青空の下、猟犬は求め流浪する   作:灰ネズミ

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解放戦線の正直者「貴方は企業の狗というだけではない。そう信じ、執筆を要望させて貰った」
解放戦線の正直者「ブラックマーケット(BAWS)顧客を(商品も)選ばない。我々の戦力維持には欠かせない市場だ」
解放戦線の正直者「何というか…マーケットガードとのトラブルの事もあり、内部でも慎重派の声が大きい」
解放戦線の正直者「身内の(遅筆)を晒すようだが、貴方の助力を貰えると助かる」



12.闇市場に潜む黒き絶壁

以前の襲撃で回収された部品などについて、現在の調査結果によるとどうやら現在では取引されていない型番らしい。

そういう代物がキヴォトスにおいて取り扱われている場所が、ブラックマーケットと呼ばれる闇市場。

ここでは中退、休学、退学など。様々な理由で学校を辞めた生徒達が集団を形成しており、れんぽーせいとかい(連邦生徒会)なるお偉いさんの許可を得てないうかつ(部活)なのも多く活動しているとの事。

また、便利屋の皆さんもここで何度か活動した事がある(騒ぎを起こした)と聞いている。

そこでアビドス高等学校防衛戦での勝者の権利として、便利屋の皆さんにも部品の販売ルート調査を手伝ってもらう事にした。

とはいえ対策委員会の皆さんに先生、便利屋の皆さんに私と全員で固まって行動していては大勢すぎてブラックマーケットの住人を刺激するかもしれない。

なので対策委員会の皆さんと先生。便利屋の皆さんと私の二手に分かれて調べる事になった。

 

「…手伝うのはいいけれど、これって契約違反にならないかしら?」

「あっはは~、アルちゃん今っ更じゃーん?」

 

店前に並べられた銃火器を眺めながら呟いたアルさんに対し、楽しそうにムツキさんが返す。

それを受けて驚いたような表情に変わるアルさんと、対処に迷うハルカさん。

そんな三人を少し離れた所から見ていたカヨコさんが大きなため息を吐いた。

 

「仕事自体はアビドスを襲うって点だからギリギリだけど、それでもグレー寄りなんだよね」

 

眉に力を入れて硬い表情の彼女の横で、私はそういうものかと思っていた。

恐らく彼女達の雇い主に関する情報が含まれているのだろう。

だけれど情報の裏取りなどであればあの人もやっていた事だし、取り扱う武器の信頼性を確認するにも必要な事だと私は思っていた。

まぁ私は最終的にどこの企業(勢力)の武器でもパーツでも、全部買う事になったけれども。

全部あの傭兵支援システムとG5(ガンズファイブ)が悪い。

 

『俺は…てめぇが妬ましかった…』

 

何を勘違いしていたのか、この後に続く言葉も含め、彼は通信でそう言っていた。

私は………私は、あの人を救うため、ただ頑張って何度も繰り返していただけなのに。

記憶を振り返り、偽装されたパルスブレードに視線を落としていると、控えめな声で呼ばれた気がして目を上げる。

上げた視線の先では何故か不安そうな顔のカヨコさんが私を見ていた。

 

「レイヴン。ここでもなかったみたい。…仕事はちゃんとする。裏切らないよ」

 

彼女の言葉にとりあえず頷いて了承する。便利屋の皆さんの事は信じており、何故裏切るという話が出たのかわからないけど、私が頷く事で不安がなくなるならそれでいい。

しかしあまり効果はなかったのか、彼女の表情は変わらなかった。

 

 

 

一般的な闇市場の規模がどれほどかは知らないけど、キヴォトスのブラックマーケットは道一本分どころか街一つくらいあると聞いた。

何でそんな話になったかというと、もう何時間も歩き回ったのに成果ゼロでムツキさんがキレたから。

 

「んもー、影も形もないじゃん!」

 

ダンダンと地面を踏みつけて怒りを示す彼女を、ハルカさんがなだめている。

多分あれはなだめていると思う。流通ルートの代わりに見つけたペロロなる謎物体を販売している店を爆破するとか小声で言っているが、彼女なりのなだめ方だと思う。

因みに店長が言うにはナウなヤングにバカウレ(若者に人気)する物質らしい。キヴォトスには力を持ったオーパーツという代物も存在すると聞いたので、あれもオーパーツなのかもしれない。

