優しい悪人「
「だから、遠慮も手加減もいらないよ。
さて。これで何回目だろうか。両手の指の数を折り返し10回超えてからは数えるのを止めてしまった。
その程度には
そのため初動は慣れた物だ。ゆっくり向けられた銃口を避けて、クイックブースト(翼)で横へ逃げる。
この時に間合いを開けるべく後方や奇襲をかけて上空に行くと、追撃の大盾による突進や大跳躍からの殴り付けで叩き落される。
多分ホシノさんには見えない翼が生えているのだろう。それ位の速さと跳躍力だ。
だが横に逃げても
発砲音がするまでブースト(駆け足)で弧を描く様に横移動し、音が聞こえると同時に逆側へクイックブースト(翼)で切り返す。
一つ間を置いてからその速度を殺さないようジャンプをして、後隙を消す大盾の薙ぎ払いを避ける。
ここまでしてやっと私のターン。アサルトライフルによる発砲は一発だけ。
動かし難い腰の上部辺りを狙う。ヒット。
ここで一発狙いのヘッドショットや肩などのデバフを狙うと、あっさり避けられてしまうのは何十回かの試行で確定している。狙うなら疲労が溜まった後だ。
連射も行わない。だってもうすでに銃口が私を捕らえている。
ジャンプ後の空中では体勢が不安定。ここは大人しく撃ち落される判断を取る。
空中に飛ばせば落とせると誤認してもらう。次のタイミングでまたクイックブースト(翼)で切り抜ける為の布石だ。
ただそのタイミングが来るのは疲弊した後だけれど。そう考えながら衝撃をACS頼りで耐える。痛い。
何とか崩れそうになる体勢を堪えて着地すると、ホシノさんは着地硬直を逃さず畳みかけて来る。
耐える。避ける。隙を狙って単発。ここは賭けのミサイル。失敗、次回には牽制と割り切って間を置いてから撃とう。また耐える。
耐える。耐える…敗北。そして
強すぎる。
………きつい。
◆◇◆◇◆
-ホシノサイド-
遠慮はいらない。そう伝えた直後、オンちゃんの瞳から光が消えた気がした。
いや元々快活さを感じ難かったのが、
まるでストンと落とし物をしたように、いつも以上に無表情になってしまう。
…身内に敵対される覚悟はしてたけど、やっぱり辛いなぁ。
心の泣き言を抑えきれないのか、ショットガンを向ける速度もゆっくりになる。
そして銃口がオンちゃんの身体まで向いた瞬間。突然の砂嵐に吹き飛ばされていった。
違う、視覚外まで瞬動したんだ。ちょっと驚いたけど、そのまま横に駆け出したのを見て落ち着いてショットガンをそちらへ向ける。
今度こそ捉えた…痛ったぁ!?
発砲とほぼ同時に逆側へ切り返して避けたオンちゃんを見て、反射的に大盾を振るった。振ってしまった。
シールドバッシュを誘われたみたいで、跳躍でスレスレに避けてから狙撃するような一発。
腰に響くような痛みで思わず悲鳴を上げかける。おじさんに腰への攻撃は容赦ないんじゃない?
せめて頭や別な場所ならまだ、避けようがあったのに。
ちょっとイラっとしたから、お返しの一撃を上げよう。
丁度空中にいるし、そこなら避けれないでしょ。よし、当たった。
急所以外で怪我にも響かない箇所。体勢が崩れかけたけど、まだやる気みたい。
うへ~、でも
ここぞとばかりに畳みかける。発砲、シールドチャージ。あれ、どこに…痛っつぅ!?
発射口が開いたのを見てすぐ来ると思って、大盾を構えて突っ込んだら手応えがないから気を抜いた瞬間。
ミサイルの爆風で見失った一拍の間に、脇腹に走る痛み。
また避け難い所に…!
眉間にしわが寄り始めたのを自覚しながら、オンちゃんを…いや、レイヴンを視界に捉える。
これはちょっと、本気にならなきゃだめだね?
