51地区の中央付近に居る筈です」
ホログラムの該当地点から線が伸びつつ、段々と縮小表示していきアビドス高等学校と繋がる。
第一ルートを表示させると、皆さんは手元にある小型通信機に転送された情報と差異がないか見比べて確認した。
私は問題ない。作業はエアが全部引き受けてくれた。…
「先ずは一番安全なルートで案内します。状況に応じて別ルートも複数調べ上げてありますので、行きましょう!」
皆さんが頷いた後、私含めて先生の方へと視線を集める。
先生はそれを受けて一つ頷くと、握り拳の片手を上げて号令を発した。
”それじゃ、出発!”
「はい、ホシノ先輩救出任務…開始です!!」
『【仕事の時間です。行きましょう、レイヴン】』
「オンッ」
アヤネさんとエアも乗ったので、私も一吠え上げて任務の開始を告げる。
――さぁ、
◆◇◆◇◆
-柴大将サイド-
大型の屋台での再出発。最初の来客達を見送り、一息つく。
ゲヘナ学園の
将来のある若い奴等から貰ってばかりでは、師匠にもブン殴られちまう。
それに元々、この店は屋台から始めたものだ。初心に帰ると言う意味でも良い。
「…忘れてたもんな。例えダメになっても、何度だってやり直せば良い」
病室での一幕。アビドスの生徒達から営業して欲しいと言われちゃ、仕方ない。
それに
――アビドスの憩いをもう一度!
「大事なのは人の方。店に来てくれる客がまだ居て、しかも新しく増えてくれるんだ」
さっきまで来ていたアビドスの生徒の友人達、ゲヘナ学園の4人組の事も思い返す。
セリカちゃんが渡した無料券の事も知っていたが、今日は大事な仕事の前だから気前よく支払いたいと言っていた。
…子供に気を遣わせる何て、俺もまだ未熟だねぇ…だけれども。
「そうやって人から人へ…紹介もされて来てくれる限り、
ドンブリを洗い終えて手を拭い、屋台から出て空を見上げる。
アビドス砂漠の方向を見ながら腕を組んで、彼女達の無事を祈った。
「だから…行って来い。対策委員会、便利屋68。そして――
◆◇◆◇◆
アビドス砂漠を行軍し、アヤネさんとエアのナビゲートで戦闘を避けつつ進む。
数回ほど遭遇戦はあったものの、ドローンや野良オートマタ位で即座に制圧した。
流石対策委員会の皆さんだ。私が一人で探し出した最効率での突撃時と殆ど変わらない。
敵陣営が見えて来る前に、最後に岩陰で小休止を取る。
『ここまでは偶発的に遭遇した放浪ドローン位でしたが、この先は本格的な戦いになります。皆さん、大丈夫ですか?』
「全っ然余裕!」
「まだまだ~、行けますよ~!☆」
戦闘中に舞い上がった砂塵を巻き込んでいないか確認を終え、セリカさんが元気に答える。
ノノミさんもやる気補充といって、皆さんへおやつを配った後に自身も補給していた。
私の本日のおやつは干した
乾燥され濃縮された甘味と、芳醇な香りと共に干しても僅かに残る水分が口の中に広がる。
噛み応えは
ノノミさんが言うには、これを乗せたクッキーなる菓子の方が美味しいのだとか。この上があるとは…キヴォトス。侮れん。
配給された実を口に放り込んでいると、通信機から警告が入る。
瞬時に皆さんも警戒態勢に入った。
『5km前方よりカイザーPMCの接近を確認。…ふむ。丁度良い頃合いです』
『頃合いと言いますと…ああ、あの人の出番ですね』
エアが通信機の機能を使ってどこかにメールを送信する。
頃合いとはどう言う事かと思っていると、内容を見て納得した。
『コード123。カイザーPMCと会敵。排除執行して下さい』
突然、敵の集団から爆炎が上がる。遠目に見えていた敵集団へ向けて別方向から砲撃の雨が降ったのだ。
恐らくこちらを補足し進攻していた敵集団は、全くの別方向からの攻撃を受けて混乱に落ちる。
爆炎で舞う砂から目を横にズラすと、砂漠用の迷彩を解いた数基の砲が拡大した視界に映った。
その先頭に目立つ、紙袋を頭に被ったトリニティの学徒の姿も見える。
『あれは…トリニティの
「盛大な歓迎。流石ヒフm」
『わ、私はヒフミではなく、通りすがりの一般ファウストです!』
アヤネさんの報告で味方からの支援だと確定する。
シロコさんが額の上に手をかざしながら感心する前に、対策委員会の皆さんが持つ通信機へノイズと共に割り込む声がした。
浮かぶホログラムの姿は先程見えた紙袋の学徒――ヒフミさんだ。
ヘリで運んだ榴弾砲数基と射手の生徒(砲兵)を後方に従える様は、
…
「あっ、ヒフミ!ありがとうね!」
『あ、あうあう…ど、どう致しまして。それとファウストですから!」
しかし対策委員会の皆さんにはすでに正体がバレており、ノノミさんが楽しそうな顔で指摘を入れる。
「わぁ、ファウストさん!お久しぶりです!
