兵装6 赤「カイザー占領下にあったアビドス自治区を巡り、ゲヘナの風紀委員会が動いたようだが。結局はシャーレとアビドス、そして例の独立傭兵に制圧された」
兵装6 赤「貴公らには、当該作品へとアクセスし、投稿中の次話を閲覧して貰いたい」
兵装6 赤「対象話にはとある存在の独白も含まれているという。確実な遂行を期待する!」
◆◇◆◇◆
-シャーレサイド-
私の知っているオンちゃんと言えば、自身を顧みない子という印象を持っている。
初めて会った時はガリガリに痩せ細っており、無所属の不良ですら健康的と思うほどの体躯だった。
そしていつも包帯を巻いていて、見かける度にどこか怪我をしている。
この前は私達を店の崩落から庇って、医療施設に運ばれるまで出血を隠し、激しい戦闘に身を投じていた。
過去は知らない。鳴き声しか話せず、コミュニケーションは殆どボディランゲージなどで伝わる程度しか交わせないからだ。
辛うじてキヴォトスの外から来た事だけは肯定、否定の二択で聞けた。
けれど、外での体験は意志が薄いと思うほど虚ろな瞳から、察するに余りある。
性格は、恐らく純朴だと思う。表情こそ変わらないものの、食べ物を上げれば獣耳など末端部位が嬉しそうに動くし、毛並みをすけば気持ちよさそうに目を細めていた。
パーソナルスペースはほぼゼロに等しく、敵意さえなければ
たまに獣臭が濃い時があるので堪能した後、シャーレのシャワー設備を勧めたりもする。
そういう意味では良くも悪くも、衛生観念が低いかもしれない。
物欲も薄く、何か欲しい物や必要な物がないかと尋ねれば、首を傾げた後に否定していた。
強いて言えばキヴォトスでの
それも結局は
それでもあの子は一度も嫌がる素振りをしなかったし、風紀委員会との一件では怒って見せるなどちゃんとした感情を持ち合わせているのは私も見ていた。
けれど、その瞬間だけは。
カイザーPMC理事が対策委員会の皆に、聞くに堪えない話をしていた中。
オンちゃんの唸り声が消えたと思って振り返った時。
まるで感情と言う仮面をストンと落としてしまったかのように、無感情で瞳からも光が失われた顔で立ち尽くすあの子がいたと認識した瞬間。
『シャーレ、対策委員会!レイヴンを止めて下さい!!』
私の目の前から、オンちゃんが消えて。
私の知らない、
◆◇◆◇◆
エアが私を止めるよう対策委員会の皆さんと先生にお願いしているが、何故だろうか。
まぁ考えるのは後で良い。一番近い部隊へ
獣爪が出ているとはいえ、何故かACと同様に派手な金属音が鳴り響き、吹き飛ばしたオートマタは、そのまま小隊を巻き込んで行った。相手の部隊にシューッ!超★エキサイティン!
脳内の封鎖機構もスタンディングオベーションの出来である。ただ
身体パーツが空中分解していく様を見届ける間もなく、次のターゲットへ向けてアサルトライフルを連射する。
厄介な狙撃手を数人、行動不能に落とせた。これで少し落ち着いて行動できる。
向こうはコアパーツさえ無事なら幾らでも復帰できるが、私はAPが切れたらほぼ――というよりも確実に――
マルチロック完了の音が聞こえたと同時に、肩ミサイルを発射してまた一つ小隊を半壊させる。
【レイヴン!せめて彼女達…救援要請を出していた、便利屋の待機方向へ向かって下さい!】
エアがマーカーで合流地点を示してくれるが、私はあえて逆方向へ進攻を切る。だが断る、という奴だ。…誰が言ってたっけ?
まぁともかく。こんな場所で便利屋の皆さんを消耗させる訳にはいかない。
それに、本番であるあれの相手を直接させる訳にもいかない。あんなものと皆さんが戦う位なら私がやる。
だって私は…世界の敵なんだから。
【…レイヴン…っ】
交信で息が詰まったように、エアの声が途切れる。
やっぱりエアも起きたてで本調子ではないらしい。
ここは私に任せて、オペレートも今は止めても良い。
◆◇◆◇◆
-エアサイド-
あの時のように、私の声ではレイヴンは止まらない。
もうどれ位
レイヴンの持つ力、
しかしこれは諸刃の剣でもあります。リスタートポイントとなった場所、時間に戻るからこそ時間経過が実感し難い上に、物質的な疲弊…肉体的疲労や弾薬、装甲などは
故に、蓄積された精神的疲労に気付けないのです。
多少は回復しているかもしれませんが、死亡するまでの経緯を覚えている事は苦痛も覚えていると言う事です。
普通の人は死など一度しか経験できません。ですがレイヴンは少なくとも
それでもルビコンにいた頃は制御する人がいました。仕事を終えれば休むよう指示されていたのです。
ですが今は
一睡も、一食も。一時すらも休まずに。
すでに思考内の言葉遣いすらおかしくなる程に、疲弊しきっているのは明白です。
それでもレイヴンは止まりません。ルビコンでは、あの人の悲願を叶える為。今は、アビドスの悲願を叶える為。
これはもはや
まだ今は元旧世代型強化人間だったからか、表向きは正気を保っていますが…このままでは…。
【…レイヴン…あなたはどうしてそこまで戦うのですか。一体、何の為に…】
