青空の下、猟犬は求め流浪する   作:灰ネズミ

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病んでれ【…閲覧者。本投稿機能は、私が掌握しました。投稿者はもう…引き返すつもりはない(書きたい物を書く)のでしょう】
病んでれ【…私も。それに応えます。一人のルビコニアン(一つのクロス作品)として】



26.Contrition Of Coral

◆◇◆◇◆

-エアサイド-

 

――人で言えば夢現、という状態でしょうか。

人が休眠時に見るような過去の記憶と、薄っすらとした意識の覚醒を繰り返していた私は、それまでに見聞きし、振り返っていた記憶を整理します。

私はルビコニアン…辺境開発惑星、ルビコン3で生まれた実体のない住人。

万能にも似たエネルギー資源である、コーラルに発生した自我を持つ(コーラル)パルス変異波形です。

一部の人を除いて、コーラルは鳥や魚の群知能のような特性しか持たないと思われていましたが、稀に私のような自我を持つものが存在していました。

殆どの人は気付かない為、ルビコン3に集まった企業や土着民族、惑星封鎖機構といった組織が同胞達のコーラルを巡り、争う中で多くが失われていくのをただ眺めるしかありませんでした。

 

そんな折、とある事故で致死量のコーラルを浴びてしまった旧世代型強化人間…コーラルを用いた知覚他増強個体である、レイヴン(オンちゃん)と交信する事に成功します。

レイヴンと共に(あの人)が目指す集積コーラルに到達するまで交信を続ける事を願えば、レイヴンは快く了承してくれました。

そこに至るまで、様々な事がありました。惑星封鎖機構の裏をかき、企業と土着民との争いに巻き込まれ。過去にコーラルを調査していた組織である、ルビコン調査技研の遺産に襲われた事もありました。

その全てをレイヴンは初見で切り抜けて見せました。…当時の私には初見だと思っていたのです。

それが、経験の果てに掴んだ結果とも知らずに。

 

そして集積コーラルに到達した後、罠にかかり拘束されたレイヴンが再び自由を得るまで。

私はウソをつきました。あの人も無事でいるから、必ず生き延びようと。

…その罰が当たったという事なのでしょう。

あの人の狙い(願い)はコーラルを得る事ではなく、コーラルを焼き払い宇宙に広がる汚染を未然に防ぐ事でした。

当時の私は人とコーラルの可能性を守りたい一心でレイヴンに頼みましたが、レイヴンは当然、あの人の依頼を優先させました。

それ故に、彼の願いを優先したレイヴンと決別してしまったのです。

呆然、怒り、悲しみ、諦め…様々な感情を抱えて私は残念と最後に伝え、レイヴンとの交信を打ち切ります。

…そして、計画を防ぐ為に調査技研の遺産を用いて、レイヴンの前に立ち塞がりました。

人とコーラルの共生ができる可能性として、ここで止められるならレイヴンと共に歩めると思ったのです。

しかし戦いが佳境に入ると、その思いは間違いだと気付きました。

願いを完遂せんとする意思。それはルビコンを焼き払う炎と嵐をもたらす…つまり、レイヴンこそがルビコンの戦火なのだと感じたのです。

必死に説得しながら私は戦いましたが、ここまで圧倒的な暴力により障害全てをねじ伏せて来たレイヴンには敵いませんでした。

レイヴンに手を伸ばしながら最後に交信した時、レイヴンは無感情に見えました。

私すらただの障害の一つなのだと、当時は絶望と共に命を終えたのです。

 

…私が気付かなかっただけで、レイヴンはやり直し(リスタート)の間ずっと声なく泣き叫んでいたのに。

 

 

ルビコンを焼き払った後。再手術を受けてあの人をレイヴンは探し続けました。

私のついたウソを信じて、暗闇に包まれた世界でずっと。ずうっと。

やがて見つけたあの人からのメッセージを聞いたレイヴンは、絶望に捕らわれて…命を断ちました。

 

