青空の下、猟犬は求め流浪する   作:灰ネズミ

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アーシ●「「」の奪還計画を秘密裏に進めるには、隠密での投稿が不可欠…」
アー●ル「閲覧者の助力が得られる事を願う」



9.いつもとは違う戦い方が求められる(いつも通り)

次に意識が戻った時、私は戦闘前の隠れている体勢だと気付く。

どうやらリスタート地点を超えてはなかったらしい。想定外が重なったとはいえ、あまりのミスにため息が出そうになる。

頭を振って思考を切り替え、状態の確認を行う。

体力APよし。残弾よし。偽装…しっぱなしのせいでブレードを使わないパターンを考えてしまうため、解く事にする。

外したものやレイヴンとして着ていたパーカーを横に置いた時、一緒に外した通信端末が目に入った。

 

(”何かあれば連絡してね”)

 

先日慰安に行った時にも、先生から言われた言葉。

今の私にはオペレートしてくれるあの人も、彼女も居ない。

前回見た限りでは少しだけ時間もあるし、現状と座標だけでも送っておこうと考えて通信端末を操作する。

すると送信してすぐに返信が来た。

 

『”すぐに向かうから、できるだけ合流まで待って”』

 

…これは奇襲をかけず、様子を見るだけにするべきだろうか?

体力も残弾も回復しているとはいえ戦車と重MTがいる以上、先生達が来るまで戦い続けるのは厳しい。

できるだけブレードも使わないとなると、追跡し続けて位置情報だけ送る方が良い気がする。

了解の返事を送ると、すでに動き出していたヘルメット団達の後を隠れながら追った。

 

◆◇◆◇◆

-セリカサイド-

 

「(油断した…まさかFlak改対空砲まで持ってくるなんて)」

 

拘束された状態で、トラックの荷台らしき中で揺られながら気を失う前の事を考える。

戦車の攻撃に意識を刈られる前、見た事のないロボットが立ちはだかった。

そいつの構えた大盾に攻撃は弾かれ、攻略の手かがりを見つける前に砲撃を喰らってから記憶がない。

気付いたらトラックの荷台に居て、外を覗き見れば砂と線路が見える。アビドス郊外の砂漠のようだった。

折しも砂嵐が近いようで、通信もいずれ繋がらなくなる。完全に孤立してしまう。

昼間のバイトの最中、先輩達と共にあの大人先生がバイト先にまで来たので、からかってくる先輩達含め冷たい態度を取ってしまったのを思い出す。

もしこのまま連絡が取れなかったら、他の人達のように諦めてアビドスを去ったと思われてしまうかもしれない。

裏切ったと誤解されたまま、砂漠に一人放り出されてしまったら。

 

「(ヤダ…そんなの、ヤダよ…)」

 

死ぬのも怖い。けどアビドスの皆に勘違いされたまま忘れられるのも怖い。

涙で視界が滲み、嗚咽を上げてしまう。

 

「…皆。誰か。助けて…」

『”助けに来たよ”』

 

まさかの返答に驚き、反射的に顔を上げる。

いつの間にか荷台内の光が漏れていた箇所が広がり、通信機を持った毛むくじゃらの手が差し込まれていた。

 

◆◇◆◇◆

 

あ。これ以上は無理そう。

 

どんどんアビドスの郊外へと向かうトラックの後ろを見ながら、私は隠れ続ける事を諦める。

あの後、セリカさんを気絶させたらしい傭兵とヘルメット団達は彼女を拘束した後、トラックに運び込んだ。

その後移動を始めたので追いながら座標を先生と共有していたが、郊外へ向かうにつれて隠れ場所が減っていく。

砂漠地帯が目に見えて近付いており、遠目に砂嵐も見える事からこれ以上の追跡は無理と判断する。

ECMフォグ内でも通信ができた彼女がいれば、と思った所で首を振って思考を切り替える。

 

今彼女はいない。なら私がやれるのはいつも通りだ。

 