新種のパーツはとりあえず購入して試すべき。私は店主に声をかけ…鳴き声だけれど…指をさして一つ購入する。パーツ1個5万円。高いかどうかの判断はつかない。

 

「毎度あり!そういやレアモンの流通といえば、闇銀行の一つがでっかい玩具を仕入れたって聞いたな」

 

店主が「ほら、これだよこれ」といいながら商品を差し出しながら一緒に写真を見せてくれる。

商品を受け取って写真を見た瞬間、私は動きを止めた。

隠し撮りしたらしく一部しか映ってはいないが、キャタピラから生えたようなこの特徴的な「壁」は…。

建物などから比較して、こちらもキヴォトスサイズにされているが間違いない。

繰り返しで意識が戻る度に開幕で轢かれた記憶を思い出していると、通信機から呼出し音が鳴る。

『”オンちゃ…レイヴン、緊急任務をお願い”』

『”現地協力者と一緒に闇銀行へ潜入調査(銀行強盗)していたんだけど、シロ…ブルーの情報よりも戦力が多くって”』

『”そちらでも陽動でブラックマーケットを管理してる治安機関。マーケットガードを少しで良いから引き付けてほしい”』

『”報酬は、えっと。全身ブラッシング(モフり倒す)で良い?とにかく無理のない範囲でお願い!”』

いいえ ◁▶ はい

 

追われている最中なのだろう。銃声と爆発音が通信機越しにも聞こえており、声色や内容にも焦りが見える。

了承の意を込めて一声、もとい一吠えして通信機に表示された選択ボタンを押下する。

所で先生。それは報酬じゃなくて先生がしたい事なんじゃ…?

首を傾げかけたが、依頼は依頼。便利屋の皆さんの様子を見ようとして振り返ると何故か皆さん驚いていた。

 

「マーケットガードにケンカを売るって、本気ぃ?」

「ブラックマーケットの闇銀行に強盗って…何やってるの、あっちは」

 

楽しそうな事を聞いたとばかりに声を弾ませるムツキさんに、頭痛を抑えるように頭を押さえるカヨコさん。

自分達も行くのかどうか迷う様子のハルカさんは便利屋の皆さんへ視線を泳がせながら、ショットガンの準備を始めている。

そしてアルさんは。

 

「その座標近くの闇銀行といえば、ブラックマーケットでも有数の大銀行…噂ではキヴォトス中の犯罪の1割強がそこに流されているって。

 そんな所にかち込む何て…すっごいカッコイイわ!まさにアウトローね!

 

何だかすごく感動していた。どことなく目がキラキラと輝いているようにも見える。

私にはわからないけど、何か感じるものがあったらしい。

折角なら緊急任務も共に行くだろうかと思い、アゴ(マズル)を指定方向へ向けるとアルさんは更に感極まっていた。

 

「え、私達にも手伝わせてくれるの?い、行くわ絶対!こんなの乗らなきゃアウトローじゃないわ!」

「あははーアルちゃん、ノリノリだねー」

「ア、アル様が行くなら私も行きます!全部ぶっ潰しちゃいます!」

 

ムツキさんもハルカさんも連れ添うらしい。そんな様子の皆さんを見てカヨコさんだけは冷静にどこへ向けて襲撃をかけるリスクを思って、頭を押さえて溜息を吐いていた。

 

 

 

指定座標へ向かう間に出会ったマーケットガードを散発的に襲い、先生達の逃亡を手助けする。

巡回中で合流前の少数であれば、奇襲をかけて制圧するのもできなくはなかった。

何より便利屋の皆さんも手を貸してくれたので、思った以上の数を潰せたと思う。

闇銀行付近にたどり着いた頃には、増援の気配は消え去っていた。

 

「銀行にも目立った破壊痕がないって事は、手際よく鮮やかに事を成したのね。これぞまさに真のアウトロー…。

 ふふふ。その仕事の手伝いができるなんて。今日は吉日ね」

「社長、厄日の間違いじゃない?」

 