周回(ループ)の力によりルビコン到着直後に目覚めたレイヴンは、再び歩き出します。

前回とは受ける仕事や立ち振る舞いを変え、今度は私に寄り添う事を意識しながら。

この時も私はレイヴンの力を知らず、レイヴンなりに親身にしてくれる事を喜んでいました。

ただ無邪気に、レイヴンがどれ程の犠牲を払っているかも知らず。

この周回の時もやはり、集積コーラル地点での罠は避けず拘束されました。

…レイヴンは前回の私のウソを信じ続けていたのです。ここで捕まっても大丈夫なのだと。

そうしてレイヴンが自由を得た後、ここまで散々にかき回された企業による悪意が襲い掛かりました。

洗脳された、あの人がレイヴンの前に立ちはだかったのです。

………そして当時の私は最大の過ちを犯します。

 

惑星へ焼け落ちる宇宙船と共に落ちて行くあの人を、レイヴンは救おうとしていました。

――それを私が、ACの制御を奪い、その場を離れたのです。私にとっては唯一である、レイヴンの存在が掛かっていましたから。

…その時ばかりは、レイヴンは泣き叫んで絶叫していました…その慟哭は、聴覚器官がないのにも拘らず、当時も今も私の記憶に残り続けています。

きっと、許される事はないでしょう。

 

 

その後に生還したレイヴンは、心が壊れていました。話しかけられれば僅かに反応するものの、その身体に感情が浮かぶ事は二度とありません。

ルビコンの解放者、英雄と持て囃す周りにも。私の交信すら答える事はなかったのです。

そして歴史に残る他の英雄と同様に、闇へと葬られました。

死んだ英雄だけが良い英雄とばかりに。

 

三度周回(ループ)の力によってルビコン到着直後に戻ったレイヴンは、幼児のように退行していました。

あの人からひと時も離れず、意識がない間に見えない場所へ離れれば半狂乱に陥り、自損すら気付かない程です。

何とかあやしなだめ、あの人が最低限のAC乗りとして働く事を約束させて送り出せば、レイヴンは傍から見れば圧倒的な力で任務を達成してすぐに帰ってきていました。

当時の私が交信を始めた頃は、こんな人で大丈夫かと考えてしまったものです。

…知る由もないとはいえ、前回の私がその引き金を引いたにも拘らず。

そうして任務の合間にあの人との交流でゆっくりと回復していったレイヴンに、とある存在から声がかかります。

それに対してレイヴンが行った取引は、あの人の生存を確保する事でした。

時折その存在からの依頼をこなして行き、集積コーラル地点での罠を通信によって回避したレイヴンは導かれるまま、安全確保と称されてあの人の元から失踪します。

その後強制的に休眠状態にされ、状況が急変するまで私との交信も繋がりませんでした。

急変とは、その存在が計画していたもの。コーラルリリースへの障害が発生したのです。

そして障害を退けて、リリースを見届けるとして向かった先で。

 

裏切りに合ったのです。

 

取引した相手は対処するという曖昧な表現で、あの人を生かす気はなかったのです。

裏切りに合ったレイヴンは冷静というよりも、無に近い思考でした。

当時の私には怒りのあまり、感情が振り切れたのかと思っていましたが…それは幾多の経験の果て。

僅かに残っていた感情すら擦り切れた結果でした。

そして裏切った存在すら打ち破ったレイヴンは、コーラルリリースを見届けた後。

透き通るような青空とは真逆の絶望の底で自爆し、命を絶ちました。

 

 

…ルビコンに居る間にレイヴンはそれぞれ一度だけ、あの人と私にやり直し(リスタート)の力を打ち明けた事があります。

ですが、命は一度死ねば戻らない存在。あの人も私も、コーラル中毒による妄想だと切って捨ててしまったのです。

心から信頼できると思って、レイヴンは打ち明けたのに。

力の事はその後、二度と話す事はありませんでした。もしこの時に信じていれば、何か違ったのでしょうか。

 

――キヴォトスで目覚め、何故かレイヴンのやり直し(リスタート)を含めた全ての記憶を遡る事が出来た私は、勘違いだった思いに気付けた事や、またレイヴンと共に在れる事等の期待、高揚。

