青空の下、猟犬は求め流浪する   作:灰ネズミ

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全精神「登録番号、Rb23。識別名、レイヴン。貴方の実績情報が更新されました。■■■■に対する強化権限が付与されてます」
全精神「もう一点…いえ、もう2点。いえもう3点?とにかく、貴方達をキヴォトスのウォッチポイントに認定しました」
全精神「キヴォトスにおけるテクストの変化。それを測る一つの指標となるでしょう(ニチャア)」



24.敵斥候を探知、即座に制圧。楽勝です

廃校対策委員会の部屋から飛び出した後、ふと黒服との契約を思い出してこのまま私が戦線に加わってよいのかと考える。

ゲマトリアとカイザーが密約で繋がっているなら、契約違反にならないだろうか?

 

【問題ありません。カイザーとしても関係を表には出せませんし、ゲマトリアへ直接(・・)攻撃している訳でもありませんから】

 

私が考えていると、エアが交信で大丈夫と答えてくれる。

それなら気にしないで良さそうだ。学校からお帰り願おう。クラッカー(銃火器)での盛大なお見送りも付けて。

レッドガンの隊員達のように考えながら、また廊下の角から現れたカイザーPMCに弾丸を叩き込んだ。

胴に二発、頭に一発。楽々と倒れてくれる。ホシノさんとの死闘後もあって気が抜けるような感覚がする。

彼女ならこんな雑な射撃をすれば、リコイル中(照準を戻す前)に反撃でこっちが痛い目を見たのに。

それにスキャンをすればエアがレーダーに反映してくれるし、エア経由で先生のサポート――範囲攻撃予測や爆発範囲予測――も受けれるので今までにない程、楽な任務と感じてしまう。

ホシノさんが居ないとはいえ、対策委員会の皆さんも居る。楽勝だろう。

 

 

 

学校敷地内に居たPMC達を全員無力化し、校門まで辿り着くとそこには道を埋め尽くす程のPMC達と、戦車を始めとした兵器群が待ち受けていた。

それらの後ろから恰幅の良いオートマタが一体、のしのしと歩き出て来る。

その姿を見た対策委員会の皆さんが身体を強張らせるのを見て、ネームド(お偉いさん)かと警戒する。

 

「ふむ。出迎えとは感心だ。対策委員会…と、例の傭兵か

 

そのオートマタは対策委員会の皆さんには余裕そうな声を出して居たが、私を見ると何故か視界に余り入れたくなさそうな小声を漏らしながら顔を背けた。

聞き覚えのある太々(ふてぶて)しい雰囲気と声音のオートマタ。こいつがカイザー理事(略称)か。

私が身構えていると、ノノミさんとアヤネさんが自治区への攻撃と軍を率いての進攻を非難する。

更にシロコさんとセリカさんがホシノさんをどこにやったと噛みつくと、カイザー理事は含むような笑いを漏らした。

非難しようが嘆願しようが助けは来ない。連邦生徒会どころか他の学園も今まで一度も動いた事はないと対策委員会の皆さんへ事実を叩きつける。

言葉を深く受け取ってしまったのか、黙り込んでしまう皆さん。

エアもアビドスの今までの状況を調べたからか、交信で言葉を飲み込む様な声を漏らしている。

ちらりと私の方へ視線(目のスリット)を向けた後、カイザー理事は言葉を続けた。

 

「…アビドス最後の生徒会メンバー、小鳥遊(たかなし)ホシノが退学した。アビドスの生徒会はもう存在しない。つまり君達(廃校対策委員会)はもう何者でもない」

 

彼の言葉に表情を強張らせる皆さん。私からすれば所属がなくても皆さんはアビドス高等学校の象徴(生徒)なのだから、黙り込む必要などない。

そう思って一吠えして見せると、何故かカイザー理事の方がビクッと身体を傾かせ警戒して見せた。

 

「っ…公的な部活、委員会、生徒会や自治区すら無いアビドスは、学園都市の学校として自立・存続が不可能と判断して良い!だから自治区の土地所有者であるカイザーコーポレーションがあの学校を引き受けるというのだ!」

 

不自然に警戒する様子に私が不思議に思っていると、やや早口となったカイザー理事が説明するように語る。

好適(公的)だろうが適していようがなかろうが、アビドスは対策委員会の皆さんが率いるものだろう。これまでもこれからも、他に表立って行動したのは廃校対策委員会だけなのだから。

