青空の下、猟犬は求め流浪する   作:灰ネズミ

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眼鏡クイッ「私の直属で作戦行動(執筆作業)に臨める事。光栄に思いなさい(クイッ」
眼鏡クイッ「投稿目処の一つはストックを最低一本。もう一つは、一週間ごとの区切りです(クイクイッ」
眼鏡クイッ「投稿者。貴方は閲覧者がお待ちしている間に、構想中の物語を全て執筆して下さい(クイイーッ」
戦友「…この作戦には穴がある。投稿者の筆の速さにはムラがでる筈だ。こちらの仕事が片付いたら、救援(閲覧)に向かおう」

7/12-追記:
そんなお金、用意できる筈が…辺りからの流れが一部メモ書きのままだったため修正しました。申し訳ございません…。


20.通信と砂塵の先で

”それじゃ悪いけどアヤネ。オンちゃんをお願いね”

「はい、皆さんもお気をつけて」

 

結局留守番になった挙句、監視としてアヤネさんが近くに待機する事となってしまった。手間を掛けさせてごめんなさい。

じっと見ていると、ドローンのカメラを確認していた彼女が気付いて私の頭を撫でて来る。

 

「そこまでは列車で来る事が出来ましたが、その先の移動手段は徒歩になります。少し進めば、砂漠化が進む前から元々砂漠だった場所。アビドス砂漠のエリアに入ります」

 

横になっている私からは画面を見えないようにされてしまったが、様子は教えてくれるようだ。

元々砂漠だった場所というと、私がキヴォトスで最初に目覚めた辺りだろうか。

そう思っていたが、普段から壊れたドローンやオートマタ等が徘徊している危険地帯だそうで、私は偶然遭遇しなかっただけらしい。

いや、思えば時々やけに短くやり直し(リスタート)した時があった。フラフラで警戒が薄れた頃に襲撃にでもあっていたのかもしれない。

その時の渇きを思い出して鼻先に舌を伸ばしていると、アヤネさんから水の差し入れを頂いてしまった。…なんかもうごめんなさい(二度目)

 

「オンちゃんを入院させた後に行われた、風紀委員会の方達との交渉中に気になる事も言っていました。自治区の付近、まだ違法行為ではない…あの時は言い訳にも聞こえていましたが、ゲヘナの風紀委員会はかなり情報収集能力に秀でているとも聞いた事があります」

 

どうやら私が意識を失っている間に色々やりとりがあったらしい。当時の事を思い出しているのか思案気な表情と姿勢のアヤネさんが続ける。

 

「砂漠化が進んだアビドスの地理も、一般公開されている情報は更新が疎かにも拘らず詳しかったですし。…ただ、紫関ラーメンでの会合に関する密告については口を濁していましたが、恐らく企業から流された可能性が高そうです」

 

アヤネさんの話に私は驚く。アビドスに関わる企業といえば、よく聞くのはカイザー。

他にも関わる企業は多少居るが、大きな学園であるゲヘナが動く程の情報源となると対象は少なくなる。あのヒナさん達ですら、もしかしたら巻き込まれただけなのかもしれない。

裏取りをしたくて、あの人や彼女(エア)の情報収集能力が欲しくなる。…私は頼ってばかりだ。

 

『でも戦闘中の風紀委員会の言動は侵犯行為も厭ってなかった。アヤネも私達も判断は間違ってない』

【………レイヴン?…わかりました。調べておきます】

「…はい、そうですね。ありがとうございます、シロコ先輩。ですが、私達の知らない情報を持つゲヘナ学園。そしてそれすら唆したかもしれない存在がいると言う事です」

『ま、行ってみたらそれも含めて、きっと色々分かるでしょ。セリカちゃんが言ってた通り、直接この目で確かめれば早いんだしさ~』

 

私が一人で凹んでいると、シロコさんとホシノさんがアヤネさんの心配を宥めている。

一瞬何か聞こえた気がするけど、またホシノさんが私の羽毛を回していたか何かしていたようだ。ノノミさんがからかっている。…そんなに触り心地が良いのだろうか?

