青空の下、猟犬は求め流浪する   作:灰ネズミ

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COM「…解除条件(一定の神秘と接触)をクリア」
COM「小型端末機(メインメニュー)と機能の一部を開放」

COM「(Cパルス変異波形からの)新着メッセージ。99+件(いっぱい)



23.Contact With Kivotos

光の洪水が収まり、世界が視界に戻ってくる。

地面にあった砂は一部がガラス状に溶けて、見え始めた朝の太陽光を受けて光っていた。

まだ少し帯電している空気を吸い込みながら、私はホシノさんはどうなったか辺りを見渡そうとすると、肩に柔らかなものがポスンと収まるのを感じる。

そこには、ヘイローが見えなくなり酷い火傷を負った彼女が私の肩にもたれ掛かる様にして倒れていた。

息を呑むが、考えてみれば当たり前だ。パルス爆発のほぼ中心地に居たのだから、生身ならば原型が残っているだけでも奇跡である。

ずり落ちる身体を脇の下から支え、呼吸や心音を確認する。

 

…良かった。生きてる。

 

とはいえ少しずつ弱っているようで、本来であれば衛生兵もホシノさんが呼んでいたから連絡先もわからない。

どうすれば良いかと焦る私の前に、いつの間にか一人の怪しい人物が立っていた。

黒いスーツとネクタイに黒の手袋。頭部も無機質な黒地に、ヒビ入った穴がまるで口と片目に見える青白い光を放っている。

その目らしき箇所に黒いモヤを纏わせた異形の人は、ホシノさんの様子を見た後に掌を差し出してきた。

 

「…初めまして、私はゲマトリア所属の、黒服と呼ばれております。急いでいますので単刀直入に。彼女、ホシノさんの治療を任せて貰えないでしょうか」

 

突然現れた謎の人物に引き渡せと言われ、私は唸り返して見せる。

怪しい事この上ないし、キヴォトスの技術も進んでいるとはいえ、この重傷を治せるとも思えない。

ましてやこの火傷は

 

「コーラルによる汚染。キヴォトスの一般的な医療では治せません。私に任せて頂ければ、中和も後遺症も残さず治療する事を約束します。勿論、条件は付けさせていただきますが」

 

まさかコーラルを知っているとは。キヴォトスにコーラルは存在しないと思っていた私は驚く。

そんな私に対し、黒服は恰好を付けるように胸元に手を当てお辞儀をして見せる。

動作だけを見れば紳士的ではあるが、一般的ではない医療技術を持っていると言う黒服と名乗る存在。

そんな得体のしれない相手が望む条件とは一体。

 

「この件においてで構いません。私達ゲマトリアに直接敵対しない(・・・・・・・)で頂きたい。それだけです」

 

どんな条件が出て来るかと警戒で身体が強張るのを感じていたが、たったそれだけを望む黒服。

報復を直接しなければ良いだけ。しかもこの件――恐らくホシノさんへの執拗な勧誘か、アビドスの借金絡み――における部分だけで良いと言う。

確かに私としてもホシノさんの治療は急いで行う必要があるとは思う。

しかし同じ目的としてもその程度の条件で済むものだろうか?

 

「それだけ急いでいると思って下さい。如何でしょうか?」

 

私の疑問を感じ取った訳ではないだろうが、黒服も急いでいると言う。

表情は見え難いが、実際にじりじりとこちらへ歩み寄りたいという気配も感じる…気がする。

少しだけ迷ったが、今までに受けたキヴォトスの医療技術を思い返し、中和も後遺症もやってのけると言う黒服に賭けてみようと私は思った。

もし治療をすっぽかしたら、やり直し(リスタート)てでもコイツを殺そう。

了承の意として一声、もとい一吠えして頷いて見せ、黒服にゆっくりとホシノさんを渡す。

彼女を膝裏と背中を持って持ち上げると、黒服は頭を深く下げて見せた。

 

「取引頂きありがとうございます。私は契約を違えない事を誓いましょう。…それでは」

 

そう言い残すと黒服の後ろの空間に黒い穴が開き、穴の中へと引きさがって消えた。

穴自体も二人を飲み込んだ後、まるで画面の砂塵を消す様に消えてしまう。

少しの間、消えた後を見ていたが私も限界だ。

視界に映る世界がぐるりぐるりと回る。そしてガラス状になった地面が近付いてきて…。

 

この後、もう一回さっきのやり取り(リスタート)をした。

 

 

 

取引後リンチに現れたカイザーPMC達を蹴散らした(八つ当たり)後、私はアビドス高等学校へと出頭…向かった。

いつもより重く感じる脚を動かして校内に入ると、すでに来ていた対策委員会の皆さん達が慌てているのが聞こえる。

やはりホシノさんは何かしらのメッセージを残していたらしい。

声の聞こえる方向。廃校対策委員会の部屋へ向かい、開けっぱなしだった扉から足を踏み入れると、一斉に皆さんから視線を向けられた。

 