そう考える私と同じく、セリカさんが勝手な言い分に言い返して見せる。

 

「な、何をいってるのよ!生徒会が無くても、アビドスには対策委員会がある!私達がまだいるのに、そんな言い分が通じる筈ないでしょ!」

 

しかし。そんな彼女に水を差したのは敵側のカイザー理事ではなかった。

顔色を変えたアヤネさんが、言い難そうに通信越しからぽつぽつと話し出す。

 

『…対策委員会は、公式に許可を受けている委員会じゃない…対策委員会が出来た時には、もうアビドスには生徒会がなかったし、書類を送っても返事は返ってきていないから…』

「そうだ。所詮非公認の委員会で正式な書類の承認も下りていない。だから君達の存在を示すものは何も無い訳だ!」

 

アヤネさんの説明を受けて困惑するセリカさんに、カイザー理事から驚きの事実が告げられる。

そして学校がなくなれば対策委員会の皆さんは借金地獄から解放されるのだから喜べと言い張った。

どこか言い分け染みた声色と、引きつったような笑いを続けるカイザー理事に対して、私は………。

 

◆◇◆◇◆

 

-ホシノサイド-

 

明かりの乏しい大きな室内で目が覚める。

学校の保健室よりも上質なベッドで起きた私は、半身を起こして辺りを見渡そうとすると、手綱で緩く拘束されているのに気付いた。

脇には良く分からない機器が沢山と、少し遠くに妙な祭壇らしき拘束装置が見える。

一体ここはどこで、何があったのか記憶を遡る私の傍に、人の気配が突然現れた。

 

「暫くは大人しくした方が良いでしょう。治療は施しましたが、動くにはまだ静養が必要です」

「お前は、黒服…!?」

 

聞き覚えのある声に警戒するが、その人物は手の届かない程度に離れた所へ椅子を用意して座る。

黒いスーツに不気味な表情に見える青白いヒビ割れ…黒服は危害を加える気はないと手を横へ振りながら話を続けた。

 

「経緯をお伝えしますと、レイヴンさん…オンちゃんさんと言う方がホシノさんには馴染みがあるでしょうか。あの方と取引をしました。ゲマトリアには直接敵対しない引き換えに、貴女を治療するとね」

 

言われて身体を見ると、まるで対峙したあの時のオンちゃんみたいに全身が包帯で包まれていた。

衣類を整えるのは同性の同胞に頼んだのでご安心を、と黒服は言う。

気を失ったとはいえ、たかが何かの爆発に飲まれた程度で大げさな。

その程度の怪我のせいでオンちゃんはこいつと取引してしまったのか…そう思う私に黒服は首を振って肩を竦めて見せた。

 

「貴女が思うよりもよほど危険だったのですよ。…それと貴女が居なくなり、公的な生徒会メンバーが残っていないアビドス高等学校には学校が成り立たないとして、カイザーが名乗りを上げています」

 

身体へ気遣うような言葉よりも、話の後半に聞き捨てならない内容が入っており、私は瞬間的に跳ね起きようとした。

しかし緩い拘束と思っていたそれは奇妙な柔らかさを持って、私をベッドへと逆戻りさせる。

驚いている私に対してため息を吐くと、黒服は紙の資料の束をどこからか取り出した。

 

「企業を主体とした新しい学園の誕生…まぁ私達には余興に過ぎませんし、私達の目的は貴女だった。貴女は勘違いしていたようなので謝罪しますが、私はカイザーの所属ではありません。「私共の企業」がカイザーとは一度も言っていませんから」

 

何か書き込むような動きで、資料の表紙を指でなぞりながら語る黒服の言葉に、私は愕然とする。

てっきり一緒に居るのだから同じカイザーなのだと、身柄を欲する理由は一緒なのだと早とちりしてしまった。

私は…また大人に騙されたのだ。

 

「貴女のようなキヴォトス最高の神秘を手に入れ、実験体として研究し、分析し、理解する。それが私達が渇望していたもの…でした」

 

呆然とする私に語り掛ける黒服だったが、何故か過去形で話すと持っていた資料の束をベッドの端へ置くとその場を後にしようとする。

どこへ行くのかと置かれた資料と交互に見ていると、奴は酷く残念そうに深い溜め息を吐いた。

 