未だ完治せず白いアレが見える翼に視線を向けて動かすと、アヤネさんが苦笑いを浮かべた。

肩を竦めているが、彼女も触りたいのだろうか。

それならと翼をアヤネさんの手元へと乗せると、慌てた後に真剣な顔で私に言い聞かせてくる。

 

「オンちゃん。気持ちは嬉しいですけど、そう簡単に羽など末端部位を他人に触らせちゃだめですからね?」

 

先生も遠慮なしに触ってるのに。何故。

 

 

 

暫く砂が飛ぶ音や、野生のオートマタ等との戦闘音が聞こえ。時折かつてアビドスの砂祭りが開かれていたオアシス…の跡地の話などを聞いていると、先生がヒナさんから聞いたらしいセクター周辺に辿り着いたらしい。

アヤネさんが画面に近づき、驚いた声を上げる。

 

「…っ!?皆さん、前方に何かあります!巨大な町…いえ工場…?と、とにかく、ものすごい大きな施設のようなものが…!」

 

ホシノさん達からは見えないらしく、不思議そうな声が通信で聞こえてくる。

私ならズーム機能で見えるかもしれない。見せてくれないだろうか。…生身なのに機能とは一体?

そう考えて首を伸ばしていると、眉間をアヤネさんから指でつつかれて押し戻された。

 

「オンちゃんは寝てないとダメです。…恐らく見間違いではないので、とりあえず肉眼で確認できる所まで進んでみて下さい」

 

私を戻した後、ドローンを操作してアヤネさんは何かが見えた方向へ先行させたようだ。

しばらくすると、皆さんの口から状況が聞こえてくる。

数キロメートル先までありそうな張り巡らされた有刺鉄線。工場や石油ぼうりんぐ(ボーリング)施設…ではなさそうな、謎の建物があったらしい。

ホシノさんから漏れ出たらしい声からして、昔はなかった施設のようだ。

そして銃声と、正体不明の兵力が襲って来たらしい音声が聞こえてくる。

あれ。この声、どこかで聞いた気がする。

 

『交代時に侵入者とか運がないぜ!』

包帯(レイヴン)用のおやつ代稼ぎのためだ。愚痴ってないで突っ込め!』

 

どうやらキヴォトスで最初に出会ったオートマタの部隊員達らしい。

話を聞けるかもしれないと思い、アヤネさんに伝えて通信音を上げてもらう。

呼吸器を(体毛が数本犠牲になりつつ)はがし、何回か吠える。

 

『…この吠え方、包帯(ワン公)じゃね?』

『…撃ち方、止め止め!ちょっと話を聞くぞ!』

 

どうやら気付いて貰えたらしい。交戦音が少なくなっていき、一時的にでも戦闘中止して貰えたようだ。

最後に同士討ちしたのか数発の銃声と悲鳴が聞こえた気もしたが、いつもの悪ふざけだろう。多分。

 

 

 

戦闘中止後、部隊長から少しだけ話を聞けた。話すのを迷うようにしていたが、彼らはカイザーPMC…カイザー系列の民間軍事会社だったらしい。施設にも企業のマークが確認できたらしく、ホシノさんが驚いている。

私も驚いた。すっかり忘れていたが、言われてみればアビドス砂漠の巡回任務も彼ら経由とはいえカイザーから出ていた。

ここに来るまで思い出せないなんて。私の頭の悪さはこの身体になってもそのままらしい。

頭の中で自身を罵倒していると、大きな警報音が通信越しから聞こえてきた。

皆さんが慌てている中、近付いてくるヘリの飛ぶ音も聞こえて来る。

 

「大規模な兵力が接近中、こちらを包囲しに来ています!装甲車以外にも戦車やヘリまで、もの凄い数です!」

 

ドローンのカメラ越しに確認できたのか、アヤネさんの声からも焦りが見える。

包囲される前に離脱を推奨していたが、部隊長が止めていた。

どうやら、責任者がお出迎えしに来るらしい。

 

『このタイミングで侵入者とはどんな奴らかと思えば…アビドスだったとは』

 

ヘリの着地音の後に聞こえて来たのは、どこか太々(ふてぶて)しい雰囲気を纏っているオートマタの声。しかし何故かアロハシャツに麦わら帽子を被っている姿がホログラム(幻視)のように見えるような声。

それでも重鎮らしく部隊長がフィーカを飲む様な(苦々しい)声を上げている。

対策委員会の皆さんも何者かの登場に、緊張している声が通信機越しに聞こえて来た。

 

『まさかここに来るとは思っていなかったが…あの独立傭兵は来ていないようだな。なら良い』

 