これまでの道で例の写真の機体は破壊痕すら見当たらなかった。

もしあれがここに配備されていたのなら、油断はできない。

闇銀行を眺めながら交わしている会話を背後に、私はスキャンを行う。

結果、私の考えが正しかった事を確認すると同時に、闇銀行の正面入り口が吹き飛んだ。

そして闇銀行から飛び出してくる大きな黒い機体。

3つ連なったキャノン。左右には副砲と6連ミサイル。後方は見えないが恐らく存在するであろう地雷投射機構。走破性の高いキャタピラ。

なによりルビコンで「壁」と言われる場所に配備され、機体もそれを体現するように正面に存在する頑丈そうな装甲。

重装機動砲台、ジャガーノート(HA-T-102:JUGGERNAUT)

…大きすぎる。これにはマークソンも満足だろう。ゴリアテと比較して(キヴォトスサイズ)ではあるけれど。

その巨大機体を前に、便利屋の皆さんは唖然としていた。

アルさんも白目になっており、何ならアンでウェルカムなスクールっぽいBGMも背後に流れている気がする。

 

「な、ななな、何あれー!?」

「この闇銀行の責任者でもある私の目が黒い内には、銀行強盗など許さん!指導だ指導ぉ!」

 

彼女から驚愕の声が上がる中、ジャガーノートから興奮した声が聞こえる。

どうやらキヴォトスでは乗り込む形式らしい。

それにしても肩口に乗っているのは安定性を見ても良くはない気がする。これがキヴォトス式という奴だろうか。

パイロットらしきオートマタは飛び出してきた後、少しだけ辺りを見渡していたが私達に気付いたのか機体を向けてくる。

 

「ん?あの装備構成は、先程の銀行強盗ではない…?まぁいい。貴様らも研修(再教育)センター送りだ!」

 

どうやら敵性判定を受けたらしい。砲口が私達に向けて下がる。

便利屋の皆さんへ回避を促すべく一声、もとい一吠えして地面を蹴る。

直後にキャノンからグレネードが射出されて着弾、爆発。

便利屋の皆さんも回避を済ませており、被害はゼロ。なおキヴォトスへの被害は考慮しない物とする。

反撃とばかりに銃撃を仕掛けるも、正面の装甲に阻まれて跳弾していた。やはり強度も再現されているらしい。

 

「何あれ()った!アルちゃんのも弾かれてるんだけど!?」

「牽制とはいえ、無傷っぽいね。ちょっとマズいかも」

「わ、私が前に出て何とかします!?」

 

装甲の強度に驚くムツキさんとカヨコさん。そしてハルカさんが無策で飛び出そうとしたので、肩を掴んで引き留める。

何事かと目を丸くする彼女に対し、首を振って特攻はおすすめしないと伝える。

私は引きつった顔をしていたアルさんも手招きして呼び、ジャガーノートを指さして攻略法を伝授する事にする。

ルビコンにおいて奴は何度も超えた壁だ。やる事は一緒。囮でかくらん(攪乱)させ、装甲の薄い背後を叩く。

問題は囮役をするのが私という点だけれど。

手指を使って作戦の意図を何とか伝えると、便利屋の皆さんは頷いて了承してくれる。

 

「レイヴンが狙いを釣って背後を叩くのね。任せて頂戴!」

「だ、大丈夫ですか?わ、私も」

 

アルさんが自信を持って、ジャガーノートとは違った意味で装甲が厚い胸を叩いて見せる。

けれども不安そうな表情でショットガンを胸に抱えたハルカさんへ、私は首を振った。

そして自身の胸元へ親指でトントンと叩いて見せ、任せろと伝える。

少しだけ口を開いてパクパクと開閉していたが、不安を飲み込んだのか頷いてくれた。

 

「行けるわね?それじゃ作戦、開始!」

 

アルさんの号令で私達は散開する。作戦を伝える間にもグレネードやミサイルが飛んできていたが、私含め皆さん器用に避けていた。どうやら攻撃速度やエイミングもある程度調整されているらしい。

こういうのは何というのだったか。妥協?ナーフ?まぁ避けやすいに越した事はない。

 

「どこの雇われか知らないが、卑劣な銀行強盗には指導が必要だ!」

 

