青空の下、猟犬は求め流浪する   作:灰ネズミ

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ミシガ●「ここから先は安いオマケだ。復読したか?愉快な音読の始まりだ!」

閲覧、しおりにお気に入り。評価も頂きありがとうございます。
木っ端傭兵(筆者)ではありますが、皆さまにひと時の楽しみを提供できていれば幸いです。

また今回試験的に、視点切替時に誰の視点か記載しています。
不都合ありましたら戻します。

3/15追記:誤字報告頂き感謝です。修正しました。


5.幕間

幕間~部隊との食事シーン~

 

アビドス砂漠にあるという基地の周辺の巡回初日。相変わらずの日差に恵まれながら装甲車の上で揺られる。

元々車内はすでに定員で埋まっており、急遽現場で雇われた私の入るスペースはある訳がない。

そのため私は車の上を指さして車体の上に乗ると提案した。

運転手は難色の顔文字を画面に浮かべていたが、任務時間を圧迫する訳にもいかず自分から乗り上げる。

幸い姿勢制御装置が壊れたACよりも全然乗り心地が良く、苦にはならない。

吹き付けてくる砂にだけ気を付ければ見通しも良く、警戒するにも丁度良い場所と思う。

時折スキャンを使いながら景色を眺めていると、薄い装甲の屋根越しに中から会話が聞こえる。

 

「クソ暑いー。冷房もっと効かせてくれー。」

「うるせー運転席はそっちより日差がひでぇんだ我慢しろー。」

<キヴォトス的スラング>(ファッキ●ホット!)

 

どうやらキヴォトス的にも砂漠は暑いものらしく、気怠そうな声で愚痴が出ている様子。

機械人である彼らオートマタでもこの温度は堪えるようだ。

冷却装置がトんでしまったACに彼らが乗ったら、オーバーヒートしてしまうのではないだろうか。

そんな心配をしていると唐突に部隊長の大きな声で喝が飛んできた。

 

「ィやっかましい!屋根上の包帯を見習え貴様ら!ここよりキツい場所で見張りもキッチリこなしてるだろうが!!」

 

聞き耳を立てていた私は驚いて身体が硬直する。ちょっと耳が痛い。

頭部の獣耳の穴に指を入れて調子を確かめていると、渡された通信機から調子を聞かれたので問題ないと答える。

 

「…具合が悪くなったり、疲れたらすぐに言うように。水分も忘れずに取れよ。

 おら貴様らと違って包帯はサボりもせずに見張りしているぞ」

 

ごめんなさい。私は単にサボりというものがわからないだけです。

サボるって何だろう。レッドガンでもたまに聞こえたけれど、他言するなって口止めされたから聞けずじまいである。

エアも人の行動は知らない事も多かったし。あの人だったら知っていたのだろうか。

 

 

 

その日は結局何も異常は見つからず、予定されていた拠点で野営を行う。

元の世界で行ったことのある哨戒任務よりもずっと楽だったのに、これでは報酬は渋そうだ。

そんな心配をしていると、配給係から例の保存食と水が配られた。

え。いいんですかこんなに貰っちゃって?

 

「お前は今日が初日だし、こんなもんだろ。ほれ次が待ってんだ、はよ行け」

 

忙しそうに手を振って次を促される。面倒臭そうな表情を画面に浮かべる様から本当に良いようだ。

ありがたく頂戴し、離れた所で食事にする。

…やはり美味い。腐臭も薬品臭もしない、純粋な食べ物。水も泥臭さのドの字もない純粋な水で涙が出そう。

初日でこんなものという評価ならば、明日以降や何か役立てばもっと豪華になるだろうか。楽しみだ。

 

◆◇◆◇◆

-部隊員サイド-

 

「ああ、もうこの保存食も喰い飽きたな…」

「何も見つからなかったからオプションも無しだしなー」

 