「ご安心くださいホシノさん、動けるようになる頃にはお迎えが来るでしょう。それまで貴女が負った、コーラルによる危険を纏めたその資料を暇潰しに読んでみる事をおススメします。…私達も燃やし尽くされたくはありません(・・・・・・・・・・・・・・・)からね」

 

そう言い残して黒服は暗闇の中へと消えて行った。

どういう事なのか、また何か希望を持たせて騙すつもりなのか。

わからない事だらけだけど、現状ここを離れる事は出来なさそう。

癪に障るし苛立つ事こと上ないけれど、他にできる事もなさそうなので置かれた資料をゆっくりとした動きで手に取る。

拘束は穏やかに動けばそれ位は許容範囲のようだったので、表紙に「FIRES OF IBISアイビスの火」と書かれた資料の束をめくり始めた。

…読み終える頃には、私を襲ったものがどれ程危険だったのかを理解する。

しかし、受けた原因に関しては信じられそうもなかった。

 

―――このコーラルによる被害(周辺星系ごと焼き尽くした大惨事)と似た現象を…あのオンちゃんがしたなんて。

 

◆◇◆◇◆

 

-アヤネサイド-

 

…今ここで、これ以上戦って何かを変える事なんてできるんでしょうか?

通信をつないでいる画面から目を離して、オペレート用の端末を確認します。

そこには真っ赤に染まった「壁」が大津波のように押し寄せてくるのが見えました。

 

『そんな、そんなことって。今までの私達の努力が…!』

『…驚いたな。てっきり最後に諦める時に頑張ったからと自身らを慰める言い訳のために、程々に頑張っているのだと思っていたがな』

 

先輩達もセリカちゃんも戦意はまだあるみたいですが、すごい数の兵力が学校へ向かってきてるのが探知できます。

もし勝てたとしても、公式には学校はないものになってしまいました。

どうにかして取り戻しても、今度は多額の借金が残ったままです。

取引された土地だって戻りません。何より、ホシノ先輩もいない、生徒会も無い…私達みたいな非公認の委員会なんかに、これ以上、一体何ができるのでしょうか?

 

『君達はどうしてそこまで尽力していたのだ?何のために?』

『あんた、それ以上言ったら…!』

 

通信機越しでのやりとりが、まるで耳から耳へ通り抜けるように聞こえます。

それでも敵戦力など状況の共有、私の考えを皆さんへ伝えようとした、その瞬間。

音割れがする程の声が響き渡りました。

 

シャーレ、対策委員会!レイヴン止めて下さい!!

 

絶叫にも聞こえるオンちゃんのオペレータさんの声がした直後、画面の向こうに映っていた筈の、小隊規模のPMCのオートマタが居た一角。

大きな金属同士がぶつかったような何かの音が上がったと思ったら、そこからまるでボウリングのピン群のように連鎖的に。

身体の一部だった部品と共に、空中へと敵兵力がはじけて飛び散っていました。

 




ご閲覧、しおり、感想やお気に入りなどいただき、本当にありがとうございます。
気付けばUA2万越えさせて頂いており、皆様のひと時の楽しみになれているようで筆者冥利に尽きる次第です!ありがとうございます!!


今回も少しずつ、御名前記載をさせて頂きます。
一部時間順ではない場合もありますが御了承の程、お願いします。
(閲覧、しおり、ここすきは御名前が表示されず、感想は今の所個別で返信するため割愛とさせて頂いてます)

でとねいしょん様、Alberinea様、幕の内弁当のバーコードの最初の二桁様、抹茶塩様、jacky様、
八大地獄様、V.S.B.R様、バンブー侍様、kiki.T様、バソキヤ様。
お気に入り登録頂き、ありがとうございます!
幕の内弁当、色々具沢山でお得感ありますよね…ってバーコード!?しかも最初の二桁!?
気になって調べてみたら、ちゃんと決まりがあったのですね。知見も頂きありがとうございます!


オマケの話:
今って無料100連やっていますよね。その存在を忘れて前回天井回数を計算していたんです。
なので再計算したら、やっぱり追加課金せずとも良かった事に気付いてしまいました。
…ひぃん。
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