青空の下、猟犬は求め流浪する   作:灰ネズミ

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中平 良『独立傭兵レイヴン。我々はアビドス解放戦線だ』
中平 良『単刀直入に言おう。こちらに付き、便利屋4名を排除して貰いたい』
中平 良『報酬は企業提示の1.2倍。色好い返事を期待している』
取引に応じない ◁▷ 取引に応じる

なお、追加報酬として紫関ラーメン1杯無料券が付く模様。



11.傭兵の戦い方

何とか(紫関)ラーメンを出た後…出る前に便利屋の皆さんは何も知らないセリカさんから応援を貰っていた…に、もう一度だけカヨコさんから誘われたが首を振って断り、その場を去るフリをして後を追う。

追っている間にシャーレの先生とセリカさんを除いた対策委員会メンバーへ向けて連絡し、事情と状況を共有しておく。

セリカさんへはバイト終わりにしよう。今から連絡すると仕事中に追撃しかねない。

街角で集まる傭兵達に便利屋の皆さんが合流するのを見届け、位置情報も連絡する。

様子を見つつ、アビドスとレイヴンとの関係を疑われないよう空き家にレイヴンとしての偽装とパーカーを隠しておく。

ヘルメット団の予備らしきジャージがあったので、上着だけ借りて(貰って)おく。

後日返そうと思ったら、先生が「”私が責任を持って返しておくね(借りた服を何故返す必要がある?)”」と言って預かっていった。結局別な人(当番の生徒)が返したらしいけれど。

 

「さあ、行きましょう!アビドスを襲撃するわよ!」

「アル様!わ、私。頑張りますから!一人残らずぶっ潰しちゃいます!」

 

ジャージを着ている間に準備ができたのか、便利屋の皆さんの声が聞こえる。

出発時間を確認して先生と対策委員会メンバーに連絡し、私も隠れながら後に続く。

先生が立てた作戦はアビドス高校前で防衛をしている間に急襲。つまり挟撃する。

 

 

 

『前方に傭兵を率いている集団を確認!オンちゃんの報告通りです!』

「あんたたち…!?ラーメンも無料で特盛にして上げたのに、この恩知らず!!」

 

アビドス高校の校門前で相対した対策委員会メンバーと傭兵達および便利屋の皆さん。

防衛準備の段階で合流したセリカさんは、現れた便利屋の皆さんに驚きと怒りを向ける。

どうやら詳細な構成を共有する前に合流だったらしく、今気づいたらしい。

先生がすると思っていたから、隠れた場所から見ていると私に気付いた先生は目を泳がせていた。先生、その口笛は吹けてないから。息を吹きかけているだけだから。

 

「もう!学生なら、他にもっと健全なアルバイトがあるでしょう?それなのに便利屋なんて!」

「ちょっと、アルバイトじゃないわ!れっきとしたビジネスなの!」

 

ノノミさんがふわっと怒っているが、そういう対策委員会の皆さんも物騒だと私は思う。

賞金首狩りや不良掃除は学徒の仕事ではなく、それこそ傭兵なのでは。

キヴォトスにおける学生について考えていると、アルさんが便利屋の皆さんそれぞれの肩書紹介を行っていて、カヨコさんに溜息を吐かれている。

アルさんに緊張の欠片も見えないのは、便利屋の皆さんへの信頼が深い証拠なのだろう。

一時的に組んだ程度の独立傭兵()では得られないものだ。

少しだけ思う所があって目を伏せるが、シロコさんが口を割らせるために銃を構える。

それに合わせて便利屋の皆さんの号令で、傭兵も動き出す。

 

先生とアヤネさんのオペレートで前線の傭兵達は蹴散らされていく。

その様を見ながら私も隠れていた場所から飛び出し、後方から指示を飛ばしていたアルさんへアサルトライフルを構える。

 

「アル様!危ないです!」

 