「ホシノ先ぱ…!オンちゃん、ホシノ先輩を見なかった!?」

「身柄と引き換えに、アビドスの借金を持つって消えてしまったんです。何か知りませんか!?」

セリカさんとノノミさんが詰め寄ってくる。他の皆さんもその後ろから、心配そうに様子を見ているのを感じる。

それに対し、私は…何も答えられなかった。

引き留めようとしてたくさん頑張った結果、彼女に大怪我をさせて。

身柄の引き渡し先も治療先もわからず。

ルビコンで何度も見て来た、行方不明者への生存(KIA)を縋る光景。

ホシノさんは生きてはいるはずだけれども、避けたかった事は何一つ出来ていない。

私はやっぱり…無力だ。

目を伏せる私に対し、先生が気付いて何かを口にしようとする。

 

 

『【小鳥遊ホシノは無事です。対策委員会の方々】』

 

 

突然、室内に備えられていた放送設備から合成音が流れ出す。

同時に私の頭の中から同じ内容の言葉が、よく聞いた声色で聞こえた。

この声…!?

 

『【…久しぶり(・・・・)です、レイヴン。対策委員会の方々、そしてシャーレの先生には初めまして】』

 

キヴォトスでは初めて会うはずの相方は、何か思う所があるかのような声色で私に対して挨拶した後、皆さんへ肩書の紹介を行う。

 

『【私はレイヴン専属のオペレーターです。話すのが困難なレイヴンの代弁者として、貴方方に状況をお伝えします】』

 

エア!ありがとう!

言葉を伝えられず困っていた私の代わりに、皆さんへ話をしてくれるという頼れる相方へお礼を言う。

吠え声をあげた私だったか、しかしエアは息を呑んだように言葉に詰まってしまう。

どうしたのかと頭の中だけで聞いてみる。

 

【…いえ。後で話します。今はアビドスの事を片付けましょう】

 

いつものように交信――私の頭の中でだけ見える声――でエアは答えた。

それもそうだ、対策委員会の皆さんへの説明もして貰えるのだし。

私も対策委員会の皆さんへ謝らなければ。

 

【…】

 

そう考えている私だったが、何故かエアは考え込む様な吐息を交信に乗せていた。

 

 

 

エアは私の持つ小型端末を通じて(交信の事は伏せて)多少、キヴォトスの事を知っている事。

私、レイヴンの依頼でアビドスの状況をある程度、調査していた事。

ホシノさんは黒服という奴と、すでに取引を交わしてしまった後である事。

彼女が去る前に私が会話して(・・・・)引き留めたが、断られた上に黒服に攫われた(・・・・)事。

現在の所在は不明である事など、状況を話し合った。

一部何故かエアがでっち上げた話が混ざったが、私の訂正は鳴き声なのもあって説明されなかった。

シロコさんが首を傾げていたがその度にエアが取り繕い、自然な流れで次の話に行ってしまうので訂正もできない。何で?

交信で聞いてみてもエアはその事には触れず、むしろ避けるように話を進められてしまう。

 

”つまり、ゲマトリア所属の黒服って奴にホシノは誘拐されたんだね”

『【はい。とはいえカイザーとゲマトリアの間に何かしらの密約がある事は先程送りした、取得済みの通信記録などから察せられます。シャーレの方でも役に立てて下さい】』

 

いつの間にか取得した情報をエアは先生の仕事用端末に転送し、それを精査して先生は考え込む仕草をする。

それとは別な板状端末から半透明な少女が現れており、同じようなポーズを取っているのを眺めていると小さな耳鳴りと共に小声でのやり取りが聞こえた。

 

先生、情報は多分本物です。ここまで鮮明な音声ではないですが、私の方でも確認が取れました。ただ…レイヴンさんのオペレータさん自身の情報や、データの転送元はわかりませんでした

ありがとう。本物だってわかれば十分だよ

 

先生へ自慢げに胸を張った後、何故か少女は私をちらりと見てから板状端末へと消える。

そういえば何度か先生と会話しているのを見たが、彼女は何者なんだろう。

先生から紹介された事があっただろうかと考えていると、エアからため息が漏れた。

 

【相変わらずですね、レイヴン。ともあれ、彼女(ホログラムの少女)の事はシャーレだけの時に聞いた方が良いでしょう】

 

了解。エアが言う事はほぼ間違いないしね。

私が信じ切って頷くと、彼女はまた息が詰まるような声を漏らす。

さっきからそうなる事が多い気がするが、大丈夫だろうか?

 

【私は大丈夫です。あと、手札は多い方が良いと思ったのでレイヴン、あなたの名前で彼女達を呼んでおきました】

 

気遣いに対しても問題ないと言っているが、本当だろうか?