どこか聞き覚えのある台詞を叫びながら放たれた副砲を、クイックブースト(翼)で避ける。

そしてアサルトブースト(獣)で近付きつつ回り込み、側面を抜けながらブレードを起動。

今回の作戦参加にあたって、すでに先生には了承を得ている。ジャガーノート相手に偽装したまま勝てるとは思っていない。

高周波の振動と共に光り輝く斬撃が叩きつけられ、側面に目に見えるダメージを与える。

流石あの人が最初に選んだ武器だ。信頼性が違う。

FCSとジェネレータは、まぁ、うん。解放戦線の戦士達が良く呟いていた大人の事情という奴なのだろう。ルビコン潜入時に過剰な戦力を持ち込むのは難しいと聞いたし。

 

「なっ、ここまでのダメージを与えるとは…これに幾らかかったと思ってる!?」

 

AC1体くらいだろうか。そういえば私は頻繁にパーツを買っていたが、初期機体だけは総費用を知らない。あの人に会えたら聞けるだろうか。

そんな事を考えながら後方へ駆け抜けた私へ、ジャガーノートが向き直る。

想定通り、脅威度を高く見積もられたようだ。

そのままつかず離れずの距離を保ち、アサルトライフルと小型ミサイルで意識を向け続けさせる。

「ガンガン撃っちゃって~!」

「死んで下さい死んで下さい死んで下さい!!」

 

連続した銃声と爆発音。ジャガーノートの後方から便利屋の皆さんが苛烈に攻め立てているのが聞こえる。

特にハルカさんの圧がすごい。今までキヴォトスで見聞きした中では一番かもしれない。

更にカヨコさんの一撃と思われる衝撃波でジャガーノートがスタッガーを起こし、体勢が崩れる。

 

「これで、仕舞いよ!」

 

アルさんのスナイプによりACS負荷限界を超えた状態ではまともにダメージを受け流せず、ジャガーノートが大破する。

爆発によりパイロットらしき銀行員が吹き飛び、私の前まで転がってきた。

 

「まっ待て!落ち着け!いいか、私はこの銀行の会計責任者に当たる者だ」

 

私が見下ろしているのに気づくと、パイロットだった銀行員は何故か自己紹介を始める。

 

「口座の入出金については、私に管理権限がある。見逃してくれれば悪いようにはしない…分かるな?」

 

土下座で座り直し、身振り手振りしながら訪ねてきた。どこか聞き覚えのある台詞に、私は少し考えた後に取引に応じるように頷いて見せた。

 

「素晴らしい!道理を弁えているようだな。貴様には…」

 

喜んだような声色に変わった銀行員に対し、私は発砲する。そのままだとこの銀行員は闇銀行から目を付けられ、裏で始末されるかもしれない。

なら私に脅されたという理由をつけてあげれば良いだけだ。

 

「なっ、貴様!?どういう教育を受けっ…おあーっ!?」

 

予想外だったのは思ったよりもノックバックが酷く勢いよく転がり飛んで、しかもタイミング悪く再爆発したジャガーノートに巻き込まれてしまった。…死んでないだろうか?

 

「うわっ、取引に応じたと見せかけてトドメ刺してる」

「あのやり口…まさにアウトローね!」

 

カヨコさんには引かれ、アルさんは何故か目を輝かせている。

酷い誤解である。まぁ銀行員も流石キヴォトス人だけあり、生きているようなのでヨシとする。した。

 




ブルアカクロス…転生スウィンバーン概念。ううっ…悪くない響きだ。
どなたかすでに書いて下さってたりしていませんかね?

いつも御閲覧、お気に入り登録等して頂きありがとうございます。また、アンケートにも参加下さり誠にありがとうございます。ミシガン口調の選択肢は長すぎて再現しきれなかった。
主に本編でもご満足頂けている方々の他、別枠も興味がある方もいらっしゃるようでしたので、いつかお見せできるよう続けられたらとネタを書き留めていきます。

そして申し訳ございません。プライベートの方でゴタついたため、ストックが本話で切れてしまいます。
それに伴い次話が遅れる可能性があるため、先に謝罪させて頂きます。

代わりと言っては何なのですが、息抜きで書いた即興短話を後程上げる予定です。
よければそちらもひと時の楽しみに加えて頂ければ幸いです。

ケモ621のルビコン時代の小説って需要在ります?

  • 1.本編で乗せれる一部で良いですよ☆
  • 2.ん。あるから全ルート書くべき
  • 3.うへ。まずは完結からじゃない?
  • 4.まだ指が回るようなら表現力を鍛えろ!
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