ブースト(駆け足)しながら発砲した弾丸は急襲に気付いたハルカさんに防がれる。

組んだ時も思っていたが、こういう時の彼女は恐ろしい程の直感と頑丈さを持つ。

傭兵達への指揮妨害とハルカさんからのヘイトを引き付けるため、ショットガンの間合いまで詰め寄る。

クイックブースト(翼)で回避しながら間合いを保ちつつ、他の便利屋メンバーへは小型ミサイルで時々牽制して邪魔をする。

たまにムツキさんが地雷をバラ撒くので、踏まないように警戒も行う。

便利屋の皆さんは私から見た中ではハルカさんを除き、後衛寄りの構成のはず。

彼女を引き付ければ対策委員会メンバーの皆さんが倒すのも楽になる。

その考えを見破られたのか、溜息を吐いたカヨコさんがスウッと拳銃を空へ向けた。

何の事はないただの一発。牽制でもない上空への発砲に何かと思ったら、突然の衝撃と訳も分からない恐怖(神秘による物理・精神攻撃)を感じた。

まるで繰り返す直前の死ぬ時のような恐ろしさ。それ自体は文字通り死ぬ程経験したから今更な所だったが、だからこそ私はまた繰り返したかと勘違いして硬直してしまった。

その隙にムツキさんの持っていたバッグが、私の目の前に落ちてきたと思ったら大爆発を起こす。どうやら爆発物が詰まっていたバッグを放り投げて来たらしい。

視界が爆炎で塞がれ、仕方なく距離を放そうと下がった瞬間。爆炎に穴を開けながら強力な一撃が私の頭に直撃して目眩で膝をつく(スタッガーに陥る)

多分アルさんの狙撃で、照準光もアラートもなかった。マニュアルエイムの場合、そういう利点もあると噂に聞いたが、まさかそれだろうか。

目眩が回復する前に目の前まで来たハルカさんが、ショットガンを構えて歪な笑みを浮かべる。

 

「ア、アビドスの方ではないみたいですが、アル様の邪魔をするのなら死んで下さい!」

 

額に押し付けられた銃口が火を噴き、視界が激しく揺れる。

何度か被弾(9発フルヘッショ)した後、吹き飛ばされた私はカチッという地雷音を最後に意識が散逸した。

 

◆◇◆◇◆

 

???「どうした621。何かわからない所でもあったか」

 

男の低く冷酷そうな声色。だけれどその言葉にはどこか心配しているかのようで。

私は繰り返しで何度も死んだ任務概要が表示された端末から目線を上げる。

 

???「この仕事は強敵が予想される。それが気になるか?」

 

あの人を見上げていると、視線の先に手がかざされた。数十秒ほど空中に留まったその手は、時々止まりながらもゆっくりと降ろされて(ためらいがちに)私の頭に乗せられた。

旧型強化人間には包帯越しですら少ししか感じない体温。だけど私はそれでも嬉しかった。

 

???「俺の叩き込んだACとの戦い方は覚えているな?それを思い出せ」

 

ああ、そうだ。そうでした。何で私は忘れていたのでしょうか。

あの人に教わったAC乗りとしての基本戦術。私は目線で肯定を返し、端末の準備完了ボタンに指を乗せた。

 

◆◇◆◇◆

 

目を開くと戦端が開かれた所で、アルさんが傭兵達へ指示を出している。

今度は様子を見ず、アサルトライフルの有効射程までアサルトブースト(獣)(四つん這いの全力走行)で突撃する。

 

「!アル様、後ろから来てます!」

 

一部砂地とはいえ足音が立つのに一番に気付いたハルカさんが間に入る。

無理に近づかず立ち上がって駆け足に移行し、アサルトライフルを構えて発砲した。

流石の耐久力でハルカさんに射線を遮られ、距離を詰めるのに備えてショットガンを構えるのが見えた。

しかし私は距離を詰める事はせず、他の便利屋メンバーも含めて小型ミサイルを牽制で発射する。

アルさんがスナイパーライフルを構えたのが見えた瞬間、クイックブースト(翼)で横へ避けた。相変わらずの精密なエイムで避けなければ頭を打ち抜かれていたのが想像できる。

長距離戦向けFCS(VE-21A)でも積んでいるのかのよう。

前回はスナイプを警戒して間合いを詰めたが、今は。

 