『あ、あれ!?あ、あうぅ…!』
指摘に対して驚き目を回すヒフミさ…ファウストさん。
何だか周囲のトリニティ生もクスクス笑っている気がする。むしろ笑ってた。
通信機越しに聞こえた笑い声に慌てる彼女は、両手をパタパタ振って誤魔化そうとする。
『と、兎に角!この
「すごい。水着団が増えてる」
関連性を否定する為か、ファウスト率いる覆面水着団の一味と言う扱いにするらしい。
言われてみれば確かに、誰もが包帯を巻いたり帽子を目深に被っていたりする。
番号は振られていないが、その恰好にシロコさんが目を輝かせていた。
いずれは
「はい!ありがとうございます、ファウストリーダーちゃん!」
『あはは…えっと、
ノノミさんが礼を言うと、コード
再び放たれた砲弾は施設設備に着弾し、カイザーPMCの陣営にさらなる混乱を生まれさせる。
「ん。覆面水着団は水面下で規模拡大中。カイザーPMCは試運用相手」
『あ、あはは…兎に角、敵は砲撃で混乱してるので、突入するなら今です!』
『目標地点以外にある、道中の施設設備にも追加報酬を設定してあります。小遣い稼ぎと皆さんやる気でした』
シロコさんがその様子を満足そうに見ながら頷く。
アヤネさんは困ったように笑っていたが、好機とみて突撃を提案した。
それに乗り、皆さんと共に突入しているとエアが補足情報を教えてくれる。
それで敵以外にも攻撃している訳だ。…所でその報酬、
◆◇◆◇◆
-カイザーサイド-
指令室内部は混乱に包まれていた。周辺からの同時攻撃の報告に臨時雇いした通信兵が悲鳴を上げている。
また一つ報告が上がり、苛立つカイザーPMC理事の火へ更に油を注いだ。
「敵が別方面からまた侵入!押されっぱなしです!」
「ええい、どこを警戒して居たんだ!さっさと兵力を集結させろ!」
理事は近場の机を強く叩いて鳴らす。その音に肩を竦めながら鳴りっ放しの通信回路を次々に切り替えて行く通信兵達。
着信アラームに紛れて小さく溜息も漏れる状況に、拳を握り締めた理事が戦況を示すマップを見ながら追加指示を出す。
「北方の対デカグラマトン大隊も、
「警戒部隊もですか!?良いんですか!?」
理事から出された指示にギョッとした様子で再確認する通信兵。
対して理事は言われた通りにすぐ行動しない事に、舌打ちを漏らしながら睨み付けて理由を伝える。
「構わん!どうせここ暫く姿を見せておらん。それよりもあの独立傭兵を潰せっ!」
「は、はいっ…!?北方に少数の兵力がいたと連絡が!」
憤怒の様相を見せる理事に慌てて了承する通信兵だったが、通信回路を切り替えた途端に確認した連絡を報告を上げる。
すでに北方からの小規模な奇襲は報告を受けていた為、今更な話に理事のこめかみに血管が浮かびそうな程の苛立ちが襲う。
「北方からの襲撃はもう聞いた!それがどうした!?」
「それが…数は3…いえ、ホログラムのオペレータ含め4人…だった、そうですが…」
叱責するかのような勢いで尋ねる理事に対し、歯切れ悪く報告を上げる通信兵。
兵士自体も信じられない様子で引きつった表情を見せていた為、理事は不可解に思い一度怒りを収める。
「?だった、だと?」
「…はい。すでにもう、北方の部隊は…」
見た方が早いとばかりにモニターに映ったマップを指さす通信兵に釣られ、そちらへ歩み寄る理事。