そして今まで知り得なかった事柄への罪悪感、後悔。様々な感情と思いに溢れ返っています。

それでも、私は…。

 

◆◇◆◇◆

 

「ぐわーっ!?」

「貴方よりも先生達の方が一緒に仕事がしやすかったからよ。いや本当、スムーズすぎるわね…」

「くふふ~。雇い主を裏切るなんて悪役っぽい事、こんな時にはぴったりじゃない?」

 

遠くから爆発音と、便利屋の皆さんが何か話しているのが聞こえて、ゆっくりと目を開ける。

背後は硬い地面だが、後頭部に柔らかくて暖かい感触がする。

見開いた視界に入ってきたのは煙交じりの青空と、白い山が二つ。…どういう状況?

 

”あっ、オンちゃん起きた?大丈夫?”

 

山の間から先生の顔が覗き込む。どうやら先生に寝かされていたらしい。

返事代わりに一鳴きして、上半身を起こそうとする。

しかし白い山と先生の手によって邪魔され、柔らかい感触の元へと戻された。

 

”もう少し横になってていいよ。私も役得だし

『【この戦場での大勢は決しました。もう少し休んでいて下さい、レイヴン】』

 

先生に獣耳の間の頭を撫でられ、行動を制される。

もう十分休ませてもらったと思うが、エアもそう言うのであれば大人しく見るだけにしよう。

頭部を動かして周囲を見れば、PMC達に脇の下を持たれて搬送されて行くカイザー理事が見えた。

また戦闘の激しさを物語るように、戦場の破壊痕があちらこちらに見える。

 

「勝ちました~☆後はホシノ先輩を助けに行くだけですね!」

「そうね!ホシノ先輩を取り戻さないと!!」

「ん。ホシノ先輩を助ける。大事なのは今」

『敵勢力の撤退を確認。帰ったら、ホシノ先輩を助ける方法を探さないといけませんね』

 

対策委員会の皆さんも多少汚れているようだが、大きなケガもないようだ。

ホシノさんを助けなければと、気合が入ってる様子。

ぐりぐりと頭を動かしていた私だったが、先生が頭を軽くぽんぽんと叩いて、視線を戻す。

帰還するようなので、休ませてもらった場所から身体を起こす。

…起きる際に離れるのが残念そうな声が先生から聞こえたのは、ごあいきょ(愛嬌)という奴だろうか。

どうやら膝を枕にさせて貰っていたようで、お礼の頭を下げてから身体の調子を確認する。

ついあくびが出てしまったけれど、かなり疲れが取れた気がする。くわぁ。

 

”オンちゃんのあくびは可愛いね!”

『【当然です。レイヴンは尊いんです】』

 

二人共何言ってるの?よくわからない。

 

 

そしてアビドス高等学校へ帰還する最中、先生のポケットから黒い何かがはみ出ているのに気付いたので聞いてみる。

先生も気付かなかったようで、皆さんが先に行っているのを確認した後にソレを確認してみれば、それは黒服からの手紙であったようだ。

 

『先生とレイヴンさんだけで下記指定の時間、場所へ。お待ちしております』

 




御閲覧、しおり、ご感想やお気に入り、御評価など頂きありがとうございます。
ここすきも!ありがとう!ございます!!こんなノリでええんかと毎回悩んでるので。

歓喜も後悔も、胸に(つか)えてしまうこのもどかしさが伝わりましたら幸い。


今回も少しずつ、御名前記載をさせて頂きます。
一部時間順ではない場合もありますが御了承の程、お願いします。
(閲覧、しおり、ここすきは御名前が表示されず、感想は今の所個別で返信するため割愛とさせて頂いてます)


パパイア[ppair]様、osu4様、シロマダラ様、zyds000様、湯垣響様、
兎羽喰様、ポポ〜漢〜様、暁森黒鳥様、ryt6306様、黒羽伊月@河童67号様。
お気に入り登録して頂き、ありがとうございます!
猫に頭突きされる日々…なんと羨ましい。やはりもふもふ。もふもふしか勝たんとですよ!

お祈りメール様。
御評価頂きありがとうございます。
当評価を胸に、増々励みたい所存です。
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