※サブタイに数字を振りました
1.旅路の終わりと始まり
『…目覚めたのですね、レイヴン。』
女性の声で意識が浮上する。
ぼろぼろとなった機体のカメラ越しに外を伺とそこは透き通るような青い空の下だった。
足元に広がる水辺には他にも幾つかの機体と、赤く点在する同胞達の気配がする。
『コーラルは私達と共に、星々の大海に旅立ちました。』
しかし、そこにあの人の気配は亡(な)い。
『だから私達はもう、いつでも。どこにでも行ける。』
私はあの人と共に生きる道を探して、戦い続けた。戦い抜いた。
『レイヴン。』
そして………そんな道はどこにもないと、気付いてしまった。
『これからずっと一緒に、新たな世界へ…レイヴン?』
私の感情に反応して、周囲の同胞が呼応する。
怒り。悲しみ。諦め。そして、絶望。
この世界であの人を救えないのならば。
『いけない、レイヴン!』
私の感情に同調した同胞達の気配が活性化していく。
そのただ事ではない様子に気付いた彼女の声に焦りが混じる。
彼女と同胞達にとっては恐らく、ここが最良の結果を得た世界。
それでも、私は願う。あの人を救える世界を求めて。
『レイヴン!!』
すでにぼろぼろだった機体に止めを刺すべく、彼女の制止するような声から逃げるように私は引き金を引く。
機体の周りにパルスの光がバチバチと走り出し、同時に同胞達の気配が膨れ上がる。
視界が赤と白に染まってはじけ飛び、爆音と衝撃で意識が掻き消えてゆく。
………その日、この世界の人類史は燃え尽きた。
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サラサラと静かに流れる何かの音に気付き、瞼を上げる。
開いた途端、突き刺すような眩しい光に一瞬怯む。
カメラ越しなのにこの光量から、まだ爆発の最中なのだろうかと私は訝しんだ。
しかし何も操作せずに光量が収まってくのを感じ、初めてカメラ越しではなく自身の目で直接見ている事に気が付く。
強化人間となってから幾久しく、自力で外に出れた覚えはない。
緊急脱出装置で外へ排出されたかと考えたが、そうでもないようだ。
透き通るような青い空は同じだったが、そこには見覚えのない白い円環が広がっている。
その下、眼前に広がるのはだだっぴろい砂の海と廃墟群。
砂に埋もれかけた人工物から文明の跡はうかがえたが、同胞達の気配も人の気配もない。
ここは、どこなのだろう。私はどこに飛ばされてしまったのだろうか?
かろうじて動くであろう腕に力を入れてみる。機体を操作するため最低限の動きだけしかできない筈の身体。
その瞬間、身体が空中へと投げ出された。
「キャウン?!」
空中へと身投げする如くはじけ出た身体に驚き、わたわたと四肢を振り回す。
その際に手足だけでない所を動かしたような、不思議な感覚に襲われた。
実際に何かが動いているのか、不安定に体勢が崩れた状態で砂漠に突っ込む。
力加減を誤ったにしてもおかしい。先程の鳴き声のような声も変だし、一体私の身体はどうなっているのか。
目覚めていきなりの事もあって空回る思考。恐る恐る四肢に力を入れて立ち上がる。
今までは自力で立ち上がる事すらできなかった筈なのに。
まるで人のように、当たり前に立ち上がれた。
その事柄に唖然とするも、自身の身体を見える範囲で調べてみる。
肉球はついてるものの人と同じように伸びた手足。
長毛種と思われる全身灰色の体毛に、背中まで伸びたぼさぼさの髪。鼻から延びる動物めいたマズル。
やせ細った身体には少しほつれ気味の薄汚れた包帯がぐるぐる巻かれている。
そして腰からは長い尻尾と黒い翼が生えていた。翼は骨が覗く程ぼろぼろに折れ曲がり、砂以外の汚れも染み付いている。
その惨状を認識すると全身が痛み始めると共に、頭の上で何かが動く感覚もする。
手を頭にやるとどうやら獣らしき耳まで生えているようだった。
これは、ドーザーが話していた人狼という奴だろうか。エア、わかる?…エア?