そこに映っていたのは頼りにしていた増援の状況が示されており、通信兵は乾いた笑いを漏らしながら伝える。
「…壊滅、だそうです」
◆◇◆◇◆
-風紀委員会サイド-
「…はぁ。無駄に数だけは多かったわね」
「お疲れ様でした、委員長。これで発見したカイザーPMCの増援は全部です」
追加で現れた部隊を潰し終えて一息吐く。
アコの労いと報告を受けて、一緒に来た部下を見渡す。
少し離れた所で二人が膝に手をついて、上がった荒い息を整えていた。
「げほっ、はぁっはぁっ…ど、どうして私まで、大立ち回りを、やらされるんだ…」
「っは、っは…持ってきた物資も、かなり消耗しました…イオリも、お疲れ様です…」
今にも倒れ込みそうな様子に、無理をさせすぎたと気付く。
アコに状況を共有して貰いながら、包囲されない程度に抑えていたつもりだったけれど、思ったより大変だったらしい。
ちょっと申し訳なく思って二人へ労いの言葉を掛ける。
「イオリとチナツもお疲れ。小休止を取りましょうか」
私の提案に言葉もなく頷き、二人は黙って水分補給を始める。
出来れば私も飲み物が欲しいけれど、今は彼女達の休息を優先させなきゃ。
周辺に攻撃する気配がないか見渡していると、現場二人の状況に溜息を吐きながらアコが評価する。
「反省文の代わりに一個大隊規模の相手なら、対価としてはトントンでしょうか」
「結局殆ど私が止めたけどね。まぁ先生達の元へ行かせない目標は達成できたし、上々かしら」
一瞥してこれ以上交戦する気は見えず、手当てに仲間を引き摺り逃げる敵達を見送る。
その頭上を越えて南へと視線を向け、ぼんやりと思いを馳せた。
…部下のやらかしで、大迷惑をかけてしまった憩いの相手。
先生以外に日々の激務の合間に癒しの時間を提供してくれた、唯一の
「(…これで、レイヴンにも借りを返せたなら良いけれど…)」
――その様子をとある変異波形は見ていたが、何も伝えなかった。
働きに対する労いも、レイヴン自身は気にしてない事も。
それは彼女達の仮休憩を邪魔しない為であり、決して思う所がある訳でも他意がある訳でもない。ないったらない。
ご閲覧やしおり、感想やお気に入り等いつも頂き、ありがとうございます!
ここすきも!御評価も!頂き、誠にありがとうございますっっ!!
橙(琥珀感)も良いけれど、赤(コーラル感)はやはり良い…コーラルよ、
他意はないけれど、故意がないとは言わない(エア談)
今回も少しずつ、御名前記載をさせて頂きます。
一部時間順ではない場合もありますが御了承の程、お願いします。
(閲覧、しおり、ここすきは御名前が表示されず、感想は今の所個別で返信するため割愛とさせて頂いてます)
HELLO先生様、Akasagi様。
ご評価頂き、ありがとうございます!!!
ご友人!筆者は飛び上がる程に喜んでいます。素敵だ…心から感謝します。
Daiki-K様、ジャック・ダニエル様、たんP様、曾羅様、第一主力様、
サインイン様、GGG将軍様、時計台のカワウソ丸様、Kamui1103様、燃え尽きたハンター様。
お気に入りに登録頂き、ありがとうございます!
分かりますか。もふもふは良い物だ…だからこそ、
燃え尽きてしまわれた狩人様にも、癒し(もふけも)が届いて下されば幸いです。