仲間と共に愚痴りながら、一兵卒な俺はボソボソとした保存食を摂取口へと押し込む。

行軍食にもなる携行性や保存性から多用されるが、毎日主食がこればっかりで味にも飽きる。

昼間の暑さにやられているのもあり、体内の水分も持ってかれて嫌になる。

こんな食事じゃ連れてきたワン公もうんざりしてるだろうと思い、離れた場所に移動した奴へ顔を向けてみる。

全く表情の伺えない顔つきなのに保存食を両手で大切そうに持ち、一口一口噛み締めるように食べていた。

頭部の獣耳はふにゃりと倒れ、尻尾も翼もゆらゆらと揺れてご満悦そうに見える。

その様はどこか小動物が食事をしている風景に見えて和んだ。

 

「…何だか癒されるなぁ」

「…だな。そういや部隊長の所、最近ペット飼い始めたって言ってたぞ」

 

そう言って腰を上げて部隊長の下へ向かう同僚に習って、俺も水で摂取口を潤した後に続いた。

後日、日替わりで部隊長宅へ土産片手に訪れる部下達の姿があったとかなかったとか。

 


 

幕間~お待ちかね?風呂回~

 

ゴタゴタが落ち着き、アビドス高等学校へ戻ってきて一息ついた時。

アビドスの面々が、早く砂と汗を洗い流したいと口々に愚痴をこぼしていた。

確かにキヴォトスの人々は銃弾でも大怪我はしないが、それでも硝煙や砂埃、発汗でも汚れはする。

更にこの学校にはシャワー施設も完備されているそうで、特にシロコさんは毎朝学校に来て利用しているとの事。

とはいえここは砂漠化の真っただ中。貴重な水を私のような余所者に使う訳もないだろう。

廃校対策委員会の部屋で大人しく待とうと思い、シャワー施設へと向かう面々に背を向ける。

 

「うへー。どこへ行こうと言うのだね?」

 

一歩踏み出したと思った瞬間、再教育センターで視聴した事のある映像記録の某台詞と共にがっしり肩を組まれる。

驚いてそちらを見ると、笑顔だが拒否を許さない様子のホシノさんが私を捕らえていた。

貴重だろう水や燃料を私に使うのは勿体無いのでは?

そう思って首を傾げて見せるが、残念ながら伝わらなかったらしい。

 

「だめだよーちゃんと身体を洗わないと。毛に砂も絡んでるだろうからね」

「はーい。お風呂嫌いの子一名、ご案内で~す☆」

 

ノノミさんまでそう言って反対側に回り、手を引いて歩きだしてしまう。

そう言っても脳を焼かれた強化人間を丸洗いするのは手がかかって大変では。

そこまで思った時、キヴォトスに来てから変わっていた身体を思い出す。

今までであれば自動洗濯槽に投げ込まれるか、雑に芋洗いされてたが自分の手で洗えるのだ。

ならば施設を使う程度の厚意に甘えても許されるのでは?許されてほしい。

 

広い脱衣所を抜けてシャワー室を覗くと、仕切りで個人毎に使用場所を分けられているらしい。

大部屋で上から一斉に水を浴びせられる洗い場を想像していたので、個別で使えるなど驚きである。

驚きで固まる私に対して、セリカさんが手早く汗を流したいからと言い、口早に設備と洗剤の使用方法を教えてもらった。

それでもしっかり指さしてスイッチの位置や、使い方を見せてくれてとても分かりやすい。

その上一通り使い方を理解したか確認してくれた後、彼女は一足先にと声をかけてから離れていく。

強化人間時代に口頭で一回説明した後に、すぐやれ違うそうじゃない。と拳と共に教わった方法とは違う。

銃で人が死なないキヴォトスではこんなに差があるものなのか。

物思いにふける私に、スススッとノノミさんが近寄ってくる。

 

「ふふふ。セリカちゃんに教えてもらいました?それじゃあ、包帯も外しちゃいましょう…か…」

 

脱衣所へ私を押して移動させ、ササッと外套を取られた。

そのままの流れで包帯を楽しそうに解いていたが、その声が途中で口ごもる。

どうしたのだろうかと思い振り返ると、ノノミさんの目は驚きに見開かれていた。

丁度視線を向けてきたらしいホシノさんも、同様かそれ以上に驚いている事から何かおかしいらしい。

うん。最初から衣類や下着は着てないけれど、ケモセーフという奴で許してほしい。

それともよほど包帯が汚かったのか、思った以上に身体が汚れていたのか。

思い当たるものがそれ位しかわからず、どうしたのかと思って一鳴きすると二人はハッと気づいて動き出した。

 