通信端末に突っ込むと一言送信し、隠れていた場所から飛び出す。

発見されても全部倒せばフルステルスゴリ押しスニーキングって、レッドガン隊員も言っていた。

トラックの後方から護衛していた数台のバイクをアサルトライフルで打ち抜いて無力化し、荷台に飛びつく。

夜間だから速度を落としていたのが幸いし、私の鈍足当社比でも何とか追い付けて良かった。

先生達へ状況を伝えると通信を開いてほしいと来たので、操作をしていると中からうめき声が聞こえてくる。

 

あれ、もう私が来たのに気付いたのか。流石セリカさん。

 

改めてアビドスの皆さんはすごいと考えていると、先生から着信が来たので通信を開いて荷台に手を突っ込む。

鳴き声しか出せない私よりも、セリカさんと直接話してもらった方が良い。

む。そろそろ他の敵に気付かれるかもしれない。

 

「…――――――助けて…」

『”助けに来たよ”』

 

荷台に張り付いた状態だと行動が制限されるので、一旦通信端末を中に落とす。

空いた手でアサルトライフルを構えると、トラックの後輪に狙いをつけて発砲する。

タイヤが破裂して蛇行し始め、何かの出っ張りに乗り上げてトラックは横転した。

転がる前に飛び降りた私は停止した荷台に駆け寄り、先程手を突っ込んだ箇所から中を確認。

拘束された状態でパチパチと瞬きし、目を丸くしているセリカさんが安全な位置にいるのを見た後、キーピックパルスブレードを起動して開錠する。

拘束具もブレードで切ろうと思ったが、細かい調整は難しそうなのでアサルトライフルで適当な位置を打ち抜く。

ヘルメット団より頑丈だったが、何とか壊せて良かった。

荷台内に転がっていたセリカさんの銃を拾って手渡すと、目元を拭っていた彼女は複雑そうな顔で私を見上げている。

拘束具を壊そうとしている間に先生達と何か話していたから、作戦でも教えてくれるのかと思い首を傾げて見せる。

しかしセリカさんはじっと私の様子を見た後、大きなため息を吐いて肩も落としてしまう。何故。

 

「そうよね。裏切るとか泣き顔とかオンちゃんは気にしないよね」

 

何の事だろうかと思っていると、突然彼女は自身の両頬を手でパチンと叩く。

気持ちを切り替えたらしく、真剣な表情になると銃を構えて外の様子を伺いに行った。

私も続くと大きな爆発音が遠くから鳴り響く。どうやら先生達も合流したみたい。

 

『セリカちゃん、オンちゃんと合流しました!』

「ん。ちょっと目が腫れてる。半泣き」

「何ー!?うちの可愛いセリカちゃんを泣かしただとー!これはママがお話付けないとねー?」

「私達がその涙も癒してあげますから!」

 

慌ただしい会話を交わすアビドスのメンバーにセリカさんが苛立ちで顔を赤くする。

ヘルメット団達に倒された上にからかわれては、いくら身内でも怒るのだろう。

 

『”攫われたお姫様を助けるのは勇者達の役目ってね!”』

「バ、バッカじゃないの!?だだ、誰がお姫様よ!!」

 

驚いた事にセリカさんはお姫様だったらしい。確かにそれなら傭兵とヘルメット団両方に拉致されるのもわかる。

頷いて見せているとセリカさんは顔を赤くして私を指さしてくる。

 

「ホ、ホラまたオンちゃんが勘違いしちゃってるし!服も脱いじゃってるし早く片付けるわよ!」

『”オンちゃんが脱衣!?ちょっと映像を…見えないよアロナァ!?”』

「前方に傭兵、ヘルメット団の混合兵力を多数確認!オンちゃんの情報通り戦車と重機も確認しました!」

 

先生が何か叫んでいる時に通信から耳鳴りが聞こえた気がするが、アヤネさんが敵方を確認した事で気を引き締める。

包囲網を小さくしてくる敵の陣営との間に、ホシノさんが立ちはだかり大盾を展開する。

それに合わせてアビドスメンバーも銃器を構えなおして、後ろに並んで続く。

 

「それじゃ………行こうか?」

 

◆◇◆◇◆

 