周囲を確認していたのか、話に間が開く。

アビドスに来るような独立傭兵が、私以外にも居るのだろうか?施設の責任者程の者が注意する独立傭兵の存在がもし居るのなら、そちらにも警戒しなければ行けない。

私がそう心配していると、ホシノさんはオートマタと面識があるらしく、向こうからも「げまとりあ」という何かから狙っているという情報が聞こえて来る。

やはりホシノさんは狙われていたらしい。すでにスクールアイドルとしてスカウトされていたとは。

そう考えていたが、何故か通信機越しからシロコさんに突っ込みを貰った。向こうから見えるのはホログラムで表示されているアヤネさんだけで、私は見えてない筈なのだが。

不思議に思っていると、オートマタはさも今思いついたかのような言葉ぶりで自身を紹介し始めた。

 

『私はカイザーコーポレーション、カイザーローン。そしてカイザーコンストラクションの理事を務めている者で、君達アビドス高等学校が借金をしている相手でもある。見ての通り、今はカイザーPMCの代表取締役も務めているがな』

それ(肩書)はどうでも良いけど、要は貴方がアビドス高校を騙して、搾取した張本人って事で良い?』

 

何だか長々とした社名を並べられたが、カイザー系列のお偉いさんであり、シロコさんが確認してくれたように犯人が出て来たらしい。

現場に出て来る仕掛け人が眼鏡(スネイル)以外にも居るとは少し驚く。

…案外、頼れる人材が他に居ないのかもしれない。

対策委員会の皆さんがカイザー理事(長いから略した)に、アビドスを今まで苦しませてきた事を問い詰めていると、彼は呆れたような声を上げる。

 

『やれやれ。最初に出て来る言葉がそれらか』

 

向こうの言い分としては勝手に私有地に入り、職員を攻撃。施設を一部とはいえ破壊する程に暴れた事。

そして皆さんのいる場所はカイザーPMCが合法的に働いている(事業を営み)場所であり、企業の私有地に対し不法侵入している身だと語る。

その声色は上層から下層の人々へ見下す様に、カイザー側に不正はないと言って見せた。

そこで息を吞んだような声が漏れてしまった対策委員会の皆さんから、気圧された雰囲気がする。それに気を良くしたのか、カイザー理事はアビドス自治区の土地を買ったことを認めた上で全ては合法な取引であり、記録もしっかり存在していると話す。

対策委員会の皆さんが言うような不法な行為はしておらず、わざわざ挑発しに来たのかとアビドス側を逆に挑発し返してきた。

そして砂漠まで足を運んだ理由を尋ねて来たが、答えを待たずに彼は(演説)し続ける。

長い。この間に武具のメンテナンスをして居たかった。

そう思うのも、カイザーがアビドスの土地を買ったのも、ここで何をしているかの理由も。

アビドスのどこかに埋められた宝物を探しているのだと言ったからだ。

対策委員会の皆さんも認める程、何もない砂の土地に埋められた宝物などある訳がない。辺境星系(ルビコン3)みたいな場所から見つかったコーラルでもない限り。

 

『…そんなでまかせ、信じる訳ないでしょ!』

『それはそう。もしそうだとすると、包囲しているこのPMCの兵力について説明がつかない』

 

これには対策委員会の皆さんも冗談に怒り、包囲されているPMC兵力について自治区を武力で占拠するためではと声を荒げていた。

しかしカイザー理事は呆れたような息を吐いた後、たった5人しかいない学校の為に大量の兵器と精鋭を用意する訳がないと語る。あくまで別な集団に宝探しを妨害された時の為のものだと。

 

『君達程度。いつでも、どうとでもできるのだよ。例えばそう、こういう風にな』

 

どこかへ通信を繋げる音がして一言二言、カイザー理事が何かを進めた途端。アヤネさんの通信端末にアビドス学校から転送された着信音が鳴る。

アヤネさんが不思議そうに受けると、銀行から一方的にアビドスの信用評価を最低ランクに下げた事。それにより金利を3000%上昇させて調整し、来月以降の利子が9130万円になった事を告げて来た。

 

「はい!?ちょ、ちょっとそんな急にどうして…!?」

 

アヤネさんが驚く前に通信は切られており、理由も話さず反論もさせなかった。

しかしタイミングと砂漠側の通信越しに聞こえるカイザー理事の含み笑いからして、何かしたのはわかりきっている。

余りの手口に慌てる対策委員会の皆さんの様子に、悪そうな声色で彼は更に圧を掛けて来た。

 