それに彼女達とは誰の事なのかと私が問いかけようとした時、大きな爆発音が遠くから聞こえて来た。

驚いて窓の方へ視線を向ける皆さん。私も駆け寄って煙の上がる光景を捕らえる。

たまに受けていた任務の記憶を思い返すと、あの辺りは確か…。

 

「爆発音…!?」

「近いです、場所は…!?…そ、そんな!?」

 

何事かとシロコさんが隣に並び、アヤネさんは場所を調べて目を丸くしている。

そんな中、私の通信端末が着信で震えたので開くと、自動で画面に映像が表示された。

 

『【状況を転送します。カイザーPMCが市街地へ無差別攻撃をしながらこちらへ向かっているようです】』

 

放送設備と交信でエアが知らせてくれる。端末を皆さんで覗き込めば、カイザーPMC達が自治区に残っていた住民を散らしながら進軍していた。

…あれ、私よりエアの方がキヴォトスの機器を上手く使ってない?

まぁルビコンでも私より強かったかと場違いな事を考えていると、自前の端末と交互に確認していたアヤネさんが悲鳴のように声を上げる。

 

「こちらでも確認できました!学校に向けて数百近いPMCの兵力が進行中!市街地にも被害が出ています!」

「カイザーPMC!?なんでこのタイミングで…ううん、このタイミングだから!?」

「応戦しないと!何はともあれ、アビドスが攻撃されているのを見過ごせません…!」

 

アヤネさんと同じように慌てるセリカさん。ノノミさんはガンラックから自身の火器を持ち上げると、セリカさんへ彼女の銃を取って押し付ける。

シロコさんも身をひるがえして銃を手に取ると、調子を確かめた後に宣言した。

 

「考えてる時間が惜しい、すぐに行こう!」

「ですが、私達で撃退するにはあまりにも数が…とにかくまずは、市民の皆さんの避難を促します!」

 

戸惑う様子のアヤネさんだったが、校外へ向けた放送設備を使って自治区の住民に避難放送を流す。

それを聞いて所在を知ったのか、通信端末に映っていた先頭集団の進行速度が上がる。

念の為とスキャンを飛ばせば、すでに斥候が学校内に侵入していた。

 

「オン!」

『【アビドス校舎内に斥候を確認。10秒後にこの部屋に辿り着きます】』

 

私が警戒の吠え声をあげると、放送設備ではなく私の通信端末からエアが皆さんへ注意を促す。

開いたままの扉方向を警戒して構え、カイザーPMCが姿を現した瞬間に対策委員会の火器が火を噴く。瞬殺である。はいはい出落ち出落ち、とこういう時は言うのだったか。

 

「とりあえず、学校に侵入した奴からやっつけよう!アヤネちゃん、オンちゃんのオペレータもお願い!」

「はい!先生の安全を確保しつつ、学校に侵入した敵を撃退します!」

『【承知しました。シャーレのサポートにも合わせます。…さぁ、レイヴン】』

 

セリカさんが部屋から飛び出しながらお願いするのを、アヤネさんが請け負う。

エアも了解した後、私に呼び掛けて来たので何かと目線で聞いてみる。

 

『【仕事を始めましょう】』

 

了解。オペレートお願い!

…あれ。そういえばいつもの周回(ループ)だとあの人以外は初めまして(初対面)からだった気がするけれど。

キヴォトスに来てからいつ、エアと交信し始めていただろうか?

 




エア【シッテムの箱にバックドアを作成。…冗談です、レイヴン。その期待は重すぎます】



御閲覧、しおり、御感想やお気に入りなど頂きありがとうございます。

変異波形からの鬼電もといメッセージ。アイガオモイナー。
また、周回開始時はあの人だけ、ルビコン突入前から面識があるので初対面ではないという事にしています。
ならばキヴォトスに来たエアが久しいと言ったり、時折言葉に詰まるのは…?


今回も少しずつ、御名前記載をさせて頂きます。
一部時間順ではない場合もありますが御了承の程、お願いします。
(閲覧、しおり、ここすきは御名前が表示されず、感想は今の所個別で返信するため割愛とさせて頂いてます)


Tkmraeua2341様、MINAMIL様、マークス様、2002様、ふぉーまる様、
フリスク(-_-)様、タスクフェルス様、エグゼキューター様、ウグイス豆様、マシュマロクッキー様
お気に入り登録頂き、ありがとうございます!
その無表情のようなお顔…とても有名なあの方からも見て頂けるとは…感激だ。
ついご友人ボイスが出る程に気になっておりました(笑)

秋ウサギ様、B=s様
誤字報告頂き、ありがとうございます!
今回も目を通して頂き、本当に感謝です!!



オマケの話:
ブルアカらいぶさまSPでの発表は驚きばかりでしたが、皆様は如何でしたでしょうか。
筆者はあまりガチャ運がないので、半周年に向けて3天井分を目処に貯金をして…(再計算後、足りない事に気付く)

―――行くぞ大本営(Y@star様)。青輝石の貯蔵は十分か?(微課金のタガが外れる音)
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