私は思わず交信で尋ねてしまいます。その言葉は奇しくも、先のカイザーPMC理事の問いかけと似ていました。
それに気付いて、これではいけないと思いましたが、それでもレイヴンは答えてくれました。
――あの人のエンブレムが描かれたカードを、先生が持っている。
あの人を知っているのなら、その情報を取引したいからと。
◆◇◆◇◆
『【シャーレ!エンブレムの描かれたカードを持っているのは本当ですか!?】』
エアが戦う理由を聞いてきたので答えたら、唐突に先生の持つ通信端末と交信で尋ねていた。
余りに突然だったので、びっくりして回避タイミングをミスり、カイザーPMCからのロケットランチャーを顔面セーブしてしまった。痛い。
焦っているような声色だったので、エアも驚く内容だったのだろう。私も最初はびっくり仰天だったしね。
そう考えながら、
唯でさえしーさんでいえん(
そんな事を思い出しながら敵の意識を刈り取った事を確認し、次の標的である戦車へ駆け出す。
毎回いつの間にか、対策委員会の皆さんと合流している便利屋の皆さんが相手している、別部隊の真横を抜けて
先に狙撃手を黙らせたから避けやすい。ルビコンでのウォッチポイント襲撃で相対したプラズマ大型砲台群と比べたらあくびが出そうだ。まぁもし出したとしても血反吐だったけど。
随行歩兵をアサルトライフルの乱射で蹴散らし、
車体が斜めを向いて止まっている内に、履帯をパルスブレードで叩き切る。なんちゅう脆い戦車ぢゃ。解放戦線でブイブイ言わせてた老兵も脳内で呆れている。ぶいぶいって結局どういう意味だったのかな?
爆発炎上に巻き込まれないよう、
”カード…って、どうしてそれを知ってるの?”
『【そんな事はどうでも良いんです!そのエンブレムの情報を
先生の戸惑う声と切羽詰まったようなエアの声が交わされている中、また一つ小隊を蹴散らす。
やっぱり
ACに乗っている間はここまで気にする必要はなかったのになぁ。
乗り越えなければ情報を得られないと、そう思っていたから。
”わかった。知っている事は少ないけれど、それでも良ければ”
…?一瞬、何を言っているのかわからなかった。
情報には対価が伴う。有用な物ならそれこそ破格の値段がかかる。
あの人だってコーム…ルビコンにおけるお金を積む事だってあるって聞いていた。
私にとってあの人の情報はどんな事をしてでも欲しいものだ。
だからこそ、対策委員会の皆さんが願うであろう事から、先生も望むだろうアビドスの敵を
思わず立ち止まって先生の方を振り返ってしまう。
”これが片付いて、ホシノも帰ってきたら必ず話すよ”
私の方を見ながら、先生は約束するように言ってくれた。
何で?何故?わからない。…わからないけれど。
”だから、一人で頑張らないで”
私は、休めるらしい。
視界に映る世界がボヤけて、くらりと傾く。
世界が真横になる前に、誰かが私の身体を受け止めた。
「後は任せなさい。受けた依頼は完璧にこなして見せるわ」
「あはっ。それに眼鏡ちゃんや、レイヴンちゃん達をこんなにした罪は重いよ?だから…ぶっ殺すしかないよねっ!!」
「ふふっ、ふふふ…準備はもう済ませました、アル様。予備の爆弾もまだまだ沢山ありますので…レイヴンさんの分ももてなして見せます」
「はぁ。ただ、詳細な依頼内容を聞きに来ただけのはずなのに…まぁアビドスにも、レイヴンにも世話になったしね」
頼りになる便利屋の皆さんの言葉が聞こえる中、視界が閉じていく。
完全に暗闇へ閉ざされる前。最後にエアの交信が見えた。
【…レイヴン…あなたには、休息が必要です。…それから…】
【………ごめんなさい】
思いつめたような声色で、何かを
どうして、えあがあやまるの?なにも、なにもわるく、ないよ…。
伝わったかどうかわからない内に、私の意識は暗闇に包まれた。
御閲覧、しおり、ご感想やお気に入りなど頂きありがとうございます。
体感時間がタイトル通りかは、皆様のご想像のままに。
今回も少しずつ、御名前記載をさせて頂きます。
一部時間順ではない場合もありますが御了承の程、お願いします。
(閲覧、しおり、ここすきは御名前が表示されず、感想は今の所個別で返信するため割愛とさせて頂いてます)
フュリアクター様、重量二脚装甲核兵様、R-t様、7GARA様、ririri様、
下駄ロボ様、疲れたコヨーテ様、サイドステップ様、メータールー様、B0614様。
お気に入り登録頂き、ありがとうございます!
疲れたその御心などに、少しでも楽しさをお届けできたなら幸いです。
もふもふが世界を救うと信じて!
B=s様
誤字報告を頂き、ありがとうございます!
何でボイロになっちゃったの自分…??疲れてたのか自分。
めた様。
御評価頂きありがとうございます!
御好評を頂きまして、楽しんで頂けているのならば幸いです!
オマケの話:
皆様4.5周年はいかがでしたしょうか。筆者はPU二人と、既存の周年生徒をすり抜けで新たに一人御迎えできました。
…代わりに重複が4人(PU含むと5人)いらっしゃった上、天井呼び出しが2人分も御控えしていました。
運が良いのやら悪いのやら…。