「…ん?詰めてこない?」

 

カヨコさんが眉をひそめて警戒している。そう、範囲は不明だがカヨコさんの攻撃でスタッガーの可能性があるなら追撃の範囲外まで距離を取れば良い…つまり引き撃ち。

ムツキさんの地雷やバッグは幸いある程度離れれば届かないし、アルさんの狙撃も引き気味で視界に入れれば狙撃にも気付けるし、飛んでくる銃弾を避けるにも少しだけ余裕が出る。

代わりに対策委員会メンバーへ向かう傭兵達への指示を邪魔する手数が減るが、そこはもう皆さんと先生に任せる事にする。もしダメならその時考える。

ついでにハルカさんも便利屋メンバーから引き離せれば良かったが、中々突っ込んでは来ない。

それでもショットガンの射程ギリギリを出入りして見せ、注意を引き付ける。

 

「くっ、どうして当たらないのよ!?おかしいでしょ!」

 

無アラートの狙撃の方がおかしいと思います。こめかみの体毛が幾つか吹き飛んだのですが。

 

「あっははは~!アルちゃんの狙撃がこんなに外されるなんてすごーい!」

「まずいよ社長。アビドスの連中がもう来てる!」

 

ヘイトを十分引き付けられたからか、傭兵達はかなり数を減らしていた。

対策委員会の皆さんが走り込み、便利屋の皆さんと接敵する。

人数も実力もある対策委員会の皆さんの方へハルカさんが向かおうとするが、まだ私を警戒して貰う事にする。パルスブレードを起動し、地面へ向けて振り払うと土砂が舞うと共に深い傷跡を残す。ちょっと抉りすぎたかも。

 

「!?あわ、あわわわ。わ、私はどっちに行けば…」

 

即座に危険性に気付いた彼女は、私と対策委員会の皆さんを見比べて慌てている。

生身相手にブレードを使う気はないが、便利屋の皆さんにはそんな事わからないはず。

迷っている内に距離を詰め切った対策委員会の皆さんに制圧され、戦闘は終了した。

 

 

 

「あ、定時だ」

「今日の日当だとここまでね。後は自分達で何とかして。皆帰るわよ」

 

学校から鳴り響いたアラーム(チャイム)に、残った傭兵達が引き上げていく。

カヨコさんが呟いていた通り、金払いが悪いと傭兵はこんなものだろう。

まだやるつもりだったアルさんが啞然とした表情を浮かべるが、ムツキさんとカヨコさんはやっぱりという顔をしている。

 

「ア、アル様を裏切るなんて、許さない、許さない…!」

「はいはーい。そこまでにしてもらうねー」

 

ショットガンを構えるハルカさんをホシノさんが抑える。

そんな便利屋の皆さんに雇い主は誰かなど事情を聞くも、アウトローたる者情報は漏らさないと言い切ったアルさんに対策委員会の皆さんは困った顔になる。

どうするか迷っているようだったので、私が手を挙げて注目を集めてみる。

先生達は以前セリカさんが拉致された際に回収した部品などについて、まだ調査中と聞いている。その調査の手伝いを取引に使えないだろうか。

何よりも便利屋の皆さんなら詳しい筈だ。キヴォトスの闇市場、ブラックマーケットにも。

 




<NGシーン>
ああ、そうだ。そうでした。何で私は忘れていたのでしょうか。
あの人に教わったAC乗りとしての踊り。リンクスステップ。
私は目線で肯定を返し、機体の操作ボタンに指を乗せた。


沢山の閲覧、お気に入りに感想。評価も頂きありがとうございます。
ここ好き等も拝見させて頂いており、クスッと来た所もあるようで良かったです。
これからも皆様の指導を胸に増々励もうと思います。おや?何故銃口を向けt

ケモ621のルビコン時代の小説って需要在ります?

  • 1.本編で乗せれる一部で良いですよ☆
  • 2.ん。あるから全ルート書くべき
  • 3.うへ。まずは完結からじゃない?
  • 4.まだ指が回るようなら表現力を鍛えろ!
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