『しかしこれだけでは面白みに欠けるし、私も少しお返しがしたい(脅かされたからな)。9億円の借金に対する保証金でも貰っておくとしよう。期間は一週間。我がカイザーローンに3億を預託してもらおうか』

 

約800万円だった以前でもギリギリだったのに、増えた利率でも返済ができるという事を証明して見せろと彼は言う。

しかし彼の声色は楽しげな反面、何故か苛立った様子でもあった。

現場に出るしかない自陣営に、眼鏡(スネイル)のようにストレスとやらが溜まっているのだろうか。

もしそうなら胃薬とミールワームの練り餌を入れ換えるイタズラを仕掛けて上げたい。眼鏡(スネイル)良く効く様になった(プラシーボ)と言っていた。

私はそんな事を考えていたが、対策委員会の皆さんは突然降り掛けられた増額に顔色を悪くしている。

 

「そんなお金、用意できる筈が…今、利子だけでも精一杯なのに…」

『ならば、学校を諦めて去ったらどうだ?』

 

呆然とした様子でアヤネさんが呟くと、カイザー理事は名案とばかりにそう言って来た。自主退学して転校すれば良いと。

元々対策委員会の皆さんが個々人で作った借金ではないのだから、学校が責任を取るべきであり、進んで背負う必要はない…等と、まるで良い解決策だと言わんばかりに勧めて来る。

 

『そ、そんな事、できる訳ないじゃないですか!』

『そうよ、私達の学校なんだから!見捨てられる訳ないでしょ!』

『アビドスは私達の学校で、私達の街』

 

ノノミさんが気を取り直して断り、セリカさんもそれに乗る。

シロコさんも皆さんの街だと言って見せる。

それはあの荒れ切ったルビコンでも戦っていたルビコン解放戦線の人々を思い出す。

そしてそれを惑星ごと焼き払ったあの景色も思い出して、私はアヤネさんの操作するドローン端末から目を背けた。

逃避するように先生は何をしているのかと考えたが、通信越しの小声で何か聞こえる。

 

『”アロナ、録音はどう?”』

『バッチリです!』

【こちらでも押さえました。これから加担範囲を洗います】

 

砂塵の影響か、わずかにブレたような耳鳴りと一緒に聞こえた声からして誰かに録音を頼んでいたらしい。流石先生である。

感心していると、ホシノさんが帰還を提案する。

ここで言い争っても意味が無く、遊ばれるだけと告げる声は自身に言い聞かせているようにも聞こえた。

そんな彼女にカイザー理事は昔居たというアビドス生徒会長の事を馬鹿にした後、保証金と来月以降の返済についてわざわざ敬語付きでお願いしていた。

誰かが拳を握り締める音が聞こえる。怒りで歯を食いしばる音さえ聞こえそうな程だ。

それに気付いているだろうカイザー理事は、あざ笑いながら入口への案内を命令していた。

 

『…俺達が送ろう。他の奴よりはマシ、かもしれねぇ』

 

聞き覚えのある部隊長の声は控え目で、対策委員会の皆さんを案じているように聞こえるのは私の願望だろうか。

先生が手を打ってくれては居るものの、一週間では難しそうだとも小声で聞こえる。

治療室(病室)で横になるしかない私は………無力だ。

 




いつも御閲覧、しおりも頂き、皆様ありがとうございます。
また、次話投稿が大変遅くなり、お待たせして申し訳ございません…!

今回も少しずつ、御名前記載をさせて頂きます。
一部時間順でない場合もあり申し訳ございません。
(閲覧、しおり、ここすきは御名前が表示されず、感想は今の所個別で返信のため割愛とさせて頂いております)


アクルカ様、NISHIZUMI MOHO様、南極出身のヤドカリ様、yamaneko3様、れいずぃ。様。
御評価頂きありがとうございます!
御好評頂いており、本当に感謝感謝です!


たこ缶様、熊猫 迷子様、敷島様、魚の名前はイノシシ様、黒モノリス様、
hideto1029様、yakuto様、小説読み専太郎様、metaloil様、ハッター様。
お気に入り登録頂き、ありがとうございます!
魚だったりイノシシだったりする御方…実はヘビだったのですか!?


ゆっくり進む筆ですが、ひと時でも楽しんで頂ける方がいる限り続けていく所存です。改めて宜しくお願いします。
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