すでにいるとわかっている重MTも戦車も、アビドスのフルメンバーが揃い先生のオペレートもあれば楽勝だった。

ブレードを使うまでもない。シロコさんのドローンとホシノさんのショットガン、そして蹴りで重MTの盾もあっさり壊れた。

私もキックを使いたい所だが、残念ながらこの身体ではできないOSチューニング未開放らしい。

形だけなら私もできるけど、元々旧型強化人間で身体を動かす事もなかったからかまともな威力もでない。

ついでに一人で試していたら、先生達にすごい心配された。何故。

 

「皆さん、お疲れ様です。セリカちゃんも怪我はない?」

「大丈夫よ、私はこの通りピンピ、ン。して………」

 

敵陣を突破してアビドス高等学校に到着後、対策委員会室に入った途端セリカさんはふらりと倒れる。

床に崩れる前にシロコさんが抱き留め、医療室へと運ぶといって部屋を後にした。

戦車砲を受けて歩ける方がおかしいとホシノさんが言っていたが、私からすれば原型が残る方がおかしいと思う。キヴォトス人ってすごい。

 

「オンちゃんと先生のおかげで、セリカちゃんを助ける事が出来ました。ありがとうございます」

 

ノノミさんが先生と私にお礼を言うが、私は追跡しただけ。作戦自体も殆ど先生の助言通りのためお礼なら先生だけで良い。

そう思ってそちらに顔を向けると先生は端末機を構えて変な動きをしていたが、即座に姿勢を正して見せる。

 

”これは癒し動画。アニマルビデオAVだから…。あ、うん。どういたしまして”

 

一瞬皆さんの視線が冷たくなった気がしたが、アヤネさんが苦笑してドローン回収した戦車などの部品を提示する。

どうやらキヴォトスでは違法な機種らしく、流通ルートを調べる事で異様に装備が揃っている事や、何故アビドスを襲撃するかわかるかもしれないらしい。

しかし重MTに関しては全くわからないとの事だった。確かにルビコンのものが何故キヴォトスにあるのだろうか。

 

私が流れ着いたように、他の誰かも…もしかしてあの人が?

 

そう考えて首を振る。もしあの人ならその高い情報収集能力ですでに傭兵名レイヴンにも気付いているはず。

それに意味もなく学徒しかいないアビドス高等学校を襲う理由もない。何故か嫌な汗が浮かぶのを不思議に思って考えを一度止める。

重MTについては故郷の機械と伝えた所で、私自体がキヴォトスに来た理由もわからないため意味はなさそうである。

キヴォトスでは見た事がないため、オーパーツじゃないかと話し出す皆さんをぼんやりと私は眺めていた。

 

◆◇◆◇◆

-??サイド-

 

日も落ちて闇夜の広がる何処かの室内。モニターの明かりだけが灯るそこには机に肘をつき、手を組んだ何者かがいた。

モニターには先程まで展開されていたアビドスメンバーの戦闘記録と先生のオペレート情報。そしてとある獣人の任務ログ。

 

「やはり協力者では上手くいきませんか。これは引き続き、予定通りに勧誘を続ける必要がありますね。しかし…」

 

手元に置かれた書類の束を持ち上げ、書かれた内容をもう一度目を通す。

書類の表紙には「FIRES OF IBISアイビスの火」と記載されていた。

 

「今の所兆候はありませんが、もし情報通りであれば何れお見えしたい所ですね」

 

ネクタイを締めなおし、その者は書類を机の引き出しへとしまい込んだ。

 




??「クックック。存分にモフり倒すのも悪くありません」


いつもご閲覧など頂き、誠にありがとうございます。ひと時の楽しみになっているようで、筆者冥利に尽きます。

また今回お試しで後書き側に寄せましたが、前の方が見やすいなど意見ありましたらコッソリ一声頂けますと幸いです。

なお先生達は621がキックの練習をしていたのを見て、八つ当たりや自傷などを心配されたようです。唐突に瓦礫へ無言でキックし始める(見た目)子供…心配になりますよね。

ケモ621のルビコン時代の小説って需要在ります?

  • 1.本編で乗せれる一部で良いですよ☆
  • 2.ん。あるから全ルート書くべき
  • 3.うへ。まずは完結からじゃない?
  • 4.まだ指が回るようなら表現力を鍛えろ!
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