自身のわずかな知識があっているか確かめようと、頭の中で頼りになる相方の名を呼びかける。
しかし先程までと違い、彼女の声は聞こえて来なかった。
ああ、そうか。まだ交信ができる前なのか。
声が聞こえない事にしかし、さほど慌てずに呼びかけを止める。
まるで何度かこの状況を経験しているかのように。
辺りを見渡すと吹き飛んだ元らしき場所には、見覚えのある。しかし何故か今の自身の大きさに合わせてリサイズされた武装の数々。
今はまだ暑さも寒さも感じないが、砂漠では寒暖差が激しいと聞いた気がする。
急いで行動すべきと考えて、武装を回収しにふらふらと歩み寄る。
動く事自体は以前ほど支障がないことを確認し、まずは生命線の確保を目指して歩き出した。
………そして数日後、水分不足による脱水症状で私は死んだ。
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旧型の強化人間、C4-621。それが私の覚えている一番古い呼ばれ方だった。
強化人間とは、AC(アーマードコア)と呼称される人型有人兵器を操縦することだけに特化させた物。
頭に管理デバイスを埋め込み、操縦以外の機能をオミットさせたACを動かすだけのパーツ。
第一世代から第十世代まで生み出された中の、もはや骨董品とされた第四世代。それが私。
管理デバイスにはコーラルと呼ばれる物質が用いられており、それは万能な資源だった。
強力なエネルギーであり、情報導体でもあり、飼料にもなり…そして、薬物でもある。
脳を焼かれると表現される通り、デバイスを埋め込まれた当時の私はろくな思考もできなかった。
何故強化人間の手術を受ける事になったのか、それすらもはや覚えていない。
訳も分からないままACに放り込まれ、地獄すら生ぬるい日々を送る。
廃品拾いをする事もあれば、あっちこっちへ運び回る事もあり、示威行為に駆り出される事もあった。
取り分け私は要領も覚えも悪く、戦場に出ればすぐ撃墜された。
今なお生き延びている…死んだことは死んだが…なのは、一重に特殊な体質だったからだろう。
…死んでも、一定の場所からやり直せる。
まるで途中経過を保存したように、不定期な時間と場所に意識が戻るのだ。
しかもそこまで消費したはずの弾薬や装甲も補充されて。
何故だとか消費された物資はどこからどこへとかは、焼けついた頭では考えなかった。られなかった。
痛みや空腹を抱えたまま、ただただ必死に撃墜されないように、あがいた。
やがて第四世代は旧型扱いされ、出来も悪かった私は低温処理を施されて保管された。
時折起こされた時に聞こえた話だと、不良在庫としてたらい回しにされていたらしい。
やり直しができる特殊な体質も、冷凍品には適応されないようだった。
いよいよ処分される寸前だった頃。あの人に拾われた。
最初は、ルビコン3と言う惑星に埋蔵されたコーラルを得るために働いた。
焼かれた頭を中和する再手術には莫大なお金が必要で、その為だとあの人は語っていた。
確かにその通りだったし、しかも仕事をこなせばたまにだが、あの人は優しく撫でてもくれた。
それが嬉しくて、もっと役立ちたくて。あの人の願うがままに。
私は惑星を焼き払った。
大罪人とされた私は逃げ隠れる日々を過ごし、それまで稼いだお金とあの人が残してくれた資産で再手術を受けた。
手術後にあの人を探してあちこち飛び回った。
探しに探し回った結果、あの人が生きていないと知った私は自ら意識を断ち切った。
次に意識が戻った時、何故かルビコン3についた後だった。
私は前回の立ち回りをなぞりつつも、要所で受ける仕事を変えて新たな道を探る。
頼りになる相方は前回では絶縁となってしまったため、今度はなるべく寄り添う様にして。
そして私はあの人を見殺しにした。
その後の事はよく覚えていない。
惑星も焼かず、相方や同胞達。ルビコン3に住む人達からは喜ばれ、解放者と呼ばれた気もする。
ただ最後に、相方から何か言われた気はした。
次に覚えているのは、やはりルビコン3についた後。恐らくどこかのタイミングで特殊な体質が発動したのだろう。
意識が戻った直後は多分、自暴自棄になっていたのだと思う。
AC乗り達が登録しているランキング制度の仮想決闘場、アリーナ。
前の時に腕前を上げるべく、がむしゃらに通い詰めていた頃の成績が引き継がれていた。
それに気づいたのは、相方が合流してからだった。
そこからかなのか、とある存在に目を付けられ、声をかけられる。
ろくに回らない頭では限界かと思い、あの人を助けるのを条件に話に乗った結果。
裏切られ、またあの人を失った。
透き通るような青空の下、絶望の最中での自爆。
それがルビコン3で覚えている私の最後の記憶だ。
不定期に改稿や更新予定です。一時の楽しみになりましたら幸い。
ケモ621のルビコン時代の小説って需要在ります?
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1.本編で乗せれる一部で良いですよ☆
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2.ん。あるから全ルート書くべき
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3.うへ。まずは完結からじゃない?
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4.まだ指が回るようなら表現力を鍛えろ!