「ご、ごめんなさい。えっと、傷とか大丈夫?」

 

どうやら傷だらけの身体に驚いていたらしい。キヴォトスでは銃弾でも傷つかないから、ボロボロなのに驚いていたようだ

平気とばかりに身体や翼などを動かして見せ頷いて見せると、二人共安心したようで胸を撫で下ろしていた。

…鼻を摘まんでなかったから、臭かった訳ではないと思いたい。

 

◆◇◆◇◆

-ノノミサイド-

 

見た目が動物な人達は大人な場合が多いですが、戦闘時以外のオンちゃんは体躯も行動にも幼さが見えました。

だからか、セリカちゃんも突っぱねきれないみたいですね。

早口でしたけどしっかりシャワーの使い方も教えてあげたのを見届けて、私はまた逃げ出さないよう脱衣所へ押し込みます。

 

「ふふふ。セリカちゃんに教えてもらいました?それじゃあ、包帯も外しちゃいましょう…か…」

 

外套も砂まみれで、包帯には所々黒ずんだ汚れも見えますしちゃんと綺麗なのに変えてあげないと。

そう思いながらオンちゃんの包帯を解いた時に、気付いてしまいました。

ダイエットを超えてまるで絶食していたように細く小さい身体。

大小さまざまな傷跡と共に至る所で剥げた体毛。ただの汚れかと思っていた包帯の染みと、翼から覗く硬質な白い何か。

背中には大きく削り取られたような痕に、肩甲骨辺りには真っ白で翼を大きく広げる鳥を模したタトゥーのようなもの。

正面首元にも同様の痕と、包帯か何かで雁字搦めに囚われた片腕がモノクロで描かれてます。

あまりにも平然と無表情でいたから、この子の惨状にまるで気付きませんでした。

ホシノ先輩も気付いたのか、えっ。と驚愕の声が遠くから聞こえたように小さく耳に入ってきます。

 

いつこんな大怪我を、最初から?どうして?保健室。いや病院に。

 

ぶわりと嫌な汗が浮かんだような気がして焦る思考に、今までと同様の軽い吠え声が聞こえて意識が戻ってきます。

オンちゃんの顔を見ると変わらず平然とした無表情で、小首をかしげて私を怪訝そうに見ていました。

…どうやら今すぐ危険という訳ではないみたい。それでも恐る恐る尋ねてみる。

 

「ご、ごめんなさい。えっと、傷とか大丈夫?」

「わう」

 

命に関わりそうな程傷ついた身体なのに、オンちゃんは微塵もそんなそぶりを見せず動いて見せます。

一先ずは大丈夫なようで胸を撫で下ろしました。それでも今まで気付かなかった事に悔しく思っちゃいます。

ホシノ先輩もアヤネちゃんに声をかけて、救急箱を取りに行ってもらっています。

とりあえず手当てするにしても、綺麗にしなくちゃ。

私は気を付けながら、オンちゃんを優しく洗う事にしました。

この子は自分で洗いたそうにしてたけど、こんな身体になるまで辛い目に合ったんだから優しくしてあげたい。

やっぱり怪我が痛むみたいで、暖かく緩やかな水流にしたシャワーでも身体が強張っちゃってました。

 

 

 

この後、むちゃくちゃ手当てして上げたお♧

 




タトゥーのようなものはACにつけていたエンブレムやデカールです。
肩甲骨辺りについてたのは、出撃時にカメラに映りやすい位置だったのかも。ゴスズンミテミテー
首元のは例のあの人の。その包帯(リード)は絡めたものか、絡まれたものか…。

3/15追記:…評価が赤に…!?嬉しさでスタッガーしてました。皆様ありがとうございます。ひと時の楽しみになれているようで安心です。

ケモ621のルビコン時代の小説って需要在ります?

  • 1.本編で乗せれる一部で良いですよ☆
  • 2.ん。あるから全ルート書くべき
  • 3.うへ。まずは完結からじゃない?
  • 4.まだ指が回るようなら表現力を鍛えろ!
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