ショットガンと大盾を構え直して、
◆◇◆◇◆
敗北。
敗北。敗北。敗北。
敗北。敗北。敗北。敗北。敗北。敗北。敗北―――――
ああ。やはり私は覚えも要領も悪いのだろう。
一度ミスした事を別な所で何度も繰り返し、それが累積して敗北と
ここは切り返すシーンだった。あれは耐える場面だった。この動きの時は。あの地点での攻撃手段は…。
うっかりや焦り、隙を見逃して慌てて思わず手を出し、体勢を整えられて反撃を貰う。
リカバリーを考える間にもダメージは蓄積し、また敗北。
まぁそんな暇もなくリンチにあうので、実際には出す暇もないのだが。
まぐれでなら良い所まで行く。ホシノさんが疲労し、辛そうな表情になる時があるのでその時に無理をすればそこそこ良い線まで行くのだが、まだ足りない。
表情が変わる条件もわからないので、試行し続けるしかない。
………そういえば、なんでとめようとしてるのだろう。
るびこんでだって、あのひといがいはみすてていった――ああ、そっか。
わたしはもう、
荒い息を吐く。弾は撃ち尽くしたし、身体はボロボロで手足もほとんど動かない。
伸びない背筋とだらりと下がった腕。項垂れた頭はまるでゴーストのように見えるだろう。
「…もう。休みなよ、レイヴン」
ホシノさんが低い声で降伏を促す。ショットガンのリロード音が聞こえたから、断れば強制的にダウンさせる気だ。
レッドガンの隊員が呟いていた、
まぁ、今更である。
ブレる視界に、ショットガンの影が映った。
「私も疲れたし。これで終わり…っ!?」
発砲音が鳴る瞬間。左腕を振って銃口の向きを変える。
被弾を行動不能になる箇所から、ギリギリ行動可能な箇所へと抑えた。
このためにパルスブレードの着装部分を盾にして、遠くへ落としたかいがある。
少しでも軽くするために。そして、油断させるために。
手足の爪も散弾と大盾で割られていたが、まだ牙は――シールドバッシュで一部はへし折られたものの――数本残っている。
後は人体の急所。噛みやすい所を狙うだけだ。
そして私はホシノさんの首筋へ向けて牙を向けた。
…キヴォトスで殺人は忌避されている。ならどこを狙う?
頑丈なキヴォトス人はヘイローによって守られて――
空回る思考の中で、私の口は彼女の首を逸れる。
そして
「ィぎっ!!?」
口に何かがしみ込んだのを感じたと同時に、ホシノさんの口から今まで聞いた事がない悲鳴が上がり、一瞬の硬直の後に私は殴り倒される。
血反吐を撒き散らしながら地面を転がり、砂を巻き上げて倒れ伏す。
残った牙も折られて、もう手はない。
モゾモゾと動くような気配がした後、彼女は私の首裏を掴んで持ち上げた。ぶらーん。
「…レイヴン。言い残す事はある?」
ぼやけて揺れる視界の中で引きつったような口端と、普段見ないような表情でメンチを切るホシノさんに対し、私は一言も喋れない程に消耗していた。
黙り込む私に向けて、頭突きをするためか彼女が首を少し引くのが見える。
ああ。今回もやっぱりダメだったか。…引き留める手段は、もはや無いのだろう…。
…それでも。私は…っ!
「…?」
ホシノさんの表情が不思議そうな顔に変わり、辺りを見渡す。
何かあったのかと思ったが、私が気付いた時にはもう周囲が帯電し始めていた。
パリパリと鳴る
ルビコンで何度も見てきた、最後の時にも見た赤と白い光の洪水。
「
何事かと目を少し丸くしていたホシノさんを、私は突き飛ばそうとする。
殆ど力が入らなくて突き飛ばすのには失敗したが、少しだけでも間は開けれた。
私ができたのはそこまでで、赤い雷光が視界一杯に広がると辺りを包んではじけ飛んだ。
御閲覧、しおり、ここ好きなど頂き、いつもありがとうございます。
御感想やお気に入りも一杯頂けて、嬉しい限りでございます。ウヘヘ
実はこのヘイローを噛むシーンをみたくて本作を構想し始めました。
でもヘイローは物理的な実体を持たないとの事ですし、空振るだけで終わるのも…と思ってちょっとした独自設定を盛り込ませて頂いてます。
これにより対ヘイロー生体兵器…とまでは行かない予定ですので、ご容赦頂ければと思います。
筆者が対策委員会編で書きたいシーンはもう一つありますので、宜しければ皆様今後ともお付き合い頂ければ幸いです。
今回も少しずつ、御名前記載をさせて頂きます。
一部時間順ではない場合もありますが御了承の程、お願いします。
(閲覧、しおり、ここすきは御名前が表示されず、感想は今の所個別で返信するため割愛とさせて頂いてます)
桶の桃ジュース様、まめ鈴様、ステゴロガンジー様。
御評価頂きありがとうございます。
頂きました当評価を忘れず、気を引き締めていきたい所存です。
caffeine様、あすなろの木様、みつばち様、秋月光様、自爆一号様、
mochi_mochi様、イマジンタロス様、ああああああああああああああああああ様、伊藤むぎぞの様、フラッチェ様
お気に入り登録頂き、ありがとうございます!
昔から当作品を見て頂いており、ひと時の楽しみとして頂けているなら何よりです!
お知らせ:
【19.通信と砂塵の先で】内の、そんなお金、用意できる筈が…辺りからの流れが一部メモ書きのままだったため修正しました。